今回の対談は、日本を代表する銘菓『白い恋人』で知られ、北海道から新たな時代を切り開く製菓メーカー・石屋製菓株式会社の石水社長と、『液体塩こうじ』など、新たな技術を活用した商品開発にまい進する老舗食品メーカー・ハナマルキ株式会社の花岡社長。

若くして企業の歴史とブランド価値を受け継いだお2人が語る、ものづくりへの飽くなき探求心と、新たな時代へ挑戦するために必要な組織の在り方とは。その内なる思いに迫ります。

前編

後編

⬛前編テキスト

【石水】
今日はよろしくお願いします。花岡社長は何年生まれですか?

【花岡】
私は1982年の2月2日生まれ。

【石水】
私も1982年3月30日生まれなので、まさに同い年ですね。趣味とか、好きなレジャーって何かありますか。

【花岡】
私は最近、ランニングとサウナが好きで。あとは学生時代に、石水社長ほどではないのですが、スキーを少しやっていまして。他には仲間と会って話をするのが趣味ですね。

【石水】
先ほど聞いてびっくりしたんですが、アルペンスキーをなさっていたんですよね。

【花岡】
父と母が2人とも長野県出身で、子供のころ、よくスキーに連れて行ってもらいました。中学と大学では、スキー部に所属していましたね。

【石水】
私も長野にスキーをしによく行きましたよ。それこそ志賀高原、菅平、白馬、野沢温泉。いろいろなところによく行きました。

【花岡】
北海道にお住まいだと、いくらでもスキー場はありそうなのに。

【石水】
確かに、北海道にもスキー場はたくさんあるのですが、やはり全国大会は長野で開催されることが多かったので。

【花岡】
菅平へは、よく私も合宿で行きました。

【石水】
菅平は、アルペンスキーヤーの聖地みたいなところですよね。

【花岡】
石水社長には、どういう趣味があるのですか。

【石水】
私も花岡社長と同じです。サウナ、ランニング、スキー、ゴルフ、登山。自然の中で行うこと、アクティブに動くことがすごく好きです。共通点が多いですね。


‐チャレンジへのこだわり‐
【花岡】
石屋製菓さんといえば『白い恋人』。ブランドが本当に立っていらっしゃいますよね。

【石水】
ありがとうございます。

【花岡】
私も北海道に出張や遊びに行くときは、いつも購入しておりますし、海外出張にも、やはり『白い恋人』をお土産に持っていきます。

お客さんや社員に持っていくと、みんなワーワー、キャーキャーして。私よりも、『白い恋人』を待っているんじゃないかと(笑)。そんな『白い恋人』というブランドがあるにもかかわらず、新しい「ISHIYA G」というブランドもございますよね。

『白い恋人』のみに甘んじることなく、積極的に事業展開をされているという印象が強いですね。

【石水】
『白い恋人』の発売を開始したのは、1976年です。今年で47年。先代の社長である、私の父の代からずっと守り続けてきた確固たるものであり、北海道限定の商品です。

日本人からすると北海道のお土産菓子ですし、外国人からすると、今はもう日本のお土産菓子として不動の地位を築いています。

ただ、当社のビジョン「100年先も北海道に愛される会社へ」ということを考えたときに、一番怖いのはブランドの衰退ですね。『白い恋人』が飽きられてしまうのが一番怖いことで、それは企業としてもやはり避けなければいけない。

では、どうすればいいのかというと、いろいろなことにチャレンジをしていくしかないですよね。商品開発にしても、新規出店にしても、『白い恋人』はやはり変えられない部分はたくさんあります。しかしながら、会社としてのコアな部分、強みの部分をもっともっと伸ばすためには、チャレンジする必要があると考えています。

【花岡】
当社も今年で104年目になります。私は2022年の8月に社長に就任したのですが、そのときに、この会社がどうして104年も続けてこられたのかを少し振り返る時間がありました。

いろいろ考えてみて、たとえば出汁入り味噌やカップのお味噌汁、今ではお湯を入れるだけで出来上がるのが当たり前になっていますが、このような新しいことに、当社も常にチャレンジしてきたということが、104年間、事業を続けてこられた鍵なのかなと思いました。

