※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

デジタル化が進む現代社会において、デジタルスキルの差、業務量ややりがいに関する問題、コミュニケーションに関する問題などを背景に企業が直面する課題の一つが、メンタルヘルス対策。その課題に立ち向かうのが、株式会社メンタルヘルステクノロジーズだ。

同社は「企業の保健室」というコンセプトのもと、医療専門職である産業医・保健師とクラウド型メンタルヘルス対策サービスを組み合わせた「産業医クラウド」を2,000社以上の企業に提供、従業員の健康管理と企業の生産性向上を支援している。

今回は、「アジアNo.1のヘルスケアカンパニー」を目指す同社の代表取締役社長である刀禰真之介氏に、起業の背景や今後の展望についてうかがった。

さまざまな経験を経て見出した、メンタルヘルスケアの可能性

ーーまずは、これまでの経歴をお聞かせください。

刀禰真之介:
私は大学卒業後、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社(現:アビームコンサルティング株式会社)に入社しました。当時は就職氷河期で、「終身雇用の終わり」と言われ始めていた時代でした。そのため、確かなスキルを身につけたいと考え、社会人として成長できそうなコンサルティング業界に絞って就職活動をした結果です。

その後、UFJつばさ証券株式会社(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)に転職し、上場審査の仕事を経験します。ここでは金融のダイナミズムを肌で感じながら、充実した「金融マン」としての日々を送りました。その後、エンジェルジャパン・アセットマネジメント株式会社、株式会社環境エネルギー投資へ転職し、キャリアを積んでいきました。

ーー現在の事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

刀禰真之介:
2010年の夏ごろ、健康上の理由で入院したことがありました。その経験から、医療や健康管理の重要性を実感したのです。同時期に、製薬業界の変化や医療に関する情報の需要が増加していることを感じてたこともあり、2011年に弊社の前身となる株式会社Miewを設立しました。

当初は医師向けアプリの開発から始めましたが、製薬業界のコンプライアンス強化などの影響を非常に受けやすく、業績が安定しませんでした。新しいビジネスモデルを模索する中で、自社のエンジニアがメンタルヘルスの問題で休職したことがあり、企業におけるメンタルヘルスケアの重要性を痛感しました。

そこで、現在の事業の構想を練り始めたところ、ある会合で現在弊社の顧問産業医を務める株式会社Studio Gift Hands代表の三宅琢先生に出会います。彼とコミュニケーションをとるうちに意気投合し、私たちは2016年にメンタルヘルスソリューション事業をスタートさせたのです。

企業と医療の架け橋となるメンタルヘルスソリューション

ーー事業内容について、詳しく教えてください。

刀禰真之介:
弊社は企業向けのメンタルヘルスケアサービスを提供しています。学校に保健室があるように、企業にも従業員の健康を管理する、保健室のような機能が必要だと考えたのです。具体的には、産業医や産業保健師といった医療職と、システムやコンサルティングを組み合わせたサービスですね。

たとえば、PCワークが得意でない医療職の方々の業務を、弊社のシステムや専門スタッフがサポートし、その方々でないとできないことに専念してもらうのです。また、メンタルヘルスの問題の根本的な原因の分析から、企業全体の健康管理体制の設計までを行う、コンサルティングサービスも提供しています。これらのサービスを通じて、メンタルヘルスの不調に悩む人を一人でも多く減らすことが私たちの目標ですね。

ーー他社との違いはどこにあるとお考えですか?

刀禰真之介:
最大の違いは、メンタルヘルスの問題を根本的な解決を目的にサービスを提供している点にあります。弊社サービスは、単に法令遵守を目的とした支援も行いますが、課題抽出を行ったうえで、企業の実情に合わせて具体的な解決策を提案しています。

私たちは「仕事の量・人間関係・仕事の質」という3つの要因がメンタルヘルスに大きく影響していると考えました。これらの要因を分析し、企業ごとに最適な対策を講じることで、実効性の高いメンタルヘルスケアが実現できるのです。

また、業界の専門用語をわかりやすく説明する、「トランスレーター」としての役割も果たしていますね。医療従事者と企業の間に立ち、双方の理解を深める橋渡し役となっているのです。

志高き人材とともに、アジアNo.1を目指す

ーー今後の事業展開について、お聞かせください。

刀禰真之介:
私たちは、「アジアNo.1のヘルスケアカンパニー」になることを目指しており、日本国内だけでなく、東南アジアを中心とした成長市場にも注目しています。少子高齢化が進む日本の国内事情を考えると、海外市場での成長は不可欠です。

ただし、単純に日本のビジネスモデルを海外に持ち込むのではなく、各国の実情に合わせたアプローチが必要です。地域によっては、メンタルヘルスよりもがんや心疾患、糖尿病といった疾患への対策のニーズが高い可能性もあるでしょう。そういった地域ごとの特性を見極めながら、最適なサービスを提供していきたいと考えています。

ーーその目標を実現するために、どのような人材を求めていますか?

刀禰真之介:
高い志を持ち、ともに成長していける方々と一緒に仕事をしていきたいと考えています。弊社は日本のヘルスケアサービス業界の中でも、特に大きな目標を掲げていると自負しているので、それに共感し、一緒に挑戦してくれる人材を求めています。特に重視しているのは、リーダーシップですね。みんなの意思を一点に集中させる力、そして皆を支えて導く力を持った人材が必要だと考えています。

また、新しいことにチャレンジする意欲も重要ですね。私たちは常に新しいセグメントやアイデアを模索しているので、そういった新しい取り組みについて一緒に考え、実行していける人材が来てくれたら、うれしく思います。

編集後記

「企業の保健室」という発想は、シンプルながら画期的だ。社員の悩みを拾い上げ、データと人間味を絶妙にブレンドしたソリューションを提供する。まさに、現代のビジネスパーソンにとっての「心の駆け込み寺」と言えるだろう。メンタルヘルスケアを通じて、働き方そのものを変えようとする同社の挑戦に、これからも注目していきたい。

刀禰真之介/明治大学政治経済学部を卒業。デロイト トーマツ コンサルティング株式会社(現:アビームコンサルティング株式会社)、UFJつばさ証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)、エンジェルジャパン・アセットマネジメント株式会社、株式会社環境エネルギー投資を経て、2011年に株式会社Miew(現:株式会社メンタルヘルステクノロジーズ)を設立し、代表取締役社長に就任。2011年にMiew system service(現:株式会社Avenir)を設立し、代表取締役社長に就任。2018年、株式会社Miewから株式会社メンタルヘルステクノロジーズへと社名を変更。