私たちの生活と切り離せないプラスチック製品。RP東プラ株式会社はプラスチックの総合加工メーカーとして69年の歴史を誇る老舗企業だ。
食品包装材や家電などの身近な生活製品から、住宅や自動車用のパーツまで、同社の製品は生活のあらゆる場面で活用されている。
同社をけん引する代表取締役社長の南目益男氏の経歴は、丸紅入社からRP東プラ社長就任に至るまで、多くの偶然が重なったものだという。
彼の人生と会社の軌跡、M&Aを経てますます発展していく会社の事業戦略について話をきいた。
意外な縁が紡ぐ不思議なキャリアパス
ーー新卒で丸紅を選んだ理由をお聞かせください。
南目益男:
丸紅に入ったのは、縁としかいいようがありません。
当時、私は既に保険会社から内定を頂いており、時間に余裕がありました。ある日、忙しい友人に「どんな会社か視察してきてほしい」と頼まれて、丸紅を企業訪問しました。そこで対応してくれた人事部の係長と、なんと松江市という同じ出身地で、家族とのつながりがあることも判明したのです。偶然の一致が、私の心を大きく動かしました。
さまざまな縁が重なって、私は丸紅の一員となりました。
――貴社へ入社に至る経緯を教えてください。
南目益男:
丸紅入社後は、化学品部門に配属されました。希望していた部門ではありませんでしたが、上司や先輩方の指導や厳しい評価を受けつつ、日々努力を重ねました。
その後、インドネシア支社へ赴任しました。現地の文化やビジネスに触れるなかで、自身の視野を広げることができました。
当時の丸紅は、社内活性化のため、管理職の登用を2年短縮し、特に優秀な者をエリートとして早期に育成する制度を設けていました。
私はジャカルタ支店長から推薦を受け、エリート養成コースに選抜されました。帰国後は最年少で課長に昇進するなど、責任のある仕事を任されました。
しかし、次第に自分のキャリアプランと会社の期待との間にギャップを感じるようになってきたのです。私は自分の個性や価値観を活かせる環境を求め、最終的に退職を決意しました。
そして、ハローワークで職探しをしていた時、RP東プラの役員と道でばったり会ったのです。
実は丸紅時代、RP東プラのインドネシア合弁会社の設立の手続き代行などを私が担当していたので、彼とは顔見知りでした。丸紅を辞めたと伝えると「うちで働かないか」と誘われ、入社しました。
本当にいろいろな巡り合わせだったと思います。
ターニングポイントで任された舵取り
ーー入社してから社長就任までのエピソードをお聞かせください。
南目益男:
営業部長として入社した翌年、シート事業部長になり、4年目で取締役に任命されました。
当時、丸紅と住友商事がPETシート事業に参画していました。私は「商社では扱いづらい商材なのではないか」と考えました。そこで、両社に事業の買収を打診し、M&Aを成立させました。事業規模が一挙に3倍、年商が50億円から150億円程度に成長しました。
同時期、弊社の花形は大手家電メーカーのテレビ部品を扱う事業でした。しかし、2008年、そのメーカーが海外に移管した影響で、弊社の国内売上は大幅に減少しました。
弊社も海外事業を展開しましたが、最終的にメーカー側がテレビ事業を大幅に縮小しました。結果として弊社のテレビ事業は失敗し、海外拠点や工場などが残骸のように残りました。
そして、2014年、赤字を立て直すため、私は社長に任命されたのです。
ーー貴社のM&Aについての考えをお聞かせください。
南目益男:
積極的にM&Aを行ったのはシート事業で、インドネシアからの日系企業の撤退がきっかけでした。その後持ち掛けられたのが、プラスチック容器事業です。これにより、初めて容器の製造に参入しました。
日本の製造業は、零細企業が大半を占めます。少子高齢化やコストアップなど、さまざまな課題を抱えて生き残りが厳しくなっています。
今後も、M&Aを活用することで、事業承継に悩む同業他社や、業績不振で事業の売却を検討している企業の受け皿となり、日本の製造業の持続的な発展に貢献していきたいと考えています。
3つの「C」で繋ぐ、環境と未来
ーー貴社の環境対策を教えてください。
南目益男:
日本では、プラスチックごみを高性能な焼却炉で燃やしています。燃焼によって発生するCO2が環境に負荷をかけると批判されています。
環境省は、プラスチックごみの循環利用を推進しています。ただし実際には、消費者が捨てたポストコンシューマーと呼ばれるプラスチックごみは生ゴミや異物が混ざり、種類がバラバラなため、リサイクルが困難です。
弊社ではポストコンシューマーではなく、産業廃棄物から排出されるプラスチックごみを再生材として活用していこうと考えています。現在は約2万トンのリサイクル品を原料として調達しています。
ーー就職活動中の読者の方に向けてのメッセージをお聞かせください。
南目益男:
社員には3つの「C」を心がけて行動しようと伝えています。「C」は、好奇心(curiosity)、創造性(creativity)、コミュニケーション(communication)の頭文字です。
好奇心を持って物事を見ないと、新しい発見や創造は生まれません。何か新しいものを生み出すには創造力が必要です。しかし、1人では何もできません。コミュニケーションをとり、みんなで協力してより良い社会を実現していく必要があります。
好奇心を持って物事を見つめ、創造性を発揮できる方とともに仕事をしたいと思います。
編集後記
「すべて、たまたまですよ」と朗らかに語る南目社長だが、その裏では大変な努力をしているにちがいない。
私たちの生活はプラスチックによって支えられている。ともすれば悪者扱いにされがちだが、同社は環境保全やSDGsに積極的に取り組み、社会課題の解決を図ろうとしている。
南目社長とRP東プラの挑戦に、これからも注目していきたい。
南目益男(なんめ・ますお)/1959年島根県生まれ、1981年東京大学卒。丸紅株式会社勤務後、1999年RP東プラ入社。2014年代表取締役社長に就任。