※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

業務スーパー事業や酒類の製造、卸および販売事業のほか、飲食店のフランチャイズや自社ブランドのレストランなど、多角的に事業を展開する株式会社サンフェステ。

2023年3月には東京証券取引所のプロ向け市場であるTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に株式上場を果たし、今後も2桁増収を見込むなど、堅調な企業規模の拡大を続けている。

サンフェステの創業メンバーである谷龍一郎氏が社長就任に至った経緯、社長就任後の苦労、注力する事業や今後の事業展望について話をうかがった。

学生時代のアルバイトからグループ会社に入社、上場をきっかけに社長就任

ーーご経歴と社長就任の経緯について教えてください。

谷龍一郎:
弊社の創業当時、私は大学3年生でアルバイトとして働いていたので、その流れで卒業後にサンフェステのグループ会社の株式会社三煌産業に入社しました。その後、長年サンフェステの店長を経験するとともに、弊社の主要事業の責任者も歴任しました。

社長就任のきっかけとなったできごとは、2023年の東証TOKYO PRO Marketへの上場です。創業者は三煌産業の代表者でもありましたので、IPOを検討する中で、当時副社長だった私に白羽の矢が立ちました。

ーー若い頃から社長になることを目指していたのでしょうか。

谷龍一郎:
28歳の時、創業者であるオーナーの面談を受ける機会があり、「10年後のキャリアをどう考えているか」と聞かれました。若くて血気盛んな年頃だったので、「38歳で社長になる」と私は答えました。

力足らずで、10年で社長になる夢は叶わず、38歳のときに挫折感を覚えましたが、それから10年間は与えられた仕事を通じてお客様や取引先、会社の同僚の信頼を得るため一生懸命に働くことに徹してきました。倍の20年かかりましたが、48歳にしてやっと思い描いた立場に到達できた時は感慨深いものがありました。

社長を目指した大きな理由の一つが、創業者の存在でした。私にとって創業者の背中は大きく、先を走るその背中を懸命に追いかけて今に至っていると思っています。創業者が富士山の頂上にいるとすれば、私はまだ一合目といったところです。

社長として課された「上場」のミッション、全力疾走で仕組みを整備する

ーー社長就任後に苦労されたことは何でしょうか?

谷龍一郎:
2021年の社長就任の時点では、頭の中の半分を「上場」の2文字が占めていました。会社の制度設計やさまざまな仕組みなど、上場企業として足りていない部分が多かったので、スピード感をもって全力疾走で取り組み、順次整えていきました。

ほかの苦労といえば、今でも悩みは尽きない人材の確保です。弊社は店舗展開する事業がメインですので一定の人員が必要です。しかし、従業員が100人もいれば必ず離脱する人が出ます。従業員が会社を去るたびに社長としての責任を痛感し、「なぜあの人は弊社を去ったのだろうか」と自問自答しています。

「食」にまつわる事業の水平および垂直展開をさらに推進

ーー事業内容の今後の展望について教えてください。

谷龍一郎:
弊社は業務スーパー事業や創業事業である酒類販売事業、飲食事業など「食」に関連する事業によって構成されています。今後も、食に関する水平および垂直展開の経営スタイルは変えることなくさらに推進させていきます。

業務スーパーや飲食店などのフランチャイズ事業は引き続き行いつつ、自社ブランドであるイタリアンレストラン等の店舗展開にも注力することで、飲食にまつわる弊社のブランドを確立したいと思っています。

ーー酒類については小売や卸売、製造など多様な事業展開をされています。

谷龍一郎:
店舗を通じた一般のお客様への販売とともに料飲店への配達なども行っています。また、オリジナルの紫芋焼酎の製造と卸売も行っています。契約農家から原材料の紫芋を調達するところから始まり、川上から川下まで一気通貫で取り組んでいます。

基本的に、小売業はローカルエリアの商圏から抜け出すことが難しいのですが、この焼酎については営業努力のかいもあり既存エリアを越えた事業展開ができています。

さらなる商品の認知度や質、および生産能力の向上が必要と考えていますが、いずれは弊社の焼酎ブランドを日本全国にあまねく流通させることを目標にしています。

主体性を持って取り組み、小さな成功を積み重ねることが大きな成功につながる

ーー従業員に伝えたいことや期待することを教えてください。

谷龍一郎:
どの会社でも同様とは思いますが、会社の大きな方針や戦略の中で従業員一人ひとりが主体制をもって仕事に取り組んでほしいと望んでいます。指示待ちの態度ではなく、自ら行動して最終的に自ら責任をとる気構えのある人を育てていきたいと思います。

ーー採用したい人物像についても教えてください。

谷龍一郎:
主体性に加えて、人と関わることが好きな人物を求めています。弊社は接客する業種・業態が中核ですので、お客様への対応はもちろんのこと、従業員同士のチームワークやコミュニケーションも重要な要素になります。

スポーツにたとえるなら、陸上競技ではなく野球やサッカーのようなチームスポーツに近い、協調性を持った人はぜひとも弊社に来ていただきたいと思っています。

ーー最後に若い方々に向けてメッセージをお願いします。

谷龍一郎:
勉強でもスポーツでも遊びでも構わないので、1つのことを自信を持って成し遂げることが大事だと考えています。小さな成功体験の積み重ねが大きな成功体験につながると私は確信しています。

また、仕事は楽しいことばかりではなく、時に苦しいこともありますが、若いうちに経験した苦労や悔しい思いは仕事にも必ず生きてくると思います。人は誰しも失敗しますが、「その後で取り返してやろう」という気持ちの強さを培ってほしいと思います。

編集後記

現在、急速な成長ステージにいるサンフェステ。上場により資金調達も容易になったことで、自社ブランドの店舗拡大やオリジナル焼酎の蒸留所への設備投資の加速が予想される。

「飲食が好き」と率直に語った谷社長。今後は「食」にまつわる事業の水平および垂直展開や営業エリアの拡大にも取り組むという。上場をはずみに既存事業や商圏を越えて成長を目指す同社の事業展開に注目だ。

谷龍一郎(たに・りゅういちろう)/1973年京都府生まれ。立命館大学卒。1998年に当時グループ会社であった株式会社三煌産業に入社。その後、株式会社サンフェステに転籍し、2021年に同社代表取締役に就任。