※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

実演販売の世界で培ったコミュニケーションの力と商品開発の洞察力を武器に、業界で一線を画す存在となった株式会社コパ・コーポレーション。しかし、コロナショックによる「三密」の回避やソーシャルディスタンス保持といった措置が、直接販売を封じる逆風になった。同社はライブコマースという新たな分野で再びリベンジを果たし、さらに2026年現在、AI(人工知能)を活用した次世代プラットフォーム構築へと未来に向かって進む決意を固めた。代表取締役社長の吉村泰助氏に、これまでの歩みと今後の展望について話を聞いた。

実演販売士としてデビュー

ーー実演販売をはじめたきっかけは何だったのでしょうか。

吉村泰助:
昔、秋葉原駅の電気街口改札の近くに「実演販売の甲子園」として知られていたアキハバラデパートというところがありました。店頭に5つほどのブースが出展し、お店の中身が1週間から2週間ごとに入れ替わります。そこでレギュラー出展を行っているメーカーに、國學院大学の演劇研究会の先輩がいました。

その先輩は、業界用語で「テコ」といいますが、実演販売士の横で会計や在庫補充、店番などをするアルバイトをしていました。演劇のサークル内で続いている伝統的なアルバイトで、サークルに所属していた私も呼ばれました。

先輩がお昼に食事に行くと、その間はブースは留守になるので、私も少し喋らせてもらいまして、その時に「まるで路上演劇のようだな」と興味を持つようになりました。当時、私は演劇の役者を目指しており、実演販売自体がまさに「劇場の無い演劇」だと感じたのです。「食えないから夢を諦める」という役者仲間が多い中、自分の芸の肥やしにもなると考えてプロとしてデビューしましたが、気づけばこちらの方がはるかに収益性が高く、次第にのめり込んでいきました。

ーー実演販売の現場は、どのような環境でしたか。

吉村泰助:
実演販売は、要は辻説法です。デパートの店頭といっても、実際には屋根はありません。屋根がないということは、道端なんです。雨が降ったらシートをかぶせるだけです。夏には体感温度が50度に達することもあり、冬にはビル風が吹きます。それでも、私は先輩に実演販売のプロとしてやらせてもらうことを相談し、大学4年生の頃に浅草の松屋さんでデビューしました。

面白いのは、実演販売の休憩中、店番の人がいない状況で商品をそのままにして食事に行っても全く問題ないことです。通常、これは「万引きされるかもしれない」という心配が浮かぶと思いますが、実際には誰も盗みません。

その商品の魅力を誰かが語らない限り、商品の価値は伝わらないからです。ひとたび食事から戻って再びしゃべりだすと、たちまち人が押し寄せみな競って買っていきます。やはり実演販売で商品が売れると、嬉しくてやめられなくなりますね。

30歳での法人化と第3期の危機が教えた信用の重み

ーー会社を設立された経緯をお聞かせください。

吉村泰助:
実演販売業界は基本的に歩合制度で、自分の収入は自分で稼がなければならない。つまり、一匹狼のような存在です。取り扱い商品のメーカー専属として「1つ売れたらいくら」といった歩合制から始まりました。

その後、26歳で独立。1998年に30歳で、当時は有限会社だったコパ・コーポレーションを設立しました。当時、実演販売業界で法人化して、銀行取引を行っている人は周りにはいなかったと思いますし、私が知る限りそういった事例も聞いたことがなかったため、与信を取って商品を直接仕入れられる体制は大きな強みになると確信したのです。

ーー設立後の経営状況はいかがでしたか。

吉村泰助:
事業を推進する中で、第3期には赤字転落という深刻な危機を経験しました。売上高は増加していたものの、資本金が底を突き、社員への給与支払いさえ危ぶまれるほど追い詰められたのです。そのとき初めて、自分のためではなく「社員のために頑張ろう」と心の底から決意しました。不思議なことに、他者のために努力しようと決めたことで、自分の中から大きなエネルギーが湧いてきたのです。この苦境を経て、実演販売において最も大切なのは信用であると再認識しました。現在は、お客様へ驚きと感動を届けることを重視する6つの経営理念を掲げつつ、笑顔と感謝を稼ぐ組織づくりに邁進しています。

