※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

ドラッグストアでずらりと並ぶサプリメントの棚を眺め、どれを買えばいいのか悩んだことはないだろうか。

トリコ株式会社(以下、トリコ)は、各個人にパーソナライズされたサプリメントを提供し、急成長を遂げたベンチャー企業だ。同社をけん引する代表取締役社長の花房香那氏にとって、トリコは二度目の起業だという。

成功のきっかけとなった「FUJIMII」ブランドやマーケティング戦略、M&Aを経ての今後の展望について、花房社長にうかがった。

二度目の起業でつかんだ成功

――「トリコ」創業は2社目とのことですが、経緯を教えてください。

花房香那:
そもそもは、大学の先輩が起業した会社でインターン生として働いていたところから始まっています。その会社がユナイテッドにM&A(企業買収)されて、私は学生のまま働いていました。そこで「100%子会社の社長になりませんか?」というお話をいただき、1社目を起業したのですが、本当に力不足を痛感しました。

当時、人脈がないので仲間も集まらず、業績も伸びませんでした。試行錯誤もむなしく、事業はストップしました。親会社のお金を溶かしてしまった未熟な自分がとても苦しかったです。次に起業するときは「自分で腹を痛めてやろう」と思って始めたのが今の会社「トリコ」です。

――やることを定めて起業されたのでしょうか。

花房香那:
「この世界を変えたい」というよりも「起業したい」という気持ちが強く、とりあえず箱(会社)を作ってしまおうと2018年4月に設立しました。私が得意なのはウェブメディアですが、会社というものは売上を伸ばすことに意味があると考えていたので、最初の半年は美容関連商品のメディア運営に焦点を当てていました。業績は伸びましたが、送られてくる商材のビジュアルイメージと手に取ったものの差が激しいことが多く、「こんなもので効果がでるわけがない」と思うことも多かったです。ならば自分で良いものを作ろうと路線変更をして、2019年2月にパーソナライズビューティーケアブランド「FUJIMI」を立ち上げました。

新規事業のキーワードはパーソナライズ

――「FUJIMI」について教えてください。

花房香那:
「FUJIMI」では、パーソナライズされたサプリメントとフェイスマスク、プロテインとスキンケア化粧品を扱っています。

少し前まで、サプリメントは無機質で「なんだか胡散臭い」「ご年配の方が摂取するもの」というイメージで、また、自身の栄養状態を正確に把握できている方が少ないように私は感じていました。

そこで、第1弾は化粧品のように気分が上がるもので、ユーザーの悩みを解決するパーソナライズされたものを提供しようと考えました。個人の状態に合わせてサプリメントを提供するというパーソナライズは、間違いなく需要があると感じていました。

インナーケアは結果が出るのに時間がかかるので、第2弾はスペシャルケア用としてフェイスマスクを売り出しました。

第3弾にプロテインを出しましたが、仕掛けのタイミングがとても良かったと思っています。当時、プロテインは男性が筋肉増強のために飲むものというイメージから、美容や健康に役立つという認識に変わり始めていて、女性が手に取りつつありました。プロテイン市場が拡大する一方で、どれを選べばいいのかわからないという悩みに着目し、個々のニーズに適応したプロテイン、すなわちパーソナライズしたプロテインを開発し、それが大きな反響を呼びました。

そしてブランド創設から3、4年経ちリブランディングしたのに合わせて、第4弾としてスキンケアシリーズをリリースしました。

「使用するお客様の自己肯定感を向上させたい」というのが「FUJIMI」ブランドの根本にあります。

「FUJIMI」ブランドを見つめ直す

――さきほどリブランディングされたとおっしゃいましたが、目的を教えてください。

花房香那:
「FUJIMI」で始めたサプリメントは、手作り感や温かみのあるクラフト感でスタートしました。予想以上に反響があり、「FUJIMI」のコンセプトがノープランのままブランドが急成長しました。このままでは私と共同創業者でも言っていることが違ってしまうので、なんとか言語化しようと思い、リブランディングしました。

結果として、ターゲットにするお客様や、プロモーションの良し悪しも明確になりました。従業員も目指すブランド像をしっかりと理解し、お客様も「FUJIMI」を捉えやすくなったと思います。

目指すは「ポーラ・オルビス・トリコホールディングス」

――貴社はポーラ・オルビスホールディングスの子会社となりましたが、ポーラ・オルビス経由で販売を増やしていくことを考えていますか?

