※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

株式会社スペースマーケットは、空きスペースを貸したい人と借りたい人をつなぐプラットフォームを運営する企業。創業わずか10年という期間で、業界のリーディングカンパニーになるまでに