※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

2020年に設立された株式会社FUSION。クリエイティビティを駆使したデジタルマーケティングを武器にして、競合の多い広告業界でポジションを確立してきた。代表取締役の前田遼介氏に、起業のきっかけや経営者としての思い、今後の展望をうかがった。

経営者となるべく広告業界へ――26歳で起業を決意

ーーこれまでの歩みをお聞かせください。

前田遼介:
経営一家で育ったことから「将来は経営者になりたい」と考えつつも、自分の能力に自信を持てずにいました。しかし、就職活動を機に「自分は社長になれる器ではない」と思う状態こそ人生最大のリスクだと気づき、経営を学ぶチャンスのある会社を志望したのです。

実力をつけていくと同時に、デジタル化が進む広告業界に危機感を抱くようになりました。AIに仕事を奪われないポジショニングを検討した結果、企画コンテンツと広告の統合プランニングを提案する会社に転職します。その後、独立を決めたのは26歳の頃でした。

身近にいる同世代たちが経営者として活躍し始めたことがキーポイントとなり、「今の自分ならば」と自信が湧き上がったのだと思います。人生設計としても、失敗を取り戻せる20代のうちに起業するべきだと考えました。

ハイクオリティな「クリエイティブ」と「デジタル」を両立

ーー事業内容と強みについて教えてください。

前田遼介:
広告代理店事業としてプロモーションのご依頼をいただき、商品やサービスを売るための戦略を考えています。お取引先の事業規模や業種は幅広い一方で、直近では1件あたりの広告効果をシビアに判断されるダイレクト広告にもより注力しています。

弊社の強みは、「クリエイティブ×デジタル」を同時に実現できることです。それぞれに特化した広告会社は数多く、なかなか太刀打ちできません。そこで、「両方がハイクオリティ」という総合点の高さで有利になる戦略をとりました。

広告業界でデジタルを活用しつつ、クリエイティブも得意な会社は少ないという点で、多くの方々から支援を得ていると思います。

ーー広告業界に感じている課題はありますか?

前田遼介:
市場全体で見るとデジタル広告がマス広告を追い抜いているのですが、デジタル広告の構造は未だにいびつな状態です。クリエイティブに強い会社はデジタル化が進んでおらず、デジタルが得意な業界はクリエイティブに関する知見が足りていません。弊社の強みを生かして課題を解決することで、市場のニーズに応えたいと考えています。

また、需要顕在層に向けた獲得型広告にも、徐々に陰りが見えてきています。元々顕在化されていたニーズも、誰しもが簡単に一定レベルの商品を作れる世の中になったことによって、需要の奪い合いが激化し、結果的に広告単価が上昇しています。業界全体で次のステージに向けた対応が必要だと言えるでしょう。

「余白」と「渇望」を軸に会社の成長を俯瞰する

ーー貴社の社風や、独自の取り組みを教えてください。

前田遼介:
クリエイティブの会社として、お中元・残暑見舞い用にオリジナルアイスクリームを作ったり、他にも回転寿司やマグロの解体ショーなどの社内イベントにも力を入れています。

他社があまり意識せずに意思決定している内容でも、我々はもっと意味を持たせられる、面白くできるという姿勢を大切にしています。こういった無駄に見えることが、ブランドをつくるのだと思います。

女性スタッフが多い弊社ならではの育児サポートも検討中です。会社に保育園の機能を持たせるほか、保育士を総務担当として採用したり、困っている社員の家を訪ねてもらったり、子育てと自分のやりたいことを両立できる新しい形をつくれたらと思います。

ーー採用にも力を入れているのでしょうか。

前田遼介:
全社で掲げているテーマは「100人規模に耐える骨格づくり」です。事業規模を拡大していく上で、メンバーのフレッシュさだけでは耐えきれない面があると考え、チームをまとめる「キープレイヤーの採用」を今年の目標としています。

具体的には、会社の急成長にともなうリスクを対策できる経験者や、組織の視野を広げられる人材を求めています。優秀な人材を中途採用していく一方で、現在のメンバーが不満なく活躍できる環境づくりも忘れません。

ーー会社が成長しても変わらない「軸」を教えていただけますか。

前田遼介:
採用する人材、組織文化に「余白」と「渇望」の双方があると、変化に富んだ、所属して意味のある組織になるので重要視しています。余白に対する想像力と世の中に向けて表現したいという渇望感。これが弊社の原動力です。

余白と渇望を生かし、連続的な組織成長を実現することで、メンバーが組織に所属し続ける大きな理由ができるのですが、とはいえ、構造上簡単なことではありません。
組織拡大と組織崩壊は常に隣り合わせ。我々のような若い組織では、変化のための仕込みをする時間も必要です。会社の中長期での成長を実現するため、私は「急速に拡大させる年」と「備える年」を分けて対応しています。

売上一兆円に向けて――新たな価値観を社会へ

ーー今後の展望をお聞かせください。

前田遼介:
「社会の発展と、人々の幸せを一緒に実現する。」というビジョンを実現したいと思います。具体的なイメージとしては売上一兆円とノーベル平和賞受賞の双方を実現するようなイメージです。社会や環境に対する取り組みは、今まで以上に必要だと認識する一方で、社会全体の意識が社会貢献に少し寄りすぎはじめているような感覚もあります。

私たちは2つを両立させる方向で社会の認識を再構築しながら、会社を大きくしていく所存です。個人的には、30代のうちに世代を代表する経営者になりたいですし、一代でFUSIONを「一兆円規模の会社」にする夢もあります。

編集後記

社会の発展という壮大なビジョンを掲げて「世代を代表する経営者を目指す」と力強く語った前田社長。同世代の活躍が刺激となり、起業を決意した背景からも勝ち気な性分がうかがえる。そのマインドと行動力の高さがメンバーにも伝染することで、新進気鋭のクリエイティブ集団が成り立っているのではないだろうか。

前田遼介/2017年、株式会社サイバーエージェントへ入社。若年層マーケティングを行う子会社CA Young Lab設立に参画。2019年、株式会社チョコレイトへ入社。2020年に独立し、株式会社FUSIONを創業。代表取締役に就任すると同時にクリエイティブディレクターとしても数多くのクライアントのビジネスに伴走中。