「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」をビジョンに掲げ、社会課題をテクノロジーとクリエイティブで解決すべく事業を展開する株式会社SAKURUG(サクラグ)。
システム開発やWEB制作を支援するQDXコンサルティング事業と、DEI(※)を推進する採用マッチングプラットフォームの運営をおこなうSangoport事業に取り組み、東京・和歌山・仙台・福岡の4エリアに拠点を構える。
20代で起業して経営者となった遠藤洋之氏に、創業の経緯や事業の強み、組織づくりに関する考え方、今後の展望などについてうかがった。
(※DEI:Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)の略)
学生時代に起業家に憧れ、20代のうちに計画を実現
ーー創業の経緯について教えてください。
遠藤洋之:
学生時代、様々なベンチャー企業の経営者が登場するのを目の当たりにして以来、ずっと経営者への憧れを抱いていました。
僕は2009年からブログに記事を書いていますが、20代中盤の時に、「20代のうちに起業して30代で会社を上場させ、そこで得た資金を元手に貧困国をめぐりボランティアをする」とも書きました。
実際には、29歳で創業して現在は12年目となり、東京、和歌山、仙台、福岡の4拠点を構えています。30代での上場は果たせませんでしたが、今も20代で掲げた計画やビジョンの実現に繋がる事業を展開しています。
ーーどのような事業からスタートして、現在の事業内容になったのでしょうか。
遠藤洋之:
当初はWEBの広告代理事業からスタートしました。そのほかにも上場会社が扱うメディアの買収や、ECサイトの運営など、いろいろと事業を手がけましたが思ったようにいきませんでした。
その後、「伸びる市場であること」「自分たちの会社のビジョンに合致すること」を軸に事業転換を図り、現在のQDXコンサルティング事業(エンジニア不足を解決するためのDX支援事業)とSangoport事業(DEIを推進する採用支援事業)に至りました。
僕自身は古風な考え方が好きで、「仕事はあくまで基本に忠実に、こつこつと取り組むこと」を大事にしています。
経営者の仕事は「土づくり」。事業が開花するための器を用意することが役割
ーー採用マッチングプラットフォーム「Sangoport」の強みや特徴を教えてください。
遠藤洋之:
「Sangoport」の特徴は、名前の「サンゴ」と「産後」をかけて、子育てをしながら復職するママさんや、35年以上の経験を有するいわゆるシニア層の方、ジェンダーフリーな職場で働きたい方など、幅広い人材の採用マッチングを支援している点が特徴です。
採用マッチングプラットフォームの市場ではホリゾンタル(水平)な(業界横断型の)サービスは実はあまり存在しません。他社でも人材のタイプごとの採用支援サービスはあるものの、どれも特定の領域に焦点を当てたサービスです。
一方、「Sangoport」は、企業と求職者の方の出会いや交流をホリゾンタルに広げていくことをビジョンにつくっています。日本の労働人口は今後も減少すると予想されているので、引き続き需要が見込まれます。
なお、「Sangoport」は僕のアイデアではなく、当時の2年目のメンバーの案を採用して始まったサービスです。
ーー事業展開にあたり苦労したことは何でしょうか?
遠藤洋之:
各事業に僕が関与することはサステナブルではないと考えています。組織づくりがしっかりしていれば、上手くいくと考えており、事業はディビジョン長である幹部に一任しています。
経営者の仕事は何よりも組織づくりです。これは懇意にしている経営者の方から教わったことですが、これは例えるなら「土づくり」で、そこに良い種(人材)がやってきて、水や光を与えることで事業は開花します。「その土を入れる器が経営者という器なのだ」と仰っていました。
社名のSAKURUGの桜のように大きな花を咲かせるには、より大きな器が必要で、自分自身の経営者としての器を広げることも意識しています。
2030年までに10事業30拠点へ拡大、アフリカでのプログラミング教室の事業化が目標
ーー注力テーマとして新規取引先の開拓を挙げています。
遠藤洋之:
弊社では、全体に占める各顧客の売上比率が10%を超えないように調整しています。特定の顧客への依存度が高いと、先方の取引方針が変わった際に経営に与えるインパクトが大きく、リスクの分散が重要と考えているからです。
また、売上を増やすため、顧客の裾野を広げていきたいと考えています。特に地方創生は弊社のテーマの1つであり、様々な地域の方と協業したいと考えています。
ーー新規事業に関する展望についても教えてください。
遠藤洋之:
もともとSAKURUGの社名は、海外の人にも通じるように名付けました。僕たちは、2030年に10事業・国内外30拠点をつくるという中期経営計画を立てています。ただしそれもトップダウンで進めるのではなく、自主的な意見によって事業や拠点が増えていく、そのような会社や組織でありたいと思っています。
新規事業の中では、僕はアフリカ事業の担当で、直近の数年間では毎年アフリカ各国を視察しています。エチオピア、タンザニア、ナイジェリアの現地の学校を訪問しましたが、電気もなくスマホもない国は未だに多くあります。20代の頃にブログに書いた貧困国でのボランティア活動の一環としても、アフリカでのプログラミング教育の事業化は僕の中期的な目標の1つです。
自分の一生をかけても1%も解決しない問題に挑戦したい
ーー経営者としてのゴールは設定されているのでしょうか。
遠藤洋之:
他の経営者も同様だと思いますが、明確なゴールは設定していません。僕の最近のテーマは、西暦3000年の子供たちが「どうしたら笑顔でいられるか」「どうしたら生まれてきて良かったと思えるか」ということです。
僕は自分の生涯だけで解決可能な問題に取り組むことには興味がありません。「自分が一生をかけても1%も解決しないような、途方もない問題に挑みたい」と思っています。
ーー最後に、若い読者に向けたメッセージをお願いします。
遠藤洋之:
ありきたりな言い方になるかもしれませんが、たくさん失敗を重ねながらも今後の日本をより良くしてほしいと願っています。
編集後記
組織づくりこそ経営者の仕事と認識し、メンバーの自主性を重んじる経営方針と、西暦3000年の子供たちの幸福に思いを馳せる遠藤社長の想像力は、今後も同社をサステナブルに成長させる原動力となるだろう。
テクノロジーとクリエイティブの力によるDEIの推進、地方創生やグローバル展開など、国内外に事業という満開の桜を咲かせるため、遠藤社長の飽くなき挑戦は続く。
遠藤洋之(えんどう・ひろゆき)/1983年千葉県生まれ。2012年、29歳の時に株式会社SAKURUGを設立。若手起業家の世界的ネットワークであるEO(Entrepreneurs’Organization、起業家機構)Tokyo理事。千葉イノベーションベース初代理事、ジャパンハートエバンジェリスト等も務める。