※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

クオン株式会社は、自治体・政府から企業まで幅広く250を越えるファンコミュニティの運営経験を有している。今やソーシャルネットワークは当たり前だが、同社はそれ以前からインターネットの本質を見抜き、双方向コミュニケーションをコンセプトに技術開発に取り組んできた。同社の代表取締役、武田隆氏から世界を目指す仲間に向けた「ラブコール」を紹介する。

インターネット黎明期、マルチメディアとの運命の出会い

ーー創業までの経緯をお聞かせください。

武田隆:
私が大学生の頃、専攻していたゼミの研究室でインターネットに出会いました。日本にインターネットが登場して間もない時期でしたが、これからはインターネットの時代が来ると言われており、その斬新さに驚くばかりでした。

当時、コンピューターやマルチメディア制作の機材はとても高価で学生が買える代物ではなかったのですが、自分自身で新しいメディアを制作したいと思い、借金して買いました。そしてインターネット黎明期の興奮に飲み込まれるように起業したのです。

1994年当時はWeb制作の人材がほぼいなかったので、私たちの元にも次第に大手広告代理店からの仕事が舞い込みました。その後、代官山にオフィスを構えて学生ベンチャーを立ち上げました。それが創業のきっかけです。

命運を分けた信念の選択

ーーオンラインコミュニティの開発に挑もうと思った動機を教えてください。

武田隆:
1998年頃になると状況が変化しました。広告代理店をはじめWeb制作の担い手が多く現れ、ホームページがCMのおまけのようになっていきました。「CMを発注してくれたらホームページもつくります」という具合です。弊社への依頼もCMをそのままWebページにするという内容に変わりました。

インターネットの本質は「双方向」でコミュニケーションを取れることだと考えていた私は、その本質を主張し続けました。しかし「(双方向は)誰も求めていない」「もうWebサイトをつくるプレイヤーはいくらでもいる」と長年のクライアントに否定され辛酸をなめたこともあります。

Web制作会社のままでいるのか、それともインターネットの本質を貫き別の道を歩むのか、選択を迫られました。その結果、「どうせ世の中に同調する方向を選ばなかったのだから」と双方向性を追求する決意を固めて、今の事業の前身になるコミュニティ開発に舵を切ったのです。その後に経験する困難や苦労を知っていたら、この道は選ばなかったと思います(笑)。

早すぎた発明がつくる未来のファンコミュニティ

ーー貴社のサービスや技術の特長、強みは何ですか。

武田隆:
特長の1つは「コミュニティのモール化」です。各企業や自治体等におけるコミュニティのユーザー(ファン)は他のコミュニティにも参加することができます。企業や自治体がファンを共有することは、以前は考えられませんでしたが、ファンをシェアリングすることで双方が盛り上がっています。

専門分野に特化した弊社の運営チームによって、参加してくださるさまざまなコミュニティを活性化できます。コミュニティというのは活性させるのが非常に難しく、オープン直後は盛り上がったとしても、だんだん活動量が減り、閑散としてしまうものがほとんどです。しかし、弊社が支援するコミュニティは、他社の15倍程度活性化することが分かっています。

コミュニティ技術の特許を、5種類、国際特許も含めて全8か国で取得しています。オンラインコミュニティの特許を取るなど誰も思いつかなかった時代だから取得できました。「時代を先取りしすぎた」ために享受できたメリットだといえるでしょう。

また、コミュニティ運営で蓄積したデータを活用し、コミュニティを運営し活性化するAIを開発しました。人間の心と心をつなぐことを支援する技術です。言葉の壁の影響を受けないので、日本だけでなく世界中でコミュニティをつくることができます。

ーーファンコミュニティの実例があればお聞かせください。

武田隆:
茨城県鹿嶋市は人口6万5千人ほどの都市です。この鹿嶋市が「KASHIMA Colorful Base」(※1)というコミュニティを導入しているのですが、現在4万8千人規模にまで成長しました。そのメンバーのほとんどは市外の人です。

また地方都市の自治体が東京でイベントを開催すると聞いても、通常は人が集まりませんが、鹿嶋市のコミュニティで声をかけると、すぐに希望者が集まりました。

鹿嶋市を訪れたことのない人たちが、市役所の職員と一緒に鹿嶋市の魅力を考え、発信してくれています。政策に反映できる「生活者の声」を集められていること、ふるさと納税という形で経済的にも自律した事業運営ができていることが評価されて、令和5年度鹿嶋市「行財政改革に係る取組表彰」において「共創の絆で繋ぐ未来創造賞(教育長賞)」も受賞しました。

実際に、コミュニティがきっかけとなった鹿嶋市のふるさと納税は2年で10倍になりました。現鹿嶋市長もこの快挙に驚いておられるそうです。

(※1)KASHIMA Colorful Base

インターネット領域で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を目指す

ーー貴社への投資や、サービスの利用を検討中の方と共有したい思いはありますか。

武田隆:
私たちは四半世紀にわたりインターネットの本質である「双方向」を追求し続けてきました。最近、34年ぶりに公益社団法人日本マーケティング協会がマーケティングの定義を刷新しました。そこには「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである」と定義されています。

弊社のCSRとして「企業の遺伝子」(※2)というラジオ番組のパーソナリティを担当していますが、10年で140社以上の方々にご出演いただきました。そこでゲストの方が話される「創業者が描いた夢」「大切に受け継がれてきた伝統」「コーポレートアイデンティティ」はまさに企業のDNAです。

これらを次世代につなぐことが、より豊かで持続可能な社会を実現することにもつながり、私たちの夢でもあります。その夢を具現化するのがコミュニティです。つながることで個の小さな力が結集され大きな力を生み出します。

私たちは、この思いに共感してくださる方と共に世界とさらにつながるコミュニティをつくっていきたいと考えています。弊社のパートナーやコミュニティのスポンサーになっていただくことで、そのためのサービスやテクノロジーを提供することができます。

「サービスを導入してみる価値はある」ときっと感じていただけると信じて、ラブレターのつもりでお話ししています。私たちとつながり、ワールドワイドのコミュニティを実現してくださるパートナーやスポンサーの方をお待ちしています。

(※2)「企業の遺伝子」

編集後記

人生をかけた研究がようやく日の目を見る。その光景の実現を目前にして興奮冷めやらぬ社長の心境は察するに難くない。目先の利益にとらわれず信念を貫き、インターネットの神髄を探求してきたクオン株式会社の仲間たちへの天からの贈り物なのかもしれない。

武田隆/1996年、前身となるエイベック研究所を創業。2000年、株式会社化。2015年、ベルリンと大阪に支局を開設。2023年、味の素株式会社、富国生命保険相互会社、消費者庁他、85の企業・自治体・省庁のファンコミュニティを運用。著書『ソーシャルメディア進化論』(ダイヤモンド社、2011年)は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、ロングセラーに。