2007年7月の設立以来、時代の先を見据えて事業を展開してきた株式会社イマクリエ。
40カ国以上に及ぶテレワーカーネットワーク、顧客、そしてサービスを通して地方創生にも取り組む同社の過去・現在・未来について、代表取締役の鈴木信吾氏に話をうかがった。
設立の経緯と「テレワーク」の広がり
ーー鈴木社長のご経歴と事業の変遷をお話しいただけますか。
鈴木信吾:
大学卒業後は、メーカーやコンサルティング会社に勤めました。のちに友人4人で「面白いことをやろう」と集まり、2007年に弊社を立ち上げ、最終的に私が社長となりました。
2011年の「テレワークとの出会い」が大きな転機でしたね。その頃は渋谷にオフィスを構えて、全員出社型のコールセンターを運営していたのです。
3月に東日本大震災が起き、当日はもちろん、翌日以降も不安が続く中で仕事は止められない状況でした。「オフィスでできる仕事は家でもできるはず」という考えは昔から持っていたのでテレワークに移行し、2016年からは社員全員フルリモート勤務のビジネスモデルに移行しました。
ーーテレワークの認知度がとても低い時代だったと思います。
鈴木信吾:
テレワーカー募集の掲載を、求人サイトに拒否されたことがあります。どうも詐欺だと思われたようで、世間はまだ「テレワークとは?」という段階でしたね。
働く側も「在宅イコール内職」のイメージが強く、理解を得るのに苦労しました。それでも、全国の優秀な方々が仕事を探していることがわかり「私たちはもっとやれる」と奮闘した次第です。
2016年の熊本地震以降に事業継続計画(BCP)対策が広まり、働き方改革によってテレワークはさらに進歩しました。その後のコロナ禍の感染症対策もあり、今では地方創生の手段としても注目されています。こうした時代の流れに合わせて弊社の規模も拡大していきました。
事業の社会的意義、地方創生の未来
ーー事業の意義や企業のビジョンについて教えてください。
鈴木信吾:
世の中には「仕事の機会がない」「地域雇用が十分ではない」「海外移住で日本のキャリアを失う」といった問題があります。
弊社は地方創生事業においても、雇用創出における地域活性に注力しています。長年に渡りテレワーカーを採用、育成し一緒に業務を行ってきた知見を活かし、テレワークに挑戦できる意欲、また、スキル・ノウハウを実践に即活かして仕事に繋げることのできる環境、お仕事づくりを推進しています。
地域で輝く人を増やすには仕事が必要です。企業誘致に加えて、「地域の魅力を活かした産業」を共につくりあげることで、弊社は密接に社会とつながっています。
ーー地方創生への思いや可能性についても聞かせていただけますか。
鈴木信吾:
パリ市内の日本食を出すカフェにやってくるお客さま50人を対象にしたアンケートでは、「日本で行きたい場所」について東京と京都に次いで3位が田舎という結果が出て、これはチャンスだと思いました。町の魅力は観光面だけでなく、地域が培ってきた文化や技能、新たな試みも大事な要素です。私たちはそれらを見出し、地域と人をつないでいます。
多くのエンジニアが移住した場所はITで栄えるだろうし、そのために専門の技術者を外国から迎えるのもいいでしょう。現在、弊社では世界40か国以上にメンバーがいて、日本との時差を活用して、24時間体制で人材を稼働させることができます。テレワークにおいて国内と海外の差はあまりないのです。
ーーテレワークは地域住民を増やすきっかけになるのでしょうか?
鈴木信吾:
地方創生の主な目的は、東京への一極集中を避けることです。地域に仕事がないことがネックで、そこに住めない人が多くいます。この問題を解決するためには、地方移住者を増やす以外に「人が出ていかないようにする」「人が戻ってこられる環境にする」という手段があるのです。
大きな工場を誘致するのも良い事例ですが、それがすべてだとは思いません。テレワークを活用すれば好きな場所で仕事ができ、地方創生にもつながるでしょう。
企業の強みと今後の戦略
ーー貴社の強みを改めてお聞かせください。
鈴木信吾:
世界各地のテレワーカーが連携し24時間体制で行う圧倒的なスピード対応は、弊社の強みのひとつです。高い専門スキル保有者や経験豊富なメンバーが多いので、高品質のサービスにも定評があります。
また、自治体向けの雇用創出や企業誘致の支援、自治体のDX推進支援の領域においては、国内No.1の実績があります。経験から培ったノウハウと知見も、他社にはないアドバンテージです。
ーー今後のご展望についてもお話しいただけますか。
鈴木信吾:
世界中のネットワークを駆使し、リアルな海外事情に対するサービス、例えば自治体と海外や企業と海外を繋ぐ事業を強化し、戦うフィールドを今以上に広げていきたいですね。私たちの基本である「テレワーク」だけを謳うつもりはなく、それを使って次に何ができるのかが重要です。
新たなAI技術もさらに活用していきます。「AIに仕事を奪われる」のではなく、むしろ「その人にしかできない仕事」の付加価値が高まるでしょう。人類は新しいものを取り入れて進化してきたのですから、「ヒトvsテクノロジー」ではなく「ヒトwithテクノロジー」の方が良いと思っています。
将来の課題と機会について
ーー未来を担う若者にメッセージをお願いします。
鈴木信吾:
チャレンジと変化を楽しんでいきましょう。新しいことに集中して取り組めばすぐに専門家になれますよ。昔からあることをマスターするのに何十年もかけるよりは、新しいことを始めた方が、自分も世の中もハッピーになると私は思います。
弊社ではチーム・シェア・チャレンジの3つを行動指針に掲げています。社会をつくるためには個々の力が集まったチームが必要で、チーム内ではさまざまな得意・不得意をシェアしています。メンバーが自分から発信できる環境を整えて、これからも新しいことにチャレンジし続けたいと思っています。
編集後記
総務省によるテレワーク先駆者百選の総務大臣賞や、内閣府による地方創生テレワークアワードの地方創生担当大臣賞をはじめとする、イマクリエの数々の受賞歴。先駆者というだけでなく、持続的なリードと独自の地方創生事業が評価されたことがわかる貴重なインタビューとなった。今後の展開にも注視していきたい。
鈴木信吾(すずき・しんご)/大手メーカー、コンサルティング会社での勤務を経て、2007年に株式会社イマクリエを創業。東日本大震災を機にテレワークを導入し、社員全員がフルリモートで働く完全テレワーク型の事業モデルを確立した。企業向けにテレワークを活用したアウトソーシング事業、テレワーク導入のコンサルティング事業を展開する他、2020年よりテレワークを活用した雇用創出・企業誘致などの地方創生支援事業を開始。
2024年3月、東洋経済新報社から著書『日本一わかりやすい地方創生の教科書 全く新しい45の新手法&新常識』を発売。