日本国内在住の外国人に向けた求人情報の発信をはじめ、暮らしに関するさまざまなサービスを提供する株式会社YOLO JAPAN。
社名と同名の会員制メディアには現在、世界226の国や地域から来た在留外国人が登録しており、その数は26万人を超える。外国人ユーザーのニーズを見事に掴み、登録者数の爆発的な増加を実現している。
代表の加地氏は、24歳で英会話スクールの経営者に。その後、生死をさまよった交通事故からの生還をきっかけに、書籍出版や在留外国人向けライフサポートメディアYOLO JAPANのサービスを開始した。事業の背景にはどんな思いがあるのか、波乱万丈ともいえる豊かな人生経験について加地社長に話をうかがった。
「世界に何かを残したい」という思いから出版、新事業スタートへ
ーー24歳のときに英会話スクールのオーナー経営者になられて、その後、出版、YOLO JAPANのスタートと華々しい活躍をされていますが、苦労もされたとうかがっています。どのような経験をされたのでしょうか。
加地太祐:
まず2004年、通っていた英会話スクールが倒産してしまい、そのスクールから助けを求められました。そこで400万円の借金をして経営者になったんです。苦労しつつもオンライン英会話の試みが功を奏して、最初は生徒18人だったのが、最終的には3000人程まで増加しました。
それで少し余裕が出てきた頃、2015年に交通事故に遭いました。5日間意識不明になり、目が覚めたときに「もし死んでいたらただのおじさんで終わっていたのか」と、命に限りがあることを実感しました。生まれ変わって世の中のために何かしたい、世界に何かを残したい、と思うようになりました。
まずは作家になって言葉を残そうと考え、出版社に話を持ちかけるも良い返事はもらえませんでした。そこで、ブログを書いてフェイスブックなどに投稿すると、フェイスブックのフォロワーが13万人を超え、これが実績となり、2016年に本を出すことができました。
そして同じ年にYOLO JAPANを設立して、外国人の生活環境の改善、日本社会の労働力不足解消に取り組み始めました。
外国人労働者の課題は、日本の未来の課題
ーー貴社では会員制メディア「YOLO JAPAN」内で求人情報サイト「YOLO WORK」や格安SIMカード「YOLO MOBILE」、賃貸物件情報サイト「YOLO HOME」、オンラインピル診療「YOLO PILL」、大阪のイベントスペース「YOLO BASE」でのリアルイベントの開催など、日本に暮らす外国人のために幅広いサービスを運用、提供していらっしゃいますが、こうした活動の背景にある考えをお聞かせください。
加地太祐:
オーバーステイや不法就労など、外国人が世の中で指摘されるような問題行動を起こしてしまうのは、社会の中で選択肢や可能性が失われたときなのだと思います。未来があるときはみんな真面目なのです。
仕事、不動産や携帯電話の契約など、外国人には壁が高いことがたくさんありますから、僕は彼らに選択肢をできるだけ多く提供したいと思いました。
仕事に関しては、日本語が上手な層であれば仕事が見つかりやすい一方、日本に来たばかりで日本語がわからない層は大変です。そこで、僕が見つけた仕事は日本語が不要な仕事、たとえばベッドメイクなどのサービスでした。
結局、企業が求めているのは日本語能力ですが、その能力は滞在期間に左右されると思います。2、3年経てばけっこう話せるようになって、仕事に対応できる層に成長します。このように仕事に合う外国人でなく、日本に来た外国人の各フェーズに合う仕事といった視点でマッチングを進めたことが他社との大きな違いであり、正しいアプローチだったと思います。
外国人のために多くの選択肢をつくる、それは結局、日本人のためになると考えています。外国人が好きで事業を行っている側面もありますが、一番は日本人が好きで、日本のことを考えているからこそ、この事業ができます。僕たちの子どもや孫たちが外国人と働ける未来を作りたいというのが目的なんです。
自分自身の良心こそが人生や仕事の判断基準に
ーー特に若い人たちが将来のために大事にすべきことは何だと思われますか。次の世代に向けて、さまざまな経験をされてきた加地社長だからこそできるアドバイスがあれば、ぜひお願いいたします。
加地太祐:
それはやはり、正しい行動を選ぶことです。善悪の判断を司るものを僕たちは持ってますよね。「あの人は助けてあげた方がいいな」とか、「おばあちゃんが疲れてそうだから席を譲ってあげようか」というような気持ちが自然にあるはずです。
その気持ちを1度無視すると、2度目は反応が鈍くなり、3度目にはすでに何も感じなくなってしまうでしょう。実は、その最初の気持ちが成功の秘訣で、人生を良くするものだと思っています。悪い行動を選ぶことも同様です。日頃から自分の中に善悪のアラートやセンサーをきちんと育てていれば、人生の大事な場面やビジネスでも判断を間違えないものです。
編集後記
インタビューの終わりに「自分のセンサーを信じて行動を起こせば、絶対うまくいく」という力強いメッセージを贈ってくれた加地氏。
24歳の若さで人に助けを求められたときに真摯に向き合い、借金をつくってまで経営を援助した経験が原点にあってこそ、現在の成功、そして厚い人望が得られたのだろう。
企業と外国人を結び、外国人と日本人が共存する未来の社会に貢献するプラットフォームとして注目を集めるYOLO JAPAN。当面の目標は、外国人向けの求人事業でNO.1になることだ。加地社長の躍進に今後も大いに期待したい。
加地太祐(かじ・たいすけ)/起業家、作家、株式会社 YOLO JAPAN創業者。1976年大阪府生まれ。阪南大学高等学校中退後、溶接工に。その後サラリーマンとなり英会話学校へ通う。2004年通っていた英会話学校が倒産し、その学校を引き継ぎ、株式会社aim(現YOLO JAPAN)設立。2012年フィリピンオンライン英会話スタート。2015年交通事故で5日間意識不明の重体に。2016年YOLO JAPAN設立。著書に『成功する人の考え方』(ダイヤモンド社)。