※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

デジタル化が急速に進み、ITの力で社会課題を解決する企業が増えている。ソフトウェア開発会社として創業した、NCD株式会社もその1つだ。同社は高いIT技術を活かし、現在は駐輪場を管理運営するパーキングシステム事業も手がけている。

創業50年を超え、安定して成長している同社だが、代表取締役社長の下條治氏はまだまだ新たな事業に積極的に挑戦していきたいという。

NCDが目指す未来とは一体何なのか、下條氏に同社の強みと今後の展望を聞いた。

ソフトウェア開発とパーキングシステムの2軸で社会に貢献してきた

ーー貴社の事業内容について教えてください。

下條治:
弊社は、コンピューターが今ほど当たり前ではなかった1967年に、ソフトウェア開発の会社として創業しました。開発と運用の両方を手がけており、8割以上の業務がエンドユーザーとの直接取引です。創業当初から下請け業務はほとんど行っていません。

お客様と長期にわたる関係性を築けるのが弊社の強みですし、長く付き合うからこそ、それぞれのお客様のビジネスや環境の変化にも対応できるようになります。その結果、「またNCDに仕事を任せたい」と思ってもらえるような関係ができあがっています。

そして、もう1つ手がけているのが、駐輪場を管理するパーキングシステム事業です。この事業を始めた当時は、放置自転車が街にあふれ、社会問題となっていました。

そこで、駐輪場に駐輪機器や精算機を設置するだけでなく、駐輪場の管理運営も開始。さらに、自社内にサポートセンターを設け、何か問題が起きたとき、無人の駐輪場でも24時間365日対応できるようにしました。放置自転車をなくそうとする社会の動きが追い風にもなり、この事業は非常に需要がありましたね。

現在、弊社の事業は約3分の2がIT関連、3分の1が駐輪場関連という比率になっています。

北海道での子会社立ち上げと社長就任後の「変革」への思い

ーー入社から社長就任まで、どのような道のりでしたか。

下條治:
もともと専門商社で法人営業をしており、ITの経験は全くありませんでした。それから弊社に入社して、最初は北海道に子会社をつくる事業を始めました。

当時はITエンジニアが不足していたので、エンジニアを育てるための教育・研修を行う会社を設立する事業を任されたという経緯です。

オフショア開発(システムやソフトウェアの開発を海外に委託すること)の仕組みに似た事業を、海外ではなく北海道でスタートしました。北海道から東京に戻ったのは、入社後10年ほど経ってからです。

私は創業者の息子として入社しましたが、特に気負うことはありませんでした。社内には、今までの慣習や今まで培ってきたものを守りたいという意見がありましたが、私は「変えるべきところは変えよう」という気持ちで会社を経営しています。

会社と個人の「パーパス」をつなげることで社員の幸せを実現する

ーー事業を展開していくうえで、今後の注力テーマはありますか。

下條治:
1つは、今まで培ってきた業務ノウハウを活用して事業領域を広げることです。また、弊社はマネジメントサービスを東京と長崎で展開していて、ここではお客様のシステムの監視や障害対応等などを行っています。このサービスを採用してもらえることも増えているので、多くのお客様に導入してもらえるよう、より一層営業に力を入れていきたいですね。

また、弊社は安定して成長しており、直近では利益率も非常に向上しています。コロナ禍でパーキングシステム事業は一時的に落ち込みましたが、事業の構造改革を行ったことで、効果が出ています。

現在は第3の柱となる事業を模索しているところで、昨年度から社内公募で新事業のアイデア募集を始めました。新事業は社員に任せきりにするのではなく、会社としてしっかりとフォローしながら進めていこうと思っています。

ーー最後に、採用や育成についての下條社長の考えをお聞かせください。

下條治:
弊社グループの求める人物像は3つあり、チャレンジ精神のある人、共創ができる人、品格のある人です。私は、社員が成長しないと会社も成長しないと考えており、とくに新卒を採用して育てることを重視しています。

また、「会社のパーパス(社会的存在意義)」と、社員それぞれの人生の目標や働く意義などの「個人のパーパス」のつながりを考えることも重要だと思っています。

会社と個人のパーパスのつながりを探求することで、それぞれの社員のWell-being(肉体的・精神的・社会的に満たされた状態)を実現していきたいですね。

編集後記

「弊社では働きやすい環境を整備しており、また、成長意欲次第で積極的に挑戦できる会社だ」と語る下條社長。2024年から社名とグループロゴを変え、NCD株式会社は今、新たに生まれ変わろうとしているところだ。

ソフトウェア開発やパーキングシステム事業で得た同社の確かなノウハウは、さまざまな業種に応用できる大きな可能性を秘めている。同社がこれからどのように社会を変えていくのか。新たな挑戦を今後も追いかけたい。

下條治/1958年大阪市生まれ、日本大学卒。紙専門商社勤務を経て、1986年に日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社(現・NCD株式会社)へ入社。2012年に同社代表取締役社長に就任。