※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

株式会社矢野経済研究所の調査によれば、「健康食品の市場規模は、メーカー出荷金額ベースで2022年度が8,860億6,000万円(前年度比0.4%増)と推計し、2023年度(見込)が8,995億1,000万円(同1.5%増)を見込む」とのこと。健康食品市場は、わずかながらも長く伸長を続けている。

健康志向に伴って安定成長が期待される市場で、漢方薬の卸売りとして創業した井藤漢方製薬株式会社は近年、健康・美容増進の手助けとなるサプリメントの扱いを拡大してきた。

さらに現在ではサプリの製造販売だけでなく、2022年には東大阪市と包括連携協定を締結し、さらに24年にはサッカーチーム「FC大阪」のトップパートナーとしてのスポンサー契約を更新するなど、地域への貢献活動にも力を入れている。

同社の3代目として総指揮を執る代表取締役社長の井藤竜生氏に、社長就任までのエピソードや会社の展望について、話を聞いた。

新規開拓時代に知名度の低さにショックを受けて奮起

ーー幼少期から会社を継ぐ意思はありましたか?

井藤竜生:
小さい頃から継ぐ意思はありました。私が子どもの頃はこれから会社が成長するという黎明期で、長屋のような自宅兼事務所、ガレージ付きの倉庫という感じの小さい社屋でした。

両親が資金繰りの話などをしている光景を日常的に見ながら育ち、帝王学ではありませんが、子どもなりに自然と学んだこともあったと思います。

ーー入社後のご経験やエピソードをお聞かせください。

井藤竜生:
1991年に入社して営業を担当しました。かつての顧客は漢方の薬局でしたが、私が入社した頃は薬局だけでは未来が見えなく、一般の薬局に営業をかけていた時代です。ちょうどその頃にショッキングな出来事がありました。

会社から5㎞程度しか離れていない薬局の店主に「この業界に30年いますが、そちらの社名を初めて聞いた」といわれたのです。

同じ業界の人にも知られていない現実は自分の中でとてもショックでしたが、同時に「北海道から沖縄まで商品が並ぶ会社にしたい」と奮い立たされ、いい刺激になりました。

ーー社長就任時の心境はいかがでしたか?

井藤竜生:
当時の業績は右肩下がりで厳しい状況にありました。しかし営業担当の頃から会社の知名度が低いことで不利な闘いを強いられていましたし、ゼロからのスタートは社長に就任したときに始まったことではありません。

それに私はネガティブな状況下で逆に燃えるタイプです。「とにかく自分がやるしかないだろう」と開き直り、気合十分でしたよ。

開発から店頭データの分析までを手がける総合力が持ち味

ーー東大阪市との連携を強化していますね。

井藤竜生:
父の時代から、東大阪市という地域の支えがあってここまで商売を続けてこられたので、恩返しをしたい気持ちが強くあります。

具体的には行政のイベントに商品を提供したり、今後は社会課題であるフードロスの解決に向けても共同で取り組んでいく計画です。

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか?

井藤竜生:
サプリメントの取り扱いとして通常は製造だけ、もしくは販売だけの企業が多い中、弊社のように製造から小売りまでを管理しているところは少ないですね。

原料の仕入れ段階から開発、製造、パッケージ品としての流通までを手がけ、さらに店頭データを研究に生かしていく。これらを一貫して行えるのが強みといえます。

ーー製造面の効率化を目標に掲げていますね。

井藤竜生:
以前は多品種小ロットの生産は不可能でしたが、機械の性能向上により、汎用性が高まりました。

優れた検品機能を備えたモデルなど、高精度なオートメーション機械を導入し、省力化に取り組んで生産性の向上を図っています。また、DXも進めています。

多様性が増す世界市場の開拓を目指す

ーー今後の新商品開発についてはいかがでしょうか。

井藤竜生:
ダイエット商品や健康食品、特にウコン原料などのお酒のお供ともいえる商品に注力し、定評をいただいています。

今後もこれらの分野でラインナップを拡充し、主体的に、人々の健康を支えるという役割を果たしていきたいと思います。

ーー海外の市場開拓についてお聞かせください。

井藤竜生:
サプリメント市場は欧米で確立されていますが、それ以外の地域にも伸びしろがあります。特にアジアは健康への意識の高まりと共に市場が拡大しており、重要なエリアです。

またインドネシアやマレーシアにはイスラム教徒の方が多いため、豚由来などの原料を除いたハラール向け製品の開発余地は十分にあります。

もちろん、海外への輸出はライセンスや承認を得る面で困難も伴いますが、課題を一つひとつクリアして前進していきたいと思います。

編集後記

井藤社長は若い世代へのメッセージとして「若い時に知識の豊富さについて人から褒められ、とてもうれしく感じたうえに、仕事へのモチベーションが上がった経験があります。情報入手のツールも便利になって学ぶ機会が増えた現在、若いうちに有効活用してほしい」とコメント。

成功体験を通じて、取り組む姿勢に変化が出たことを語った井藤社長。新規開拓をしながら知名度をここまで上げてきた実績は、まさにサクセスストーリーそのものだ。

井藤竜生/1968年大阪府東大阪市生まれ。1991年に井藤漢方製薬株式会社に入社。営業を担当。2008年10月に同社代表取締役社長に就任。