2015年の創業以来、IT業界を中心にフリーランスのプロ人材マッチングサービスを展開している株式会社Hajimari(はじまり)。社名のとおり、フリーランスという働き方の「始まり」に深く携わってきた企業の代表取締役、木村直人氏に設立の経緯などをうかがった。
自分の道を、自分で切り開く覚悟を持つ――事業立ち上げのきっかけ
ーー貴社を設立された経緯をお聞かせください。
木村直人:
教育熱心な両親の元で育った私は、多くの人と同じように「良い大学へ行って良い会社に入ろう」と思うようになりました。しかし、志望した大学へ入り、大手の損害保険会社に入社したものの、仕事を楽しめない自分がいたのです。
1年後に退職し、ベンチャー企業に飛び込みました。事業立ち上げのタイミングで未整備の面がありながらも、全員が楽しげに働いている会社でした。1社目はワーク・ライフ・バランスや知名度、年収など多くの人が求める素晴らしい会社だったと思うのですが、ベンチャーでは仕事を楽しむ気持ちや会社への誇りを特に感じたのです。
ーー1社目と2社目の違いはどこにあったのでしょうか。
木村直人:
2社目のメンバーは「自分で決めた道を正解にしようとしている人たち」だったと感じています。まだ何もないベンチャー企業を、自分たちの力で理想の会社にしていこうと前向きに動いていく人が多くいました。
この経験から、色々な仕事や生き方があるなかで「自分の道を意思を持って決め、選んだ道を正解にする」という気持ちを持って人生を送る人こそ高い幸福感が得られるのではないか、そのような自立した人材を増やして人々の幸福度を高めていけるような事業をやっていきたい、と思うようになりました。現在弊社では「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」というビジョンを掲げています。
実は、自分がやりたい方向性が見えてきてすぐに起業したわけではなく、自分がやりたい方向性やビジョンを叶えられる会社に再び転職しています。そこでつくった事業が「ITプロパートナーズ」で、後に分社化という形で弊社を立ち上げるに至りました。
「フリーランス」という働き方が世間に浸透するまで
ーー貴社の事業内容についてお話しいただけますか。
木村直人:
フリーランスのプロフェッショナル人材と即戦力人材を獲得したい企業様をマッチングするサービスを展開中です。エンジニアやデザイナー、マーケ、人事、経理・財務、メンターなど様々な職種のプロ人材が登録しています。
採用活動で困っている企業様にとっては、正社員採用の代替としてプロフェッショナル人材の活用というメリットを提供しております。
ーー設立された2015年頃はフリーランスが今ほど浸透していなかったように思います。
木村直人:
自分のサービスをつくりたいエンジニアや大好きな地元でバランスを取りながら働きたい人材など、色々な価値観を持ち独自の自己実現を目指してく人が僕の周りに増えたタイミングでした。
スキルや能力があれば、自分の意思で生活を変えることや自己実現が可能となります。その形がいわゆるフリーランスであり、「自己実現に向けて挑戦する人を一人でも応援したい」という気持ちで事業をはじめました。
一方で、企業側には業務委託を活用する文化が当時はなく、弊社のサービスを利用していただく難易度はとても高い状況でした。まずプロ人材を活用するというイメージを持っていただくことに苦戦し、「週3日から」「業務委託のフリーランス」と聞いた途端、「セキュリティは大丈夫ですか?」「優秀なフリーランス人材っているんですか?」など厳しい反応をいただく事が多かったと記憶しています。
フリーランス市場の発展と課題
ーーどのように事業を広げていかれたのでしょうか。
木村直人:
成功事例を1件ずつ積み上げ、3000社以上の企業様にご利用いただけるようになったことで新しい市場を開拓できました。
当初は「ITプロパートナーズ」というIT分野から事業を始め、現在では、ITのみならず人事や財務、マーケティングにまで「プロパートナーズ」のサービスを拡大しています。IT以外にも人材を確保しづらいポジションは多いため、IT分野で弊社サービスの良さを実感した企業様が、他の職種にも興味を持っていただけることが多く、サービス展開に至りました。
弊社の行なったアンケートではまだ約30%の企業様しかフリーランスのプロ人材を活用した実績はなく、今後も一層市場は広がっていくと感じています。
ーー競合が増えたことについてのお考えもお聞かせください。
木村直人:
競合が増えることも見越して、資産を築いてきました。弊メディア『ITプロマガジン』は、「ITのフリーランスになろう」とリサーチした時に選ばれやすくなっています。
メディアを軸に様々なユーザー獲得を実施した結果、毎月1500名以上の新規ユーザーを獲得でき、サービスの累計登録者は約8万人にまで成長しました。
IT領域以外も強化し、「業務委託でプロ人材を活用したい」と企業様が希望した時に、全業界・職種において一番に弊社の名前が挙がることを目指しています。
地方と海外への挑戦――共に働きたい仲間の姿
ーー今後の展開をおうかがいしたいと思います。
木村直人:
国内の地方や、海外への展開に力を入れています。長野に拠点を持つ開発事業「TUKURUS(ツクラス)」は、地方でエンジニアを採用・教育し、東京と同等の給料や経験値を得られるようにする仕組みをつくっています。
海外事業では、アメリカ西海岸をベースに実績があり、徐々に案件の数が増えてきました。日本の優秀なITフリーランスは海外でも通用するのだと、自信を持ってブランドをつくっています。
ーー将来のために会社として求める人材像をお聞かせください。
木村直人:
「会社のためになることを主体的に考えて動ける人」が活躍しやすい会社です。
各メンバーが会社に貢献する形は様々であり、理想的な自立の状態は個人ごとに異なります。弊社では全てのメンバーが会社に貢献出来ている実感があり、自分の力でHajimariを前に進めていると思える組織を目指しています。
キャリアに迷った時には、「自分がどういった形で会社に貢献できるだろう?」と考える事で、それぞれの強みが発揮され、独自のキャリアが切り拓けると思っています。結果として全てのメンバーが「自分が選んだHajimariという道は正解で、今とても充実している」という状態を作っていきたいです。
編集後記
「自分の人生に主体性をもち、仕事を心から楽しむ人を増やしたい」という思いから始まったプロパートナーズサービスは、フリーランスという働き方の広まりとともに、多くの人々・企業に新たな選択肢を提供してきた。これからのグローバルな展開にも注目していきたい。
木村直人(きむら・なおと)/早稲田大学卒業後、大手損害保険会社を経て、株式会社アトラエにて成功報酬型求人サイト「Green」を立ち上げる。その後、人材系ベンチャー企業にて取締役COOに就任。プロフェッショナルIT人材の案件マッチングサービス「ITプロパートナーズ事業」をローンチし、事業移管する形で2015年4月より株式会社ITプロパートナーズ(現:株式会社Hajimari)を創業。代表取締役に就任。