ベビーグッズなどを主軸に、国内ベビー業界をけん引するコンビ株式会社。高い品質と安全性という確固たるブランドイメージを武器に、多様な角度から仕掛けられる斬新な取り組みは、機能性食品やペット事業など、ベビー用品の領域だけには留まらない。

そんな同社の新規事業を手掛けるのが、事業開発室室長の西岡英二氏だ。

1991年に同社に入社して以来、全国の営業所で鍛えたコミュニケーション能力と業務遂行力で、2018年1月、現在の役職に就任。経営陣が描いたビジョンを具現化する『社長の右腕』として奮闘している。

コンビの心臓部を担う西岡氏に、ヒット商品を生み出すためのキーワード、そして、営業時代に経験した、自身の仕事観を変えたある出来事について話を伺った。

3つのヒット商品を生み出す、“100個の企画を生み出す勇気”

―入社当初は、営業職として東海から九州に至るまで、様々な拠点で活躍されていたとお伺いしています。当時、お仕事をする上で心掛けていたことは何ですか?

西岡 英二:
今もそうですが、「やらないよりはやった方がいい」がモットーでした。チャンスを失うことの損失を考えれば、踏み出す勇気は必要だと思います。

実行すればリスクがあるかもしれませんが、それが自分で責任をとれる範囲ならば、「やって失敗したら謝る」くらいの気持ちで挑戦することも大切だと思います。もちろん、周囲と相談しながら進めていけば安心ですしね。

今も、この部署の人たちはよく「千三つ」という言葉を使います。1000個の企画を出せば、ヒットする企画を3つくらいは世に出せるだろうという意味で用いているのですが、さすがに1000個だと効率が悪いので、「百三つ」くらいがいいなと思います(笑)。

1000個ですと、思いつきだけで数を稼いでしまうので、そうではなく、じっくりと練って100個の企画を出す。そこからビジネスとして広げられるものを3つ掘り出せたらいいと思います。

まずは母数が必要なので、躊躇しているよりは踏み出す方がその3つの当たる企画を生み出せる可能性が高まると思います。

「トップが投げかけた企画の種を芽吹かせること」が自分の仕事

―五嶋社長との思い出深いエピソードはありますか?

西岡 英二:
普通は石橋を何度も叩いて、割れてしまったなんてことがありますが、社長はどんどん開拓していきます。

私が事業開発室の室長に就任する際も、当時、社長の中で温めていたプロジェクトがあったようです。それで「就任の面接があるから会議室まで来てくれ」と呼ばれて入ったら、社長が開口一番に「おめでとう!プロジェクトリーダーを任せるから!」と言われました。

驚きましたよ。何のプロジェクトなのかもわかりませんし、そもそも着任さえしていない状態ですから、言い渡された瞬間は訳が分かりませんでした(笑)。社長としては、おそらくすぐにでもプロジェクトを進めたかったのだと思います。

社長は色々なところから事業のアイデアを持ってきます。「これだ」と思い立ったらすぐに行動して、止まらない。その行動力と発想力が本当に素晴らしいんです。

今の私の役割は、社長の五嶋や役員が広げてきた話を受けて、形にしていくことです。何が降ってくるのか戦々恐々としますが、トップが言ったからにはそれを信じて種を芽吹かせなければという気持ちでいます。

アルバイトスタッフから学んだ大切な言葉

―『社長の右腕』と呼ばれるようなポジションに就けたのは、何が要因だったと思われますか?

西岡 英二:
人に恵まれたと思います。周囲が、たまたま私を推薦してくれたのではないでしょうか。私自身が何か特別なことをしてきたというわけではないと思うのですが、人とのつながりはたくさんあるような気がします。感謝に堪えません。


―信頼関係があったからこそ、西岡様を推す声が挙がったのだと思います。西岡様が人との関わりの中で心掛けていることや、ご自身が周囲から受けた影響についてお聞かせいただけますか?

西岡 英二:
2009年にリテールアップグループという店頭販促のチームが発足した際、マネージャーに就任しました。

新入社員の人や、アルバイトの人たち、およそ100人近くの従業員たちの仕事を見ることになったのですが、とにかく、その人たちに気持ちよく仕事をしてもらわなければなりません。

当時は、よくアルバイトの女性スタッフたちから叱られていました。現場でお客様を相手にし、競合他社と戦うのは、当社の場合、アルバイトの人たちがほとんどです。

その時に教えてもらったのが「目配り・気配り・心配り」という3つのフレーズでした。それ以来、この3つは常に心に留めています。

地域繁栄と社会貢献に寄与するビジネスにつなげるきっかけを創る

―今後、事業開発室長として、どのような方向に事業を進めていきたいとお考えでしょうか?