石水社長のおっしゃる通り、挑戦し続けるということは、やはり大事なことだと思いますね。

【石水】
私がハナマルキさんのことを素晴らしいと思っているのが、商品開発力。あるいはその特許技術を、とても積極的に研究なさっていることです。

味噌業界では歴史は浅いというお話を伺いましたが、歴史が浅いからこそ商品開発をし、特許を取得して、他の会社が取り組んでないようなことを実践なさってきたのかなという印象があります。

【花岡】
会長が昨年まで33年間、社長をやっていたのですが、当社は最大手でもなく、信州の味噌屋の中ではどちらかというと新しい。だからこそ、新しいことを常にやっていないと、ブランドが衰退するという危機感があります。また、会長は非常にクラフトマンシップが強いので、新商品開発など、常に新しいことはやってみようと。

技術の分野では、このように新しい挑戦をするということが、当社の社風にもなっています。

‐『液体塩こうじ』誕生の裏側‐
【花岡】
最近発売した商品で『液体塩こうじ』というものがあるのですが、塩こうじって、ツブツブだとお肉に漬け込んだり、魚に漬け込んだりして焼くと焦げやすいんです。

【石水】
なるほど。

【花岡】
単純な考えですが、ツブツブだと焦げやすいのであれば、液体にすれば使い勝手が良くなるのではないかと。

【石水】
すごい発想ですよね。

【花岡】
会長でもある父が、日本酒のつくり酒屋さんをたまたま見学しに行く機会がありまして。そのときにどぶろくを搾って清酒をつくる工程を見て「うちにもどぶろくみたいな塩こうじっていうのがあるから、あれを搾ってみたら液体になるんじゃないか」と。

【石水】
まさにお客様の真意を考えてできたのですね。「メーカーあるある」でしょうが、開発段階ではすごくいいものができたと思っても、製造のラインに落とし込むと、現場から「そんなのできないよ」と言われることがよくありますよね。ロスも出るし、機械もないし、と。そういった場合はどのように解決されているのかも気になります。

【花岡】
とにかく設備投資を先にやっていたんですよ。

【石水】
なるほど。

【花岡】
『液体塩こうじ』の開発時も、まずは機械や設備に先行投資しました。「こんな良い商品ができたなら、お客様にとってもメリットしかないだろう」というような感じで。あとは、社内を盛り上げて。

【石水】
それは面白いですね。

‐『白い恋人』ヒットの裏側‐
【花岡】
顧客に求められるものづくりの中で、大事にされていることはありますか。

【石水】
おいしいということは、当たり前のことですよね。それを前提としたうえで、ブランディングを重視しているので、ストーリー性も大事にします。

商品を出したときに、お客様がどういう会話をするかなとか、そこを想像するのがすごく好きなんですよ。

『白い恋人』と聞くだけで、北海道を想像していただいたり、あとは恋人という言葉が入っているので、ちょっとロマンチックな印象があったり。その言葉のニュアンスは非常に強くて、北海道というのがかなり大きなキーワードかもしれないですね。

実は、私が会社に入りたてのころに、ホワイトデーで『白い恋人』を売り出そうというキャンペーンをやったのですが、大失敗に終わりました。

【花岡】
そうなんですか。

【石水】
なぜなら、ホワイトデーに『白い恋人』を受け取った女性は、バレンタインデーのお返しだと思わないんですよ。「北海道に行ってきたの?」となるのです。それぐらいブランドイメージが、北海道と強く結びついているといえますね。これは良い面でもあり、悪い面でもあります。

その失敗から、お客様が商品を買うときや受け取ったとき、召し上がったときに、どういう会話をするのかというところは、すごく大事にしています。

【花岡】
お客様が手に取ったときのストーリーを考えられるというところが、貴社の強みですよね。そのようなカルチャーが会社にあるのでしょうか。

【石水】
そうですね。そこはわが社の強みかもしれません。


‐顧客との接点を常に持つための工夫‐
【石水】
まずは北海道への愛があります。北海道が好きなので、「北海道を楽しんでほしい」とか「好きになってほしい」という気持ちがあります。

あと、「白い恋人パーク」の存在もかなり大きいですね。本社の目の前に「白い恋人パーク」があるので、お客様がいらっしゃって実際にお菓子を買ったり、お菓子づくり体験をしたりというのを間近に見ることができます。そこでお客様の表情や召し上がっている姿を見て、「お客様がこういうふうに言っていたよ」とフィードバックできるような、そういう土壌があるのは大きいかもしれません。

