※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

熊本に拠点を置く株式会社マイスティアは、1986年の創業以来、時代のニーズに合わせて事業を進化させてきた。近年では、製造業における人材活用からロボット導入までの幅広いソリューションを提供する企業として注目を集めている。

代表取締役社長の工藤正也氏は人材の潜在能力を最大限に引き出し、製造業の課題解決に取り組んでいる。さらに、一次産業の課題にも積極的に取り組み、車エビ養殖や赤潮対策といった地域に根ざした新たなソリューションの開発にも力を注ぐ。製造業の未来を見据えた同社の戦略と、工藤社長の経営哲学に迫る。

人材派遣からものづくり企業へ、変化する時代に対応

ーー人材派遣業で創業し、製造業支援へと転換された経緯を教えてください。

工藤正也:
私は29歳で創業し、当初は人材派遣業を手がけていました。しかし、時代の変化やお客様へのニーズに応える中で、季節工の派遣を始め、事業内容を徐々に製造業向けのサービスへとシフトさせました。

私自身、学生時代から手を動かすのが楽しく、工作が好きで、ものづくりに興味があったことも大きな要因です。結果的に、個人的な興味と市場の要請が重なり、自然とものづくりの分野に進出する形となったのです。

ロボットと人材の融合で製造業を支援

ーー貴社の事業内容と強みについてお聞かせください。

工藤正也:
現在、弊社の事業は大きく4つの柱で成り立っています。人材派遣・製造請負・ロボットソリューション・水産業支援です。特に力を入れているのが、製造業向けのロボットソリューションです。

弊社の強みは、人材派遣で培った現場の知見を活かし、製造業からソリューションを提供していることです。つまり、製造業の現場を熟知したうえで、人とロボットのベストな組み合わせを提案し、高付加価値のソリューションを提供しています。

たとえば、食品工場で10人が手作業で行っていた作業を1台のロボットで代替できます。これにより、人員をより付加価値の高い業務に配置転換でき、生産性が向上するだけでなく、従業員のスキルアップや労働環境の改善にもつながります。このように、製造業の現場に根ざしたソリューションを提供することで、お客様の課題解決に貢献しています。

地域課題の解決に挑戦、水産業支援への取り組み

ーーなぜ製造業の会社が、水産業支援事業に取り組んだのですか。

工藤正也:
熊本県は水産業が盛んな地域です。あるとき、地元の水産業者からお悩みごとの相談を受けたことがきっかけとなり、私たちも水産業の課題解決に取り組むようになりました。現在は、車エビの養殖システムや赤潮対策のためのスマート養殖システムの開発を進めています。

製造業と水産業は、一見すると異なる分野のように見えますが、実は根本に共通点があります。製造業で培ったロボット技術やIoTのノウハウを応用することで、水産業の課題解決に貢献できると考えています。また、地域の基幹産業を支援することで地域経済の活性化にもつながり、これも弊社の重要な使命と認識しています。

企業の根本姿勢と未来への展望

ーー貴社の経営理念と、海外展開も含めた今後の展望についてお聞かせください。

工藤正也:
弊社の根本にあるのは「人」です。人を大切にし、その潜在能力を最大限に引き出すことが私たちの使命だと考えています。これを「活人化」と呼んでおり、単なる効率化に留まらず、従業員一人ひとりが成長し、やりがいを感じられる環境づくりを目指しています。

「活人化」の実現には時間がかかります。企業としてさまざまなことを学び続け、辛抱強く取り組む必要があります。今後はグローバル展開と人材確保に力を入れると同時に、「働きやすい」会社、工場づくりも重要だと考えています。従業員が快適に働ける環境を整えることで、真の生産性向上と企業成長が実現できると信じています。

海外への展開に関して、特に注目しているのは東南アジアとインドです。これらの地域は製造業が急速に発展しており、弊社のソリューションが大いに貢献できると見込んでいます。ただし、海外展開には、文化の違いや法規制の問題など、克服すべきさまざまな課題が存在します。しかし、これらを一つひとつ乗り越えることで、弊社自身も大きな成長を遂げられると考えています。

ーー最後に貴社が求める人材像について教えてください。

工藤正也:
弊社が求めるのは、自ら考え、行動し、成長し続けられる人材です。単に指示を待つのではなく、主体的に課題を見つけ、解決策を提案できる人材が必要です。また、ものづくりへの情熱も大切です。技術の進歩は速いため、常に新しいことを学び続ける姿勢が不可欠です。

そして、何より大切なのは、弊社の理念に共感し、ともに成長しようとする意欲です。「活人化」の実現には時間がかかりますが、その過程を楽しみ、ともに歩んでいける仲間を求めています。

編集後記

マイスティア社の人材とロボットの効果的な活用は、単なる効率化を超え、働く人々の可能性を広げる取り組みだ。また、製造業で培った技術を水産業に応用するなど、分野を超えた挑戦が印象的だった。工藤社長の「ものづくりへの情熱」と「地域貢献への使命感」が、同社の革新的な取り組みを支える原動力となっているのだろう。「活人化」の実現には時間がかかるという言葉が印象的だったが、その過程こそが企業の真の成長につながるのではないだろうか。今後のさらなる発展と、グローバル展開の行方に注目したい。

工藤正也/1956年熊本県生まれ、1986年2月創業、1990年熊本市に「有限会社ヒューマン」を設立、その後「株式会社ヒューマン」を経て2019年社名を「マイスティア」へ変更。