西岡 英二:
私たちの仕事は、モノづくりの部分もありますが、コンビブランドの認知を広げていくという面もあります。

今まではコンビのベビーグッズの面が強調されてきましたが、保育園や公共施設に設置するおむつ交換台といった設備等へのニーズも高まっています。

お子さんを連れて出かけようという時には「荷物が多いと大変だ」「ぐずったらどうしよう」という不安から、「お出かけするのはやめておこう」となりがちです。

そこで、私たちがもっと気楽にお出かけできる環境を整えることで、地域の繁栄にも寄与できる部分があるのではないかと思っています。

2018年7月から、縁あって、台東区の浅草文化観光センターでベビーカーの貸し出しを試験的に始めました。問い合わせ件数も大幅に増え、日本人の方だけでなく、SNSで情報を知った外国人観光客の方にもお使いいただいています。

今後、そうした観光地やホテルなどでのベビーカーの貸し出しもビジネスになるのではないかと狙っています。こうした話題をつくりながら、社会貢献もしていきたいですね。

今まで当社は、ベビーカーやアパレル、施設関係など、部署ごとにそれぞれ個別に活動していたのですが、事業開発室が今後、横串を刺して、各部署を有機的につなげていき、新たなビジネスを生み出していけたらと思っています。


―御社の課題について、西岡様はどのようにお考えでしょうか?

西岡 英二:
少子化が進む中で、市場的にはパイ自体が少ない状況が続いていますので、海外市場もより積極的に開拓を進めていくべきだと考えています。

ただ、国内の赤ちゃんの人数が減ってきている一方、虐待件数は年間にものすごい数の問い合わせが入っていると聞きます。そうした部分を少しでも軽減したいと思ったときに、例えば、赤ちゃんの感情認識をするような機能を持った製品など、赤ちゃんとのコミュニケーションツールをつくるというのも1つあるかと思います。

ですが、当社はそういうIT系のノウハウが少ないのも事実です。

今すぐに実行するというよりは、データ等が積み重なってきてからの方が現実的だと思いますが、今後は様々な企業と協力して、そうした課題を解決していくことができれば、育児環境の改善にもつながってくるのではないかと考えています。

ゼロからイチを生み出すことの楽しさ

―西岡様にとってのやりがいはやはり「ゼロからイチを生み出すこと」でしょうか?

西岡 英二:
そうですね、ゼロイチは大変ですが、楽しいですし、失敗しても大きな傷にはなりませんから(笑)。

私は事業を発展させていくタイプではないので、散らかしながらスキームをつくって、次のステップを後任に任せていくのが合っているのかなと思います。今年中に、ビジネスになる新規事業を最低でも3つはつくりたいですね。

新しく何かを広げていかなければ企業として停滞してしまいます。私は臆病なので、大きな博打は打てないけど、小さい粒を50個でも100個でもつくって、そこから大きくできるものは適任のメンバーに任せていきたいと思っています。

成功のポイントは“本気で取り組めるかどうか”

―就職活動中の方に向けて、御社ではどのような仕事ができるのか、一言お願いできますか?

西岡 英二:
好きなことはやる気さえあればできます。自由ですから。ただ、自分がこれをやりたいと言った以上は本気で取り組めるかどうかが、成功するポイントだと思います。

「マニュアルに書いてないとできない」と考える若い子たちもいます。しかし、私たちのときは教科書自体なく、情報も今ほど転がっていませんでした。スキルはマンパワーだけでした。

自分のやりたいと思うことがあって、それに向かってスキルを付けていく必要はありますが、そこに制約はありません。海外に行きたいと言えば行ける環境もあります。やる気さえあればチャンスはいくらでもあります。

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編集後記

社長たちからの様々な命題を楽しそうに広げていこうとしている姿が印象的だった西岡氏は、高いコミュニケーション能力と同時に、トップが描くビジョンを現実世界に落とし込んでいく冷静さも兼ね備えていると感じた。コンビが描く子育ての新たな世界を西岡氏がどう具現化していくのか、非常に楽しみである。

西岡 英二(にしおか・えいじ)/1968年4月13日生まれ。大阪府立豊島高等学校卒。1991年、コンビ株式会社に入社し、大阪営業所に配属。営業職として福岡・名古屋・広島・大阪の拠点を回り、2009年、リテールアップグループ(店頭販促)発足に伴いマネージャーとして就任。2011年に東京営業所副所長兼TB推進室マネージャーとなり、2017年には東京営業所長に就任。2018年1月、事業開発室 室長に就任する。座右の銘は「必死のパッチ」。趣味はゴルフ。

※本ページ内の情報は2019年4月時点のものです。

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50年以上支持される「コンビブランド」の源泉と成長戦略

コンビ株式会社 代表取締役社長 五嶋 啓伸