【花岡】
お客様との接点が常にあるのが大事なんですね。

【石水】
そこが見えているということがすごく大事だと思います。

【花岡】
当社も創業100周年のときに、「みそ作り体験館」という施設を伊那工場につくりました。そこでは、お客様ご自身がお味噌を仕込む体験や見学ができ、熟成が終わってできたお味噌を自宅にお届けしています。「みそ作り体験館」は、お客様との大切な接点ですね。

【石水】
その施設、ぜひ行きたいですね。一般的には、味噌って買うものですから、自分でつくることってないじゃないですか。それが実際に体験できるということは、すごく大きいですよね。

‐守るべきものと変えるべきもの‐
【花岡】
次の100年ということもテーマにされていますが、社長にとって守るべきものと変えるべきものというのは、どのように考えていらっしゃるのでしょうか。

【石水】
経営理念、ビジョン、コアバリューはきちんと守っていきたいですね。会社にとって一番の柱となる部分なので、そこは常々、話をしています。当社には「ファン」「プロフェッショナル」「セーフティー」「チーム」という4つのコアバリューがあります。。たとえば「ファン」というのは、“おかしな仕事”をしているか。

【花岡】
「ファン」というのは、お菓子と…。

【石水】
「お菓子」と「おかし」を掛けています。「プロフェッショナル」はプロ意識で仕事をする。「セーフティー」は安心安全、これは最優先ですね。「チーム」は仲間。チームで仕事をする、仲間とともに働くという意味に変わります。当社は、この4つのコアバリューをとても大事にしていまして、評価基準にもしているのですよ。

【花岡】
評価基準にも。

【石水】
この4つのコアバリューをきちんと意識して行動しないと評価も良くならないし、逆にそこをしっかりとやれば、必ず評価されます。

【花岡】
やはり評価制度と結び付けると、社員の皆様も意識しやすいですよね。

【石水】
そうですね。言葉で伝えるだけではなく、仕組みとして、理念、ビジョン、コアバリューをどうやって落とし込むかということを常に考えています。

【石水】
花岡社長の「守るべきもの、変えるべきもの」は、なんでしょうか。

【花岡】
当社には「素材とものづくりを大切にしていく」という経営理念があります。これは、従業員の心の中で、共感を得ているものではないでしょうか。バリューという言葉ではないのですが、私が社長になって、5つの行動指針というのをつくりました。

【石水】
それは社長の代になられてから?

【花岡】
そうですね。

【石水】
素晴らしいですね。


【花岡】
5つの行動指針は、新しい社長が、どういうことを考えているのかというのを示したものです。比較的コミュニケーションはとっているつもりですが、社員からすると、見える化されていたほうがいいのではないかと思いまして。

1つ目が「誠実さを忘れない」。これは「素材とものづくりを大切にする」という思いを、私の代になっても大事にしていきたいんだよという強いメッセージですね。

2つ目は「あいさつをする」。同じ仕事の連続だったり、大変なことがあったりすると、「おはようございます」とか「お疲れ様です」とか、そういう一言があるだけで、すごく心が楽になったり、明るくなったりすることがありますよね。、ですから、自分からあいさつをするようにします。

3つ目は「新しいことに挑戦していく」。これは先ほどもお話ししました「ハナマルキが今日まで続けてこられた理由」だと思うので、「会社もそうするから、みんなもそうしようよ」というメッセージを掲げました。

4つ目は「攻めの姿勢を崩さない」。創業100年を超え、老舗といわれることもありますが、まだまだ業界の中では新参者ですし、新しいことにもチャレンジしていかなくてはならない。半分以上は「攻めていくんだよ」と自分に言っている部分もあるのですが(笑)。

【石水】
わかります。私もコアバリューを考えたときは、自分に言い聞かせていました。

【花岡】
最後は「自分の意見を述べ、結論に従う」。オーナー企業のいいところは、社長がビジョンを示しやすいところだと思いますが、社員は言われたことをやっていればいいというマインドになってしまうこともあり得ます。ですから、できるだけ「自分の意見をしっかり言おう」と。そのために、これら5つを行動指針としました。

先ほどの石水社長のお話でヒントを得たので、今後は評価制度にもつなげていきたいと思います。

【石水】
そうすれば、行動指針は心まで染み渡るでしょうね。

⬛後編テキスト

‐コロナ禍という逆境を成長につなげるために‐
【石水】
ここ数年で、われわれの経営環境はものすごく変わったなと感じます。特に新型コロナウイルスの影響というのは、どこの会社でも大きかったと思うのですが、花岡社長は、逆境を成長に導くために何か対策したことはありますか。

