※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

かつて情報を伝える手段は「紙」が中心だった。しかし、時代の変化とともに手段は多様化し、ついにはAIやメタバースなどの革新的な手法が登場するようになった。

これらの情報を伝える方法と1世紀以上向き合ってきたのが、西川コミュニケーションズ株式会社だ。印刷業から始まった同社は時代の流れとともに変化し、さまざまな手法で「人々に情報を伝える」ことをミッションとするに至った。

そんな同社の社員は、自主的な学習意欲と、変化に対応する柔軟な姿勢で、顧客からの定評がある。そして、社員たちを率いる代表取締役社長の西川栄一氏は「人間を第一に考える」という価値観を持つ。

「企業のミッション」と「社長の価値観」には、どのような関係があるのかについてうかがった。

デジタルとアナログの垣根を超え、「伝える」というミッションに取り組む

ーーまずは貴社の事業内容を教えてください。

西川栄一:
弊社の事業内容は、印刷やラベルの製造・販売、BPO、ICT、AIやメタバースを活用したソリューションやマーケティングなどです。1906年の創業からしばらくは印刷業を営んでいましたが、創業100年の節目に「西川印刷」の名前から「西川コミュニケーションズ」へと社名を変更し、デジタル方面にも取り組むようになりました。

弊社は印刷という、「紙で情報を伝える」ミッションから始まった会社ですが、これからは媒体にとらわれずに「人々に情報を伝える」ことをミッションとして取り組んでいきます。

また、AIとメタバースは積極的に事業を成長させたいと考えています。これらはDXの進歩に不可欠な要素になると思われますので、ノウハウが蓄積すれば他事業の成長にも役立つでしょう。

ーー西川社長の経歴をお聞かせください。

西川栄一:
私が社長に就任したのは2016年のことです。大学卒業後に他社での修業を経て、2004年に弊社に入社。それから13年後に社長に就任しました。幼いころから会社を継ぐことを意識していたので、イメージした道をそのまま進んできた感じです。

他社での修業期間は、まず総合商社の丸紅株式会社で営業やビジネスの精神を学び、その次に会計事務所のコンサルタント会社で会計について学びました。この期間に学んだ営業と会計のノウハウは、今もビジネスの血となり肉となっています。

社員の自律性と成長意欲というかけがえのない財産

ーー貴社で誇りに思っていること、自慢できることは何ですか?

西川栄一:
社員たちが会社の活動に対して積極的に取り組んでくれることです。弊社には自律性や成長意欲を持った社員が多く、さらにSDGsのような社会貢献事業にも積極的です。

実は、「伝えることで、社会をよりよく。」という弊社の企業パーパス(メッセージ)は、社員たちが発案者となって策定したという経緯があります。私から働きかけるわけでもなく、社員たちが舵をとって前に進む姿には感動しました。西川コミュニケーションズという船を任せるうえで、これほど嬉しいことはありません。

ーー重視している価値観を教えてください。

西川栄一:
松下幸之助氏の有名な言葉である「人間大事」という価値観を重視しています。この言葉は、「どんな場面でも結局、大事なのは人間である」という意味です。

まるであたり前のような価値観ですが、私たちはビジネスに集中するあまり、この「あたり前」を忘れることがあります。数字に執着したり、成果を求めて自己犠牲を払ったり、目の前にいる人間が見えなくなってしまうことがあるのです。

だからこそ、この価値観を常に意識し、判断に悩んだときにも軸がブレないようにしています。どんなシーンでも意識すべき前提条件のようなものですね。

必要な「変化」に取り組む、自主性と柔軟性を兼ね備えた組織

ーー貴社の強みは何ですか?

西川栄一:
時代の流れに合わせて自ら変化できる、自律性と柔軟性を兼ね備えた組織であることです。

弊社には変化を許容するマインドと、状況に応じた学習に取り組む姿勢の両方があります。誰しもコンフォートゾーンから出るのは怖いものですが、弊社の社員たちは恐れを自覚したうえで変化に向き合える精神性を持っています。

外から見ると「リスキリングに熱心」と捉えられるかもしれませんが、そうまとめるのは少々単純すぎます。あくまで勉強は手段であり、本質は変化に向き合うことです。学習の先に目的があるからこそ、弊社の社員たちは変化に向き合えるのでしょう。

ーー今後の展望を教えてください。

西川栄一:
今後はAIとメタバースの領域をさらに強化していきたいですね。時代の風向きを読み、追い風に乗ることで、効率的に会社を成長させていければと思っています。

また、会社を通じた社会貢献や社員たちの幸せづくりにも取り組みたいと考えています。弊社の商品やサービスで社会の「負」に対する解決策を提示した結果、売り上げが伸び、社員たちの幸せにつながれば最高ですね。

不思議なもので、数字とは追うほどに遠ざかるものです。あくまで数字は人間活動の結果だと理解し、人間を第一に据えた事業活動を続けていきたいですね。

テクノロジーが活躍する時代にこそ人間の哲学が求められる

ーーこの記事の読者にメッセージをお願いします。

西川栄一:
昨今のビジネスはテクノロジーの急激な進歩により、新たな技術が大量に投入されるようになりました。まるでビジネスが人間の手から遠ざかっているように見えることもあるでしょう。しかし、そんな状況でこそ人間的な哲学が問われます。

どんなに高性能な道具を手にしても、結局使うのは人間です。そこに人間の善性や心の根の深さがなければ、道具は人間に負の結果をもたらすかもしれません。

だからこそ弊社は自らの意思で変化に立ち向かう姿勢を大事にしています。新たな時代への対応力と人間性を磨く環境です。その両方がある弊社で、ぜひ一緒に働いていただければと思います。

編集後記

「大事なのは人間」。とてもシンプルなことだが、目的や数字を目の前にすると人はそんなシンプルなことすら忘れることがある。しかし、本当に目を向けるべきは人間であり、その源泉たる「心」だ。AIやメタバースといった無機質な分野に人の温かみを与えるのは、きっと西川社長のような人物なのだろう。

西川栄一/1976年愛知県生まれ、上智大学卒。丸紅株式会社などでの修業期間を経て、2003年に西川コミュニケーションズへ入社。2016年に同社代表取締役社長に就任。