花房香那:
おっしゃる通り、弊社は2021年2月に、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスの傘下に入り、100%子会社となっています。ゆくゆくはポーラブランドとの相互製品開発や、オルビスの倉庫ロボット技術を利用できたらと思っていますが、まずは「FUJIMI」ブランドの成長が第一です。

ポーラ・オルビスホールディングスの基幹ブランドは「ポーラ」及び「オルビス」の2つです。2029年に創業100周年を迎えますので、その時に弊社も基幹ブランドとなり「ポーラ・オルビス・トリコホールディングス」となることを目指します。現在、オルビスの売り上げが年商500億円なので、弊社も同規模の500億円を売り上げ目標としました。「ポーラ」「オルビス」と並ぶブランドとして認知されるように、挑戦を続けていきます。

また、ポーラ・オルビスホールディングスからスタートアップ人材として評価されてグループ入りしたと思っているので、ネットを駆使してパフォーマンスを出していきたいです。そのために、マルチブランド戦略を考えました。

「FUJIMI」がこれまでに獲得したマーケティングやサプライチェーン、開発デザインなどの機能やスキルを活かして、複数のブランドの新規立ち上げをスピード感を持ってやっていきたいと思っています。スピードと立ち上げ力は弊社の強みでもあります。

――新規取引先開拓などの構想をお聞かせください。

花房香那:
店舗展開や海外展開を強化し、新しいチャネル(集客するための媒体、経路)を開拓していきたいです。じつは新しいブランドを来年にひとつ立ち上げようと準備に走っています。リアルとネットのバランスやお客様のタッチポイントなどを初期段階から考え、どのチャネルをどの割合で活用するかバランスを検討しています。

弊社は「FUJIMI」の次に「GINZUBA」というブランドを2023年8月にローンチ(新しい商品を売り出すこと)しましたが、準備期間はわずか10ヶ月でした。商品開発のスピードなど、「FUJIMI」の5倍の速さです。

弊社はD2C(メーカーが直接消費者に商品を販売する方法)なので業務をアウトソーシングしようと思えばできるのですが、それはしません。スピード感も損なわれるし、なにより優れた人材といままでのノウハウがそろっているので、すべて内製化できています。これによりナレッジ流出を防いでいることも、強みのひとつになっていると思います。デザインもマーケティングも商品開発なども自社でやっています。

ノウハウを活かして新規事業として代理店業をしたら大きな利益を上げられるかもしれない、そのくらい自信があります。

自己肯定感が高まるブランドを実現したい

――「FUJIMI」ブランドの今後の展開について教えてください。

花房香那:
以前は、パーソナライズが「何を選べばいいかわからない」状態から始まっていましたが、最近は「なりたい姿に合った商品を提供する」方向へシフトしています。たとえば、ボディメイクしたいというお客様に対して、「FUJIMI」がニーズに合わせてセットアップ提案するという感じです。もちろん商品だけじゃなくて、食生活や運動などのアドバイスも合わせて提供することで、お客様が理想の自分に近づくための総合的なサポートができればと思っています。

世の中には、「かわいい」や「美しい」といった見た目を重視したウェルネス商品はたくさんありますが、使っていてテンションが上がる商品は、まだまだ少ないと感じています。
「FUJIMIなら気持ちを高められる」「自己肯定感を高めながらダイエットしたいときはFUJIMIにしよう」というような、頼られる存在になるのが今後の展望です。

――そのために、どのようなマーケティング戦略をお考えでしょうか。

花房香那:
創業当初は新規獲得のKPI(重要達成度指標)がすべてだと思っていました。けれど、長く残るブランドにしたい、大切に育てたいと考えるようになり、LTV(顧客の生涯価値)など新しい尺度も取り入れるようになりました。

お客様とSNSや公式LINEでコミュニケーションをとるなど、継続的に購入してくれるロイヤルカスタマーとの良好な関係を築くことで、信頼度を高めて長く愛されるブランドになることができると考えています。

花房社長が望む人物像

――入社される方に求める人物像はありますか?

花房香那:
誠実な人です。誠実であることで吸収できることがたくさんあると思います。注意されたり、ミスをしたり、失敗を経験してもそれを乗り越える強さ、受け入れることができる心の広さは、すべて誠実さにつながっていると思っています。

編集後記

「ポーラ・オルビス・トリコホールディングスを目指す」と情熱を持って語る花房社長の姿に強いリーダーシップを見た。
パーソナライズで「FUJIMI」ブランドを成功させたのを皮切りに、次々とマルチブランド戦略で多角展開をしかける勢いには多大なる可能性を感じる。
花房社長の挑戦に、これからも注目していきたい。

花房香那(はなふさ・かな)/1994年東京都生まれ。横浜国立大学卒業後、ユナイテッドの子会社である株式会社ミワクを設立し、アプリ運営に従事。2018年4月よりトリコ株式会社を立ち上げ、2019年2月よりFUJIMIブランドを展開する。2021年にポーラ・オルビスホールディングスにグループ入り。現在は1児の母として育児と仕事を両立しながら活躍中。