【花岡】
新型コロナウイルス禍の前は『液体塩こうじ』のプロモーションで、店頭でのマネキン販売にかなり力を入れていました。まずは召し上がっていただきたいので、いろいろなイベントを開催して盛り上げていたのですが、それが一切できなくなりました。

そのため、スーパーの店頭でモニターを置いて遠隔で商品の説明をしたり、できるだけ新しい商品を多くの人に手に取ってもらえるようにサンプルを提供をしたり、コストダウンをしたり、できることをとにかくやろうと。

環境を言い訳にしないように、社内を活性化しようと思いましたね。ただ、新型コロナウイルスといえば、もう石水社長の事業は、当社なんて比べものにならないぐらい、本当に影響が大きかったのではないでしょうか。

【石水】
大きかったですね。

【花岡】
どうやって乗り越えたのですか。

【石水】
合言葉として「今だけ、金だけ、自分だけ」はやめようと発信しました。そのときは、かなり売上が下がっていまして、工場も3カ月間ストップしているような状況でしたね。これはもうなんとかするしかないということで、まずは、役員や経営幹部も含めて、全部をリセットしました。

ただリセットするのではなくて、きちんと基準を決めました。幹部になる者の必須条件は「愛社精神」と「行動力」と「人徳」。マネジメント職に立候補した社員全員を、これらの条件で360度評価したんですよね。

また、2026年に向けて「Stand By Hokkaido」というスローガンを掲げ、北海道に寄り添おうと5つの戦略を掲げました。

1つ目は「北海道に誇れるISHIYAブランドをつくる」。売上ではなくてブランディングをきちんとしようと。2つ目は「地域とともにオンリーワンな白い恋人パークにする」というもので、3つ目が「北海道広域にタッチポイント(顧客と企業との接点)を増やす」です。

やはり観光依存が非常に大きかったので、どんな状況になってもきちんと会社として成り立たせることは必要だと感じましたね。

あと工場に関しては「改善ラッシュで効率アップ」ということで、人も機械も「モビリティー工場」にしようと。つまり、もっと機動的に新商品や、新しい企画、市場の状況などに対応できるようにしようと取り組みました。そして、最後が「日本一失敗できる会社にする」です。

【花岡】
日本一失敗できる会社にするとは、面白いですね。

【石水】
失敗すれば評価しないということが頻繁にあったため、それではダメだと。PDCAの「Do」は大変いいことなので、それをきちんと評価して、自分たちでPDCAを回していくために、現場で働く社員の役職を全てなくしたんです。

【花岡】
役職をなくすって、すごいことですよね。

【石水】
要するに立候補制にしたんです。すると、立候補してくれる社員が結構いて、それは上司が決めるのではなく、選挙で決めようということにしました。現場で選挙して、票数が高かった人がリーダーになる仕組みに変えました。

‐他社にスカウトされるような人材を育成する‐
【石水】
ホームページで、花岡社長が「他の会社がこの人を欲しくなる。そういう従業員を育てたいんだ」ということをおっしゃっていてすごくいいなと共感しました。。どういう思いで発信なさったのですか。

【花岡】
これは、実は祖父の受け売りでして(笑)。子供のころを振り返ると、祖母から、祖父の出てた新聞の切り抜きを見せられるときがありました。30年前の記事なので、終身雇用の時代の話だと思うのですが、そのときから「他社からスカウトされるような人になれ」なんて言っていたということが、すごいなと思いました。

【石水】
それは素晴らしい方ですね。

【花岡】
父が社長になるときに、外部からいろいろな専門技能を持った人材を幹部に登用していました。

もちろんプロパー社員も大切なのですが「外の釜の飯を食ってきた人たち」、今風にいうと多様性だと思うのですが、これが企業の活性化を推進することにもなると、すでに考えていたのでしょう。

「他社からスカウトされるような人材になれ」というのは、私の代になっても、ハナマルキのDNAであり、特長になっていますので、今後も従業員に伝えていきたいと思っています。

