※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

惣菜専門店「クックデリ御膳」と、おにぎり専門店「おにぎり家一粒」を運営する株式会社いいなダイニング。消費者のニーズに応えた、米飯・惣菜の製造販売を通して、ますます便利で豊かな「あったら、いいな」を提供し続けている。今回は、代表取締役社長の梛木浩二氏から、社長就任の背景、代表としての考え方、大切にしていること、今後の展望まで幅広く話をうかがった。

長い自営業時代の不運を乗り越え、確実な手腕と実績でオーナー社長へ

ーーはじめに、梛木社長のご経歴、社長就任の背景をお聞かせください。

梛木浩二:
個人経営で10数年間、中食事業に携わっていました。事業は好調でしたが、隣人の火事や取引先の大型商業施設の倒産などの外部要因により事業を失う経験を何度かした後、初めて会社勤めをすることになりました。そこでこれまでに培った経験や経営者としての感覚を活かし、赤字店舗をすべて黒字に転換するなどの実績を上げました。

その手腕と実績が評価され、一般社団法人日本惣菜協会会長から打診を受けて2003年に出向という形で弊社に入社。入社後も変わらず成果を上げ続けたことで毎年役職が上がり最終的に常務に就任、担当した部署の収益を大幅に改善し、平均2000万円程度だった利益を2億円にまで引き上げました。

その後、2016年に阪急グループが経営の選択と集中を進める一環として「いいなダイニング」への出資割合を引き下げることになりました。その際に、自ら株式比率61%分を出資してオーナー社長となったことが、代表取締役社長就任の背景です。

ーー出資して、オーナー社長になると決めた理由は何ですか?

梛木浩二:
この仕事が楽しくて、「まだ辞めたくない」と思ったからです。ただ、辞めたくないという気持ちは、一般的に前向きな発言として捉えられますが、ある程度年齢を重ねてくると経験や価値観、考え方の違いによりマイナスに捉えられることもありますから、その線引きが非常に難しいですね。

従業員全員が幸せでいるには、私はどこかで線を引いて引退しないといけない時がくるでしょう。根本はあくまで事業存続のため、独りよがりにならないようにしなければと思っています。

ーー梛木社長が大切にしている考え方を教えてください。

梛木浩二:
「今ある当たり前に感謝する」ことです。発想の転換というのは非常におもしろくて、物事をどう捉えるかによって、見え方も考え方も変わります。今できていることがいつかできなくなりますし、当たり前が当たり前ではなくなるときが必ず来ます。今ある当たり前に感謝できるようになれば、心が豊かになり、仕事も人生もうまくいくと考えています。

地道に面倒なことを続けることで「伝えたくなる価値」が生まれる

ーー貴社の事業内容、商品へのこだわりをお聞かせください。

梛木浩二:
米飯・惣菜といった中食の製造販売、給食事業を行なっており、時代の流れやニーズに合わせた商品を提供しています。こだわりは、経営理念に掲げている「伝えたくなる価値」を提供すること。美味しいものは世の中にたくさんありますが、それが他の誰かに伝わって初めて正解になると考えています。期待されている以上の、誰かに伝えたくなるようなものを何品作れるかという部分に特にこだわっています。

ーーどのようにしてコロナ禍を乗り越えましたか?

梛木浩二:
コロナ禍で業績は下がりましたが、状況はどこも同じなので、今だからこそできることを見つけようという感覚でしたね。光熱費や原材料費の高騰など、さまざまな課題がある中で、どうやって粗利を上げるかにフォーカスし、粗利改善+相乗積で細かく分析を続けていました。非常に苦労しましたが、その甲斐あって結果として大きく業績を伸ばすことができました。

また、弊社ではDXに依存せず、面倒なこと=付加価値と考え、他社に真似できないことを大切にしています。地道に売り込みを続けて、ここ2、3年で新規の取引先が6社ほど増えました。大事なのは、条件ではなく「味」を比較していただくこと。お客様の立場ならどちらを選ぶか、という発想で見ていただいています。

何事も発想の転換と捉え方次第、一生懸命やる人を放っておかない

ーー貴社では、どのような育成環境や方針をとっていますか?

梛木浩二:
弊社では、やる気のある人にはチャンスを与えます。阪急・東宝グループの創業者である小林一三氏は「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ」という言葉を遺しています。懸命にやっていれば、誰かが見ている、頑張っている人は絶対に放っておかないということですね。

私自身もその言葉を見て一生懸命やってきましたし、従業員たちにも「誰も見ていないところでも懸命にやっていると、必ず伝わる」と日頃から伝えています。

ーー最後に、中長期的な展望や方針を教えてください。

梛木浩二:
将来的には新工場・新社屋の建設を予定しています。弊社は阪急グループの関連会社で、経営陣は阪急グループからの出向者が占めていましたが、今は私がオーナー社長です。将来的には役員も代表もプロパー社員で構成します。これは非常に夢のある話だと思います。みなさんに伝えたいのは、「本当に思うのであれば行動すべき」だということです。

編集後記

個人経営で無我夢中にやってきた経験が功を奏し、出向者からオーナー社長になった梛木社長。自営業時代の不運やコロナ禍での経験も、発想の転換と確実な手腕でプラスに変えて来た。その社名の通り「あったら、いいな」を、これからも提供し続けてくれることだろう。

梛木浩二/1969年大阪府生まれ。2003年株式会社いいなダイニング入社。販売部門配属され、2014年3月より製造部門兼任。2016年6月代表取締役社長就任。