オーエスグループは、AV機器などの企画・開発・設計・製造・販売から施工・アフターサービスまでをワンストップで提供しているグローバル企業だ。
また、社会をデザインする総合AI(AV×IoE)システム企業として、最先端の組み込み技術を取り入れた製品、商品、サービスも提供している。
今回は、代表の奥村正之氏に、就任までの経緯や、苦労したエピソード、今後の展望、目指していく会社の姿などについて話をうかがった。
創業71年の老舗企業の代表に就任するまで
ーーグループの代表に就任するまでの経緯を教えてください。
奥村正之:
オーエスは私の父が創業した会社です。当社がメーカーだったので、販売の仕組みを学ぶために商社を希望し、大学卒業後は株式会社大沢商会に入社しました。大沢商会では、社会人としてのマナーや業務の進め方など、さまざまなことを教えてもらい、良い経験を積ませていただきました。
しかし、大沢商会で働いて2年ほど経ったころにバブルがピークを迎え、父の経営する会社が深刻な人材不足に陥ってしまいます。その時に、父から「当社に来ないか」と声がかかりました。
大沢商会での仕事は順調で、充実した日々を過ごしていたので悩みましたが、退職を決め、1989年に当社に入社しました。
入社後はさまざまな苦難に見舞われましたが、1990年に父から任命され、代表取締役に就任することになりました。
ーーさまざまな苦難とは、具体的にどのようなことでしょうか。
奥村正之:
まず、大沢商会と当社との違いに悩まされました。当時の大沢商会は会社更生法による再建中とはいえ、東証1部上場の企業で社内ルールや業務の進め方などがしっかりと決まっていました。
しかし、当社はその逆でルールがあいまいで明文化されておらず、業務は属人化しており、良くも悪くも皆が自由に仕事を進めているという環境だったのです。
そこで、ルールの整備や業務効率化を進めようとしましたが、社員から理解を得ることが難しく、なかなか結果に結びつけることができませんでした。
そんな苦しい状況の中、父から代表取締役に任命されて就任しましたが、そのタイミングで社員の多くが退職してしまったのです。人手不足で仕事を進めることが困難な状況となりましたが、「絶対に会社を潰さない」という強い思いを持っていたので、新しい社員を採用し、諦めずに社内ルールの整備や第1世代である基幹システムの導入により業務効率化を進め、立て直していくことができました。
モノづくりだけでなく社会インフラも支える企業に
ーー総合AI(AV×IoE)システム企業である貴社の今後の展望を教えてください。
奥村正之:
当社はモノづくりを行うメーカーですが、将来的には「つくるモノをできるだけ減らしていける世の中にしていきたい」と思っています。トラックが排ガスを出して大量生産したものを運んで、そして廃棄する循環がある以上、環境に与える被害は増える一方です。
たとえば、パソコンのディスプレイ画面の映像を仮想空間で表示できるようにしたり、音や感触も全て電気信号で伝えることができるようになれば、今までその役割を担っていたモノをつくる必要がなくなり、「必要なモノ」を「必要な時」に「必要なだけ」、「必要な人」へ届く社会へと変貌すると考えています。
そして、私たちのようなメーカーは、その電気信号を与えるモノを企画・設計し、回路データや設計図を提供できるような企業に生まれ変わることができると思っています。
ーー将来的には貴社をどういった会社にしていきたいですか?
奥村正之:
当社は総合AI(AV×IoE)システム企業として、製品や商品などをパーツとしてお客様にお届けするものづくり事業と、人々の暮らす社会をデザインする空間デザイン事業の2つの事業を軸として提供しておりますが、今後は社会インフラを支えられる企業に成長させたいと思っています。
たとえば、田舎の高齢者の方のために自宅に居ながらスマートフォンでバスの運行状況がわかるシステムをつくったり、各家庭にナースコールのシステムを設置して遠隔で診察を受けられる環境を整えたりすることで、高齢者の方が住みやすい生活基盤を支援することができるかと思っています。
会社や商品に依存せず自分の価値を高める経験をしてほしい
ーー最後に読者の若手人材の方に向けてメッセージをお願いします。
奥村正之:
自分の人間性を高める努力をしてほしいと思っています。商品が売れる重要なファクターとは「良い商品である」ことはもちろんですが、「つくった人のものづくりにかける想いや販売する人の魅力である」と考えています。たとえば、お客様から「あなたが売る商品なら買います」と言っていただけるようなことです。
このように、自分の人間性を磨き、魅力を身につけることができれば、それは自分だけの強みになります。所属する会社や商品に依存せず、自分だけの強みを身につけられるよう、さまざまなことを経験してみてください。
編集後記
創業から71年、お客様のニーズに応え、多くの製品を届けてきたオーエスグループ。今後は社会インフラの事業領域も強化し、自社の強みを発展させていくための取り組みを続けていく。
努力と挑戦を続け、さらなる成長に向かうオーエスグループから、今後も目が離せない。
奥村正之(おくむら・まさゆき)/1963年、大阪府堺市出身。関西大学法学部政治学科卒業後、1987年株式会社大沢商会に入社。1989年9月株式会社オーエス入社、1990年12月株式会社オーエス、株式会社オーエスエム代表取締役に就任。以後、国内6社・海外2社のオーエスグループ代表に就任し現在に至る。