‐地域とともにオンリーワンを目指す‐
【花岡】
石水社長の未来予想図はどのようになっていますか。

【石水】
「地域と共に、ナンバーワンではなくてオンリーワンを目指す」というところですね。ここはすごく大事にしていきたいポイントです。

やはり北海道に育ててもらった会社ですし、北海道という1つのキーワードをもって、ずっとブランディングをしてきたので。北海道に対する恩返しも含めて、その地域の自然やその地域の食、農家さんをはじめとした地域の人たちと一緒につくり上げていきたいなと思っています。これはコロナ禍になって、より強く思った部分です。

100年先も愛される会社になるためにはどうしたらいいのかを考えたときに、ナンバーワンになって規模をどんどん大きくするのではなく、北海道とともにオンリーワンな商品、サービスをつくり上げていくことが大切だと感じました。それが、当社の理念でもある「しあわせをつくるお菓子」につながっていくのかなと考えています。

【花岡】
北海道への愛を感じます。

【石水】
そうなんですよ。

【花岡】
それが『白い恋人』をみんなが好きになる理由で、そういう愛が共感を生むのでしょうね。

【石水】
たとえば、2017年に東京のGINZA SIXに「ISHIYA G」を出店したとき、新聞に大きく掲載されたんですよ。そうしたら、北海道民から苦情の嵐で。

【花岡】
苦情が来たんですか。

【石水】
「石屋製菓、北海道を捨てるのか」と。「『白い恋人』を銀座に出しちゃいけないだろう」と言われたんですよ。もちろん、『白い恋人』を出すとは記事に書いていないし、発信もしていないのですが、「新聞の記事が出ていたじゃないか」と。

それだけ愛されているし、北海道民を裏切るようなことは絶対できない。もちろん、そんなことをするつもりもありませんが、北海道民のために何ができるのかということを考えることも理念の1つで、そこが大事かなと考えています。

【花岡】
先日「ISHIYA G」にお伺いしましたけれど、『白い恋人』は一切、置いてないですよね。

【石水】
一切置いてないんですよ。『白い恋人』は北海道に来ないと買えない。そこを大事にしていきたいですね。

‐日本の食文化を世界に‐
【石水】
ハナマルキさんが目指す未来像というのはどういうものですか。

【花岡】
2013年ごろから、実は、お菓子の原材料の取り扱いも始めました。『液体塩こうじ』はお肉を柔らかくしたり、旨味を引き出したりするのと同様に、お菓子の食感を引き出しています。

お味噌も含めて、機能性の調味料をどんどん展開していくことが、ハナマルキがこれからも100年生き残っていくキーワードになるのではないかと考えています。

当社に『おかあさん』という味噌のブランドがあるのですが、「そのお味噌汁を飲むとホッとする」と言っていただくことが多い。そういった情緒的な価値に加えて、お味噌には昔、肉や魚を保存するための調味料として生まれた歴史もあります。

発酵食品というのが今、注目されていますので、そういった機能も含めて、な事業を展開していくつもりです。

【石水】
いいですね。インバウンドも含めて、今後は海外もターゲットにしていきたいという思いはありますか。

【花岡】
2020年に、タイに『液体塩こうじ』の工場をつくりました。今、本当に食のグローバル化が進んでいまして、日本で食べられる鶏肉や加工品の多くはタイや中国から輸入しています。そういったものにも使ってもらいたいなという思いもありますね。最近は、ハラル対応の塩こうじというのもつくりました。

【石水】
それは面白いですね。

【花岡】
インバウンドや、塩こうじ、味噌も含めてですが、ハナマルキの商品のファンになってくださる方には、国内、国外問わず、どこに行ってもお届けできるようなインフラを整備していきたいなと思っています。

【石水】
外国の方にも、最近日本食が広まっていますよね。

【花岡】
お菓子も人気がありますよね。

【石水】
やっぱり日本の食文化は世界に誇れるものですよね。

【花岡】
そうですね。そういったお菓子や発酵食品、お味噌というのは、日本の大きな価値になりますよね。

【石水】
絶対そうですよね。

【花岡】
本日はありがとうございました。

【石水】
こちらこそありがとうございました。

⬛経営者プロフィール


石屋製菓株式会社
代表取締役社長 石水創

2013年7月に3代目社長に就任。『白い恋人パーク』の運営や、道外初の直営店をオープンさせるなど、北海道発のお菓子の魅力を全国に発信している。


ハナマルキ株式会社
代表取締役社長 花岡周一郎

2022年8月に4代目として社長に就任。『液体塩こうじ』をはじめとした商品のグローバル展開を推進しており、日本の伝統ある食文化の普及に邁進している。