飛躍のターニングポイントと販売チャネルの確立

ーー設立から現在に至るまでの過程で、会社が大きく飛躍した転機を教えてください。

吉村泰助:
設立から10年目くらいに、中野区の一軒家から恵比寿へと本社を移転した時が大きな転機です。中野のトタン屋根のオフィスは外より寒いほど過酷な環境でしたが、恵比寿に移った頃には会社の骨組みが完成していました。

この時期に「テレビ通販」「店頭・ベンダー販売」「ネット通販」の3つの販売チャネルを整備したことが非常に大きかったと思います。テレビ通販で商品を見て「実物を確認したい」と考えるお客様に向け、店頭販売を連動させる独自の仕組みをつくりました。この3チャネルを並行展開したことで業績は拡大。また、ノウハウを体系化した「実演販売士育成講座」を開講し、教育制度を整えたことも飛躍の要因です。かつては弟子入りするしかなかった世界を、組織的に人材が育つ土壌へとつくり変えました。

Z世代にとって実演販売士は神秘的な存在

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか。

吉村泰助:
弊社が実演販売業界で「唯一の上場会社」であり、長きにわたり実演販売士を育ててきたノウハウが社内に蓄積されていることが圧倒的な強みです。ターゲットは、ブースの前を歩いているだけの通行人です。その通行人をお客様に変える能力を実演販売士は持っています。商品を気に入って購入してもらうことを、わずか10分から15分の中で実現するコンテンツ力があります。これは他の企業にはないものだと思います。

通行人を立ち止まらせて買ってもらうための「売れる文法」を、論理立てて緻密に分析できている点が他社との決定的な違いです。昔から語り継がれてきたトークの構造を分析し、現代のエコロジーやAIといった最新のキーワードと組み合わせることで、常に新しいエンターテインメントを提供し続けています。Z世代などから見ると、実演販売は神秘的に映るようです。ネットで手軽に購入できる時代において、路上で喋ってモノを売る人が目新しく思えるのでしょう。

実演販売士は1日20万円売り上げて一人前 「実演アンカーマン」とは?

ーー商品開発も手がけていますが、マーケティングはどのように行っているのですか。

吉村泰助:
私は「他者の他者性」という概念を掲げていますが、実演販売を行っていると、それを最も感じることができるようになります。これほど貴重なマーケティング情報を入手できる場所は他にはありませんので、それに基づいて商品開発を行っています。実演販売を知っているからこそ、売れる商品のアイデアが浮かぶのです。

弊社では実演販売士の認定制度があります。育成講座に応募して弊社の販売ノウハウを学び、その上で1日に20万円以上の売上高を達成しなければ実演販売士と認定されません。さらに、商標を取得している「実演アンカーマン」という概念もあります。

これは商品開発とプランニングのスキルを持つ実演販売士を指します。歌手にたとえれば、歌が上手いだけでなく、独自の曲を制作できるシンガーソングライターのような存在です。

実演販売士は商品が最初に存在するのではなく、「売れる言葉」が存在します。その売れる言葉に基づいて商品を製作するという発想です。言葉が先行し、次に商品が存在するのです。このコンセプトは、商品が物語であることを意味しています。

物理的距離は心理的距離に比例する

ーー対面での実演販売が制限されたコロナ禍においては、どのような対策を講じましたか。

吉村泰助:
三密やソーシャルディスタンスの確保は、対面で熱量を伝える私たちにとって非常に厳しい制限でした。物理的距離は心理的距離に比例するため、言葉を届けるのが難しくなったのです。この課題を解決するために取り組んだのが、実演販売のDX、すなわちライブコマースでした。実は10年以上前にもインターネット実演を試みましたが、当時は時期尚早でした。動画視聴が一般的になった現在、満を持して再挑戦し、インターネットの「双方向性」を活かした新たな販売手法を確立してきました。

AIアバターが実演販売する「わくたんマーケット」の衝撃

ーーデジタル領域でさらに注力されている新たな取り組みはありますか。

吉村泰助:
2023年ごろからライブコマースに注力してきましたが、さらに方針を深化させ、現在はクラウドファンディングと通販を統合した「わくたんマーケット」というプラットフォームの展開に最も力を入れています。

最大の目玉は、AIを全面的に導入したことです。私自身がプロンプトエンジニアとなり、実演販売の「売れる文法」を学習させた「実演トークスクリプト自動生成システム」を独自開発しました。商品のURLや画像をAIに読み込ませるだけで、瞬時に売れるトークが生成されます。メーカー様自身が売れる言葉を持てるような仕組みを構築しました。

ーー「わくたんマーケット」の具体的な仕組みやAIの活用について教えてください。

吉村泰助:
「わくたんマーケット」では、AIアバターを導入し、動画に合わせて実演販売を行う仕組みです。このアバターは、お客様からの「これ、いくらですか?」といった質問に即座に音声で答えられるインタラクティブな機能を備えています。

商品やターゲット層に合わせてペルソナを設定できる「バイフルエンサー(インフルエンサー×販売員)」のアバターを18体ほど用意しました。お客様が好きなキャラクターから提案されれば、購買意欲は飛躍的に高まります。このAI型のランディングページを、新たなプラットフォームとして強力に推進しています。

AIを活用することで、人間の実演販売士はより付加価値の高い、創造的な仕事に時間を割けるようになります。人間のインテリジェンスや生のカリスマ性は、AIでは代替できません。デジタルと人を分業させることで、実演販売の価値をさらに高めていく狙いです。集客面でもSNSやショート動画を活用し、時代に合わせたスピード感で魅力を伝える戦略を進めています。

売上高1兆円達成への道筋と「前後際断」の精神

ーー今後の目標をお聞かせください。

吉村泰助:
将来のビジョンとして、売上高1兆円を掲げています。その足がかりとなるのが、現在のAIプラットフォーム戦略です。業績の完全な回復に向け、私たちは今、新たな成長への強い渇望を持っています。また、人材育成の面では、対面コミュニケーションに苦手意識を持つ若い世代に向け、自信を持って話すスキルを教える「アカデミー」のような取り組みも構想しています。夢を追う若者が実演販売のスキルで生計を立てられる環境をつくり、そこで育った若い感性とAIを掛け合わせることが、1兆円への道筋だと考えているのです。

ーー実演販売において、モノが「売れる」とはどのようなことだとお考えですか。

吉村泰助:
「売れる」ということは、最終的にはコミュニケーションが成功していることを意味すると考えています。自分のメッセージが相手に効果的に伝わるのは楽しいことですよね。たとえば「愛してます」という言葉1つとっても、それを伝えるのは簡単ではありません。ただ言葉を発するだけでなく、聞いた人が愛情を感じなければいけないからです。そのためには、熱を伝えるのに適した言葉を磨く必要があります。これは「言霊」とも呼ばれ、言葉が先行する考え方です。「始めに言葉ありき」ですから、最初にコンテンツが存在するのです。コンテンツは物語であるといえます。

ーー最後に、経営や人生において大切にされている言葉があれば教えてください。

吉村泰助:
私は、過去や未来に心を奪われず、今この瞬間に全力を注ぐ「前後際断(ぜんごさいだん)」という禅の言葉を大切にしています。目の前のお客様に集中し、実演の一歩一歩を積み重ねていくことが、必ず大きな結果に繋がると信じています。

編集後記

吉村氏の話は、論理的でありながら実演販売への深い情熱にあふれている。特にAIを「競合」ではなく「共創」のパートナーとして捉え、伝統的な実演のノウハウをデジタル空間へ拡張させる姿は、既存のECの概念を覆す可能性を感じさせた。伝統的な技と最先端の技術が融合する同社の挑戦が、どのような未来を切り拓くのか。売上高1兆円という目標に向けた歩みに、今後も注目していきたい。

吉村泰助/1968年、新潟県生まれ。國學院大學文学部日本文学科卒業。在学中より日本シール株式会社の宣伝販売員として所属。1996年、吉村泰助事務所設立。1998年、有限会社コパ・コーポレーション設立、代表取締役に就任。2006年株式会社に組織変更。2020年東京証券取引所マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場する。