※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

サステナブルとは、日本語で「持続可能な」という意味を持ち、環境・社会に配慮した活動で経済成長を目指す取り組みは世界中で推進されている。

そのような中、環境に配慮した建材事業に注力しているのが高島株式会社だ。繊維専門商社から始まった同社は、創業100年以上の歴史を持つ企業である。

伝統と歴史を持ちながらも、サステナビリティの先進商社として社会に貢献する同社の代表取締役社長である高島幸一氏に思いを聞いた。

前職24年の経験を大きな財産に

ーー学生時代はどのように過ごされていたのでしょう?

高島幸一:
慶應義塾高等学校から慶應義塾大学へと進学し、高校から大学2年生まではテニスに没頭していました。しかし、グローバルに活躍できるビジネスマンになりたいと思い、大学3年生から勉学に励んだのです。必死に勉強し、ニューヨーク大学の大学院に進学して修士課程を修了しMBAを授与されました。

ーー大学院卒業後はP&Gへ入社されましたが、外資系でグローバルに活躍されたい思いが強かったからでしょうか?

高島幸一:
そうですね。しかし、最終的にP&Gへの入社を決めたのは、人を大事にする企業だと感じたからです。学歴だけではなく、個人を見ている会社だと思います。

本社があるアメリカのシンシナティへ行った際、体調が悪く外出が難しい状態だったのですが、オフィスの秘書の方が、労いの⾔葉とお土産を手渡してくださったのが忘れられない思い出です。

ーーP&Gへは24年間勤められましたが、どのような業務をされていたのでしょうか。

高島幸一:
あらゆる業務をおこなってきたのですが、ブランドマネジメントの経験が、最も大きな財産となっています。ブランドマネジメントとは、商品の企画・開発から広告宣伝までの全てを任される業務です。トップマネジメント視点で物事を考えていくので、企業の社長と同じようなポジションなのです。

他企業だと40代くらいで任させる業務を、P&Gでは20〜30代で経験できました。ですから、P&Gでブランドマネジメントの経験をされた方は、転職後も活躍する方が多いんですよ。

副社長から社長へと就任

ーー貴社はもうすぐ110周年を迎えられますが、高島社長は2002年に入社し、2年後に代表取締役社長として就任されたのですね。

高島幸一:
創業は祖父です。私は創業家一族でしたが、P&Gへ長年勤めていたので、必ずしも入社する予定ではありませんでした。しかし、当時、事業が2期連続赤字になる危機でしたので、やはり創業家の人間が入り、会社を変えていかなければならないと思い、副社長として入社したのです。

ーー入社当時の時点で創業90年の歴史ある企業でしたが、当時は何かご苦労されたことはありますか?

高島幸一:
私が入社した当時、従業員200⼈強に対して10事業部で構成されていたことに驚きました。組織が多角化されていると、管理することが難しくなります。そこで事業部数を減らしていき、組織を簡素化しました。

弊社は繊維専門商社から始まった会社ですが、建材分野へと事業を拡大していきました。「進化適合」という言葉をつくり、時代と共に弊社は変化を遂げています。弊社は断熱材の事業を1950年代頃から、太陽光パネル関連資材の事業を1990年代頃から開始していました。

私もその頃にはサステナビリティの概念を学んでいたので、省エネルギーへとつながる事業は重要であると確信していました。これら事業の好調が続いた結果、2015年には創業100周年を迎えることができました。

社会への貢献と成長へ

ーー貴社は時代と共に事業展開をおこなわれてきましたが、今後の展望をお聞かせください。

高島幸一:
2022年末に新エネルギー流通システム株式会社と、株式会社信防エディックスを子会社として当社グループに迎えました。新エネルギー流通システムは全国にネットワークを持つ太陽光エネルギーの施工会社であり、信防エディックスは環境衛生資材や防災関連商品などの卸売をおこなっている会社です。この2社とのM&Aは、弊社の成長に大きく貢献してくれています。

さらに2023年6月には、地盤改良の施工会社である岩水開発株式会社のM&Aを実行しました。スタートしたばかりですが好感触を感じています。

また、2030年・2050年を見据えてサステナビリティな企業を目指して変わっていきたいと思っています。現在とくに、弊社の事業で伸びているのは「省力化工法」です。人手不足をカバーするために、現場での工程を省力化できる商材を提供しています。

キャリア型人財育成プログラムを取り入れる

ーー貴社の人材育成への投資はどのように考えていますか?

高島幸一:
弊社では、キャリア型人財育成プログラムを取り入れています。自分が、自分自身の社長となり、自分のキャリアを経営していくことが大切です。会社はその実現をサポートする存在でありたいと思っています。

また、後継者プログラムも取り入れています。社長に求められる要件として、企業使命の具現化力・進化適合力・誠実一筋・企業全体のベクトル結合力の4つを評価しています。さらに専門力を持つことも重要です。社員から経営者候補まで、一貫してキャリア型人財育成法を取り入れて、経営力×専門力を自主的に磨いていけるように取り組んでいます。

ーー今後はどのような人材を求めていらっしゃいますか?

高島幸一:
事業を拡大するためにも、営業職を多く確保したいと思っています。とくに若い人材を求めています。弊社と共に、自主的にキャリアを築いていける熱意のある方を募っています。

また、女性の管理職が圧倒的に少ない点が課題です。女性の総合職の増員に注力していかなければならないと感じています。性別に関係なく、働きやすい環境づくりを目指しています。

編集後記

当初は入社する予定がなかったが、創業者の「会社は社会の公器である」という思いを絶やさず、会社を立て直すためにも、24年在籍した前職から転身した高島社長。伝統と歴史ある企業で、前職で培われた能力を最大限に活かしてサステナビリティを意識した事業を展開している。今後どのような先進的な商社へと発展していくのか、高島株式会社に期待したい。

高島幸一(たかしま・こういち)/1952年生まれ。1975年慶應義塾大学経済学部卒業。1977年ニューヨーク大学の経営大学院修士課程(MBA)修了。1978年プロクター・アンド・ギャンブル日本法人入社。マーケティング部門および営業(CBD)部門のマネジメントに従事。2000年同社エクスターナル・リレーションズディレクター。2002年高島株式会社に入社し、2004年に同社代表取締役社長に就任。