株式会社レイズは、「VOLK RACING」など有名ブランドを有する自動車用アルミホイールの販売会社だ。
自動車用品市場は10兆円を超える規模といわれている。中でも、株式会社レイズは創業以来、国内生産にこだわり、多くの顧客から高い評価を受けてきた。
今回は、代表取締役社長の斯波(しば)翔太郎氏に、代表取締役就任までの経緯や苦労したこと、今後の展望などについて、話をうかがった。
幼少期から抱いていた父への憧れ
ーー貴社の代表取締役に就任するまでの経緯を教えてください。
斯波翔太郎:
私は、経営者の父がいる家庭に生まれたので、家族や会社の従業員から2代目としてゆくゆくは会社を継ぐだろうと期待されていました。
そのような雰囲気の中、幼い頃から父の仕事を見て育ってきたので、父のような社長になりたいという気持ちは幼少期から抱いていました。
小学6年から4年間をイギリスとドイツの学校で過ごし、その後日本に戻り、高校と大学は日本の学校で過ごしました。そして大学卒業後、2008年に弊社へ入社し、2023年の9月21日に代表取締役に就任しました。
仕事の本当の目的を社員に伝えていきたい
ーー今までに苦労されたことを教えてください。
斯波翔太郎:
弊社のビジョンを全社員に浸透させるという社内改革に挑んだことです。ビジョンは共有できていたものの、それを事業戦略に落とし込むまでには至っていませんでした。事業戦略まで浸透させなければ、社員は仕事を行う意味や意義がわからなくなってしまうと思ったのです。
そこで、社長と社員との対話集会である「タウンホールミーティング」を実施することに決めました。ミーティングは1回につき4時間ほどかかることもあり、事業戦略に留まらず、業務についても熱い話をすることができました。各部署の社員全員と話すことができたので、とても良い取り組みであったと感じています。
ーー組織をつくる上で気を付けていらっしゃることはありますか。
斯波翔太郎:
目的と手段を履き違えた組織にならないように注力しています。
たとえば、KPI(重要業績評価指標)が目標として掲げられた時に、それを達成することが目的になってしまうと、その先にある「戦略を成功させること」や「組織や社内体制を良くしていくこと」という最終的なゴールが見えなくなってしまいます。
そうならないように、業務の目標の最終的な目的を社員に伝えること、そしてそれをしっかり理解しているかを人事評価に反映させるよう心がけています。
社内環境の改善により働きやすい会社へ
ーー社内改革として取り組んでいることはありますか。
斯波翔太郎:
働き方改革として、残業時間の削減に取り組んでいます。現在、我々の残業時間は月平均で20時間ですが、これを13時間まで削減することを目指しています。
7時間の残業削減が成功すれば、ちょうど1日の稼働時間に相当します。ですから私は、社員に「新年度の4月までに毎月の残業時間を7時間削減できれば、年間休日を10日増やす」と約束しました。
私が社員に対してこのように伝える理由は、彼らに自立した行動を求めているからです。私は自立性が人の幸福感を高める1つの要素であると考えています。そのため、社員の幸福度を高めることも目指しながら、上記のような取り組みを行っています。
また新しい取り組みとして、VR会議とデジタル名刺も取り入れました。VR会議は、オンライン会議よりも近い距離感で話ができるので、社員が発言しやすい環境をつくることができました。
デジタル名刺は、名刺交換をする際にお客様から興味を持っていただけるため、商談などで上手く活用しています。
ーー今後取り組む予定のある社内改革はありますか。
斯波翔太郎:
2024年の4月から、給与体制の改革に取り組む予定です。
2013年に弊社の取締役に就任してから現在に至るまでの10年間で、社内の待遇改善に積極的に取り組んできました。
その中で、給与体制の改善も行ってきたのですが、前任の代表取締役が築き上げてきた社内体制の中で、自分自身の考えを制度に落とし込むのはとても難しいことで、抜本的な改革までは踏み切れませんでした。
ベテランと中堅以上になれば、賃金が上がりやすい形になっているのですが、今後は全体的に賃金のベースを上げられるように、賃金モデル自体をゼロから見直していくつもりです。
国内だけでなく世界中の需要に対応できる強い企業に
ーー今後の展望について教えてください。
斯波翔太郎:
今後の展望については、2つあります。
1つ目は、海外展開の強化です。弊社の製品は、国内よりも海外の方が需要が大きいのです。しかし、その需要に対応できるだけの工場のキャパシティや流通の確保が十分にできていないため、生産が追いつかず飢餓状態にあります。
より多くのお客様に製品を購入していただけるように、海外市場に向けた生産体制の強化に取り組んでいます。国内だけでなく海外の需要にも対応できる体制を整え、永続的に皆様から求められる企業でありたいと思っています。
2つ目は、新技術の開発および投資です。弊社は新製品の開発を常に行っており、顧客一人ひとりの要望に応えることのできる製品を生産できる体制を目指しています。
お客様が購買意欲をそそられる点は、「先進的な製造技術が使われている」「部品の機能性が高い」など、人によって異なります。それぞれの価値観に合った製品の付加価値を提供できる製造技術を持つことで、お客様の満足度を高められると考えています。
編集後記
社内改革を積極的に推し進め、社員の満足度向上という面でも多くの功績を築いてきた斯波社長。
2023年9月に代表取締役に就任した後も、残業時間の削減など社内の働き方改革にも精力的に取り組んでいる。
国内だけでなく海外展開にも注力し、世界の需要に応えようと挑戦を続ける株式会社レイズから、今後も目が離せない。
斯波翔太郎(しば・しょうたろう)/1982年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2008年株式会社レイズ入社。2013年取締役就任。2014年同社取締役兼マルカサービス株式会社取締役。2020年代表取締役副社長を経て2023年代表取締役社長に就任。