浅香工業株式会社は、ショベルやスコップなどの土工農具、園芸用品、物流機器の総合メーカーだ。唯一、ショベルの国内製造に取り組んでおり、「金象印」のブランドマークの認知度は非常に高い。
今回は代表取締役社長の岡田実氏に、社長就任時の心境やコロナ禍の苦労、新卒時代、感動したエピソード、会社の強みなどについてうかがった。
コロナ禍の巣ごもり需要に合ったホームセンター市場で、売上をつくった
ーー貴社の代表取締役社長に就任した時の心境を教えてください。
岡田実:
2019年6月に弊社の社長となったのですが、その約7ヶ月後に新型コロナウイルスの最初の感染者が確認されました。その後、工場の稼働時間を短縮したり、営業活動も十分にできなくなるなど、とても厳しい状況でのスタートとなったので、不安な気持ちが大きかったですね。
ーーコロナ禍中の厳しい経営をどのように乗り越えましたか?
岡田実:
コロナ禍の影響で巣ごもり需要が高まったことでホームセンター市場で売上をつくることができたため、想定していたよりも全体の売上の低下を防ぐことができ、何とか乗り越えることができました。
弊社は国外ではなく、国内で商品をつくっているため、製造を続けられたことも、乗り越えられた理由の一つだと思っています。
与えられた仕事に対し、考えて行動する大切さを学んだ新卒時代
ーー新卒時代はどのようなことを意識して仕事に取り組んでいましたか?
岡田実:
大学卒業後に弊社に入社し、その後、約12年間は営業職として働いていました。置かれた立場でやらなければいけない仕事に対し、どうしたいのか・何をすればいいのかを考えることを意識していました。
目標達成するためには、単純に商品を提案するだけでは足りず、今まで先輩たちが築き上げてきた基盤に対してプラスの影響を与える動きをする必要があります。
買いたい人に商品を売るだけではなく、売れていないところにどうしたら売ることができるのかも考え、それを達成できるよう、主体的に動いてきました。
また、当時弊社のショベルを長く使う中で柄の部分が古くなってしまい、修理の依頼に来てくれたお客様がいました。柄の修理代とショベルを買い替える費用を比較すると買い替える方がお得なのですが、そのお客様は「使い慣れているショベルを使いたい」ということで修理を選んでくれました。
弊社の商品をできるだけ長く使おうと考えてくださるお客様がいることがわかり、とても嬉しく思いました。
品質第一主義の製品づくりに長く取り組んできた
ーー岡田社長から見た貴社の良さはどのようなところにありますか?
岡田実:
とてもオープンなコミュニケーションを取ることができる点が弊社の良さだと思います。
取締役会や総務会議など、さまざまな話し合いの場面がありますが、社員間・部署間で壁を感じることは一切ありません。
本音で意見を交換でき、皆で臨機応変に対応できるので、連携がしっかり取れている会社だと感じています。
ーー貴社の強みを教えてください。
岡田実:
弊社の経営理念にも掲げていますが、品質第一主義の製品づくりを続けています。また、「金象印」というブランドを持ち、唯一、ショベル・スコップの国内製造を行っていることが強みです。
長い歴史の中で先輩たちが育て上げてきたブランドや商品には確かな自信があり、これらの商品は信用力を持っています。今後も品質を落とさず、良い商品を提供し続けたいと思っています。
ーー社内にユニークな制度があるとうかがいましたが、詳しくお聞かせください。
岡田実:
営業部内に「アイディア創出制度」というものがあります。これは営業だけが取り組むものではなく、営業が出した案を商品開発が検討し、それを元に取締役が議論をし、商品化に落とし込むというように各部署の力を借りて取り組むものです。
営業側にとっては商品開発に関わる機会にもなるので、成長にもつながる、とても有意義な制度だと思っています。
市場のニーズに合わせて商品提供の場を拡大していきたい
ーー今後注力していきたいことなどはございますか?
岡田実:
狭い業界ではありますが、弊社の商品を提供できる場をさらに広げ、そこでの基盤強化をしていかなければならないと考えています。
たとえば、ホームセンター市場の中では「プロショップ」というものが増えてきているので、ここを1つの大きなターゲットにしています。そしてそこに来るお客様はプロの方が多いので、プロの方にほしいと思ってもらえるような、プロのニーズに合わせた商品開発をしていく必要があると思っています。
外的要因に惑わされず、できることに全力で取り組む
ーー最後に読者である若手人材に向けてメッセージをお願いいたします。
岡田実:
災害や景気の動向、気候変動、円安、原材料の高騰など、さまざまな外的要因により、ビジネスは脅かされます。しかし、これらは私たちには変えることができないものです。外的要因を嘆くのではなく、そのための対策をとることが大切です。
弊社は組織強化や意識改革など、社内で取り組めることもまだまだたくさんあるので、まずは内部でできることを強化していこうと動いています。このような考え方を共有できるような方がいれば、ぜひ入社して一緒に働いてほしいと思っています。
編集後記
コロナ禍に入ってしまい、決して好調なスタートとは言えなかった社長就任時。しかし、国内製造の強みを活かして巣ごもり需要に合わせた商品提供を行い、その危機を乗り越えてきた。
「外的要因を嘆くのではなく、社内でできることにしっかり取り組むことが大切」という言葉は、コロナ禍での厳しい経営状況を乗り越えた岡田社長が言うからこそ説得力のある言葉ではないだろうか。
ホームセンター市場のプロショップなど、さらに商品提供の場を広げようと前進を続ける浅香工業株式会社の、今後の活躍に期待したい。
岡田実/1960年生まれ、大阪府出身。1983年近畿大学理工学部数学物理学科卒業後、浅香工業株式会社に入社。営業部門での豊富な業務経験の後、取締役総務部長、常務取締役管理本部長、専務取締役管理本部長兼内部監査室長などを経て、2019年6月代表取締役社長に就任。