※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

ここ数年で急速に拡大、浸透したマッチングアプリ。新たな恋愛のスタイルとして、若い世代を中心に、マッチングアプリがある世界が当たり前になっている。

株式会社タップルの代表取締役社長の平松繁和氏は、新卒のころからトライアンドエラーを繰り返しながら挑戦し続け、日本にマッチングアプリを広げた立役者の一人。この平松氏に、事業への思いや今後の展望をうかがった。

トライアンドエラーの連続から始まったマッチングアプリの開発

ーーIT業界に入ったきっかけとこれまでの経歴を教えてください。

平松繁和:
大学は情報通信工学を専攻し、卒業後はIT系のインフォコム株式会社に入社しました。会社が株式会社イストピカを買収したことをきっかけに出向し、モバイルゲーム関係の開発にも従事しました。

他にも、クラブイベントをやったり、読者モデルのサイトをつくったりといろいろなことをしていたときに、株式会社サイバーエージェントの藤田社長の目に留まり、連絡が来ました。それをきっかけにサイバーエージェントに入社し、その子会社として株式会社プレイモーション(2022年にタップルが吸収合併)を立ち上げました。

ーーマッチングアプリ「CROSS ME(クロスミー)」を開発していますね。マッチングアプリ事業に着目したきっかけを教えていただけますか?

平松繁和:
プレイモーションではゲームを2本つくったのですが、うまくいかなかったのです。その起死回生の策として考えたのが、マッチングアプリの「CROSS ME」でした。

当時は世界中のアプリで位置情報を使ったサービスが流行り始めていたタイミングだったので、位置情報サービスを活用して「どんな人が、いつ、どこで、何回すれ違ったか」がわかる機能を搭載した「CROSS ME」のコンセプトは面白いと考えました。

立ち上げも順調で、初日からアプリインストール数がものすごい件数でした。1日の売り上げを役員に報告したら「これは累計だよね?」と言われるくらいの件数でしたね。この成功体験を、今の仕事に活かしています。

日本最大級のマッチングアプリ「タップル」。行政との連携もスタート

ーー事業内容についてご説明いただけますでしょうか。

平松繁和:
弊社の「タップル」は、グルメや映画、スポーツなどの共通の趣味をきっかけに恋の相手を探せる日本最大級のマッチングアプリです。2014年5月のサービス開始から現在は会員数1,900万人超、マッチング成立数は累計6億組を突破し、20代の男女を中心に利用されています。2024年1月にはAIパートナーとの恋愛を楽しむアプリ「恋するAI」を新たにリリースしました。こちらは研究の一環としての事業ですが、新たなビジネスの展開を視野に入れつつ、挑戦しています。

ーーマッチングアプリのイメージ向上や認知拡大に向けた取り組みはどのように行っていますか?

平松繁和:
立ち上げ当時は、マッチングアプリと出会い系サービスとの垣根が曖昧だったり、広告が出せない媒体があったりと、いろいろな制約もありました。こうした現状を変えていくため、安心・安全なサービスとしてユーザーに使っていただけるような活動を行なってきました。

具体的には、ユーザーに安心してサービスを使っていただくためのルールづくりや、24時間365日の監視体制の構築や、顔認証技術を活用した公的書類による本人認証、AIを使った不正と思われるアカウントのフィルタリングなどです。

また、同業他社も多数所属する業界団体MSPJ(一般社団法人結婚・婚活応援プロジェクト)においては、代表理事企業として参画し、業界の自主基準の策定・運用や、安全対策を各社で共有するワーキンググループの運用や、行政などの関係各所との勉強会なども実施していたりします。

ーー行政との連携も始まっていますね。

平松繁和:
昨今の少子化問題を受け、様々な地方自治体の皆様からもお声がけをいただくようになりました。これまでに、佐賀県の嬉野市、有田町、神奈川県、三重県、北海道、兵庫県姫路市との連携協定を発表しています。

主な取り組み内容としては、マッチングアプリを安全に利活用するためのセミナーを実施をはじめとして、地域における恋愛・結婚をとりまく環境や価値観などの特性理解のための調査や、安全にご利用いただくためのポイントをまとめた『オンライン護身術ガイドブック』の配布、タップルの利用クーポンの配布なども行なっております。

自治体の皆様と連携して少子化対策に貢献できるよう、こういった取り組みは、これからも強化していきたいですね。

「タップル」で恋愛でしか味わえない喜怒哀楽を生み出すきっかけを生みたい!

ーー事業に対する思いをお聞かせください。

平松繁和:
このドメインに非常にやりがいを感じています。恋愛は、人間らしくて素晴らしい感情です。失恋してショックで食事ができなくなったり、片思いの相手とデートの約束ができたときにはうれしかったり。弊社の「タップル」が、恋愛でしか味わえない喜怒哀楽を生み出すきっかけになったらうれしいですね。

時代によって恋愛の価値観が変わる中で、その時代に合ったコンセプトやサービスを生み出していきたいと思っています。

ーー採用に関して、指標にしていることはありますか。

平松繁和:
サイバーエージェントグループ全体としては「素直さ」を採用時の大切な指標にしています。それにプラスして、事業を拡大させたり、売り上げを増やしたり、成長させるための提案がどんどんできるマインドがある人は、きっと弊社で活躍できると思います。

弊社は事業会社なので、将来、事業を立ち上げたい、経営者になりたいと考えている方にとっては、非常に学べることが多い会社です。数字やデータ分析が好きな方も向いています。マッチング率を上げるためのパーソナライズ化やAIを活用した分析などを「面白い!」と感じられたら、活躍できるフィールドが広がると思います。

ーー若い世代へのメッセージをお願いします。

平松繁和:
自分なりの目標を決めることをおすすめします。私も新卒入社時には「3年以内に事業を立ち上げる」という目標を持っていました。目標があれば、仕事のやりがいや楽しさという点でも全く違った景色が見えます。

動機は「モテたい」でもかまいません。恋愛はメンタルを支えるうえで、大きな力になります。ぜひ、どんな人間になりたいかを思い描き、それに向かって最初の3年間はがむしゃらに挑戦してみてください。

編集後記

ニュートラルな視点で常に事業を見つめる平松社長は、社会人になったころから「事業を立ち上げたい」という明確なビジョンを持ち続け、日本最大級のマッチングアプリサービスを生み出した。常に自分の頭で考えて、挑戦を続けることに意義があるという、平松社長の価値観が垣間見えるインタビューであった。急速に浸透したマッチングアプリ業界の立役者とも言える株式会社タップルが描く未来を注視し続けたい。

平松繁和/2006年、インフォコム株式会社入社。2012年、株式会社イストピカへ出向後、2013年、株式会社サイバーエージェントに入社。同年12月、株式会社プレイモーションを設立し、代表取締役社長に就任。マッチングアプリ「CROSS ME(クロスミー)」の開発・運営を手掛ける。2022年から株式会社タップルの取締役を務め、2023年に代表取締役社長に就任。