※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

オートバイ用品を扱う業界は、耐用性のある製品が必要とされることはもちろん、嗜好の影響を大きく受けるため、幅広いラインナップや大量の在庫を確保することの難しさなど、課題が多い。

そんな業界において、長く利用者から高い評価を受け続け、70周年を迎えた南海部品株式会社。今回は、代表取締役社長の中嶋英雄氏から、成功するまでの企業努力、成功のきっかけ、代表取締役としての努力してきたこと、今後の展望などについて聞いた。

業界をリードし続ける企業に成長するまで

ーー起業のきっかけと代表取締役になるまでの経緯を教えてください。

中嶋英雄:
父である前社長がオートバイ用品の商店としてスタートし、2年後に法人化、今年で70周年を迎えました。

私自身は、就職活動時オートバイにこだわらず、ショップのチェーン展開を行っている企業で働きたいと考えていて、いくつか内定が決まっていました。ですが、父から一緒に働いてほしいという話をされ、当時箕面に100坪位の大きな直営店をつくる予定があり、「その店舗を好きにさせてくれるなら」という条件で入社をしました。

ーー貴社の事業の強みを教えてください。

中嶋英雄:
メインの事業内容はオートバイに関連する商品の卸売事業です。一方でメーカーとしての機能も持っており、ウエア関係をはじめ、最近では盗難防止のロックやバイクナビゲーションの開発にも力を入れています。バイクナビゲーションは開発が難しい分野ではありますが、弊社製品は耐久性が高く、お客様から高評を頂いております。

ーー企業ブランディングについての考え方を教えてください。

中嶋英雄:
創業者の教えもあり、ブランディングに50年くらい前から力を入れていました。
商品を知っていただくため、タレントを起用した30分番組「LALAバイクパラダイス」の制作やテレビ・雑誌への広告掲出を行い、商品がお客様の目に触れる機会を増やすことに注力してきました。

ーー貴社製品が広く知られるようになったきっかけがあれば教えてください。

中嶋英雄:
1985年にロードレース世界選手権500ccクラスで、史上最年少チャンピオンになったフレディー・スペンサーというアメリカ出身のレーシングライダーと契約したことが大きな契機となりました。

契約できた1番の理由は商品を気に入ってもらえたことです。ウエアに利用する皮は牛革が一般的ですが、弊社商品は、メーカーと独自に開発した山羊の皮であるゴートスキンを利用した商品で「軽くて強い」という利点がありました。コーナーを身軽に速く回れるウエアが欲しいという彼のニーズと合致したのだと思います。それから、弊社は多数の海外の有名ライダーと契約することが出来るようになりました。

代表取締役としての努力

ーー感動したエピソードがあれば教えてください。

中嶋英雄:
ブルゾンに20年前からプロテクターをつけはじめたのですが、お客様から事故にあった際、弊社のブルゾンを着用していたから怪我をしなかったという手紙を頂いたことがあり、大変感動したのを覚えています。

商品を利用して良かったところや改善点についてご意見を頂くこともあり、弊社の製品に向き合ってくださるお客様がいることを、日々ありがたく感じています。

ーー取り組まれた社内改革はありますか。

中嶋英雄:
代表取締役に就任してからは、店舗に対して積極的に販売方法のアドバイスをするようになりました。6年前からリテール戦略室もつくったのですが、スタッフの力添えも大きく、販売するためのデータやノウハウが充実してきています。今後はそれらを元にフランチャイズ店の営業担当とも強固に連携をとり、更なる発展に注力していきたいと思っています。

叔父が専務で、私が会社を継いだ当時、叔父から、「自社の儲けのみを優先せず仕入れ先を大事にすることが大切だ」と教えられていたため、この発想に至ることができたのだと思います。

今後の課題と展望について

ーーオートバイ業界の今後の課題を教えてください。

中嶋英雄:
利用者層の拡大だと思います。オートバイの利用に興味のある20代の方や女性が少ないのが現状で、とくに女性比率は2割程度です。オートバイの魅力を知らなかったり、コスト的に利用するハードルが高いというのが大きな理由だと思います。

一方でYoutubeを見て女性ライダーになる方がいらっしゃったり、弊社が運営しているライディングスクールに参加することで、本格的にオートバイに興味をもってくださる方も年々増えてきています。

ーー先程の今後の課題について貴社の取り組みを教えてください。

中嶋英雄:
利用者の気持ちに寄り添った商品開発を続けることと、その商品の良さを知ってもらうこと、そしてコスト削減への注力も怠りません。

商品開発においては、たとえば、夏場の暑さを解消できるウエアをスポーツアパレルの企業と共同開発を行っている最中で、利用する人がどうしたら快適に楽しむことができるかを常に考えるようにしています。

また、弊社ブランドの利便性や良さを知ってもらえるよう、ストーリー性のあるブランディングを心がけています。販売店にアクセスしにくい人のためにEC販売を本格化するべきだとも考えています。

コスト削減については、生産から物流までをワンストップで一環して行うことと、OA化した物流倉庫の利用で、コストをできる限り削減し、若い方にも購入しやすい価格帯の商品開発を進めていきたいと考えています。

ーー今後の事業に対する考え方を教えてください。

中嶋英雄:
弊社は今年70周年を迎え、リブランディングを行いました。新しくスターシリーズというブランドを立ち上げ、「STAR」のSがスポーツ、Tがツーリング、Aがオールラウンド、Rがベーシックという意味で、区分を設け商品分野を分けることで、お客様が選びやすくなるようにという考えと、業界の1番星になりたいという願いが込められています。

弊社のロゴにも記載のある、スローガン「Always Riders at Heart」には、常にライダーの側にいること、つまりライダーに寄り添った事業を大切にしたいという思いが込められています。70周年を迎えた今、今後もこの思いを大切に、業界の1番星として輝き続ける企業であるために、事業に取り組んでいきたいと考えています。

編集後記

常にお客様の気持ちに寄り添うことのできる企業であり続けることを目指して努力し続ける中嶋社長。
業界の更なる発展も視野に入れ、70周年を迎えた今も更なる挑戦を続ける南海部品株式会社に今後も注目をしていきたい。

中嶋英雄(なかじま・ひでお)/1955年富山県生まれ。南海部品株式会社の2代目として生を受ける。関西大学卒業後、1978年、創業者である父の後継者として入社。入社と同時に新しく設立した大型店舗「南海部品箕面店」店長に就任。2002年に代表取締役社長に就任。全国二輪車用品連合会の理事でもあり、二輪ライダーのマナーやプロテクターなどの安全具の装着に関する啓蒙活動にも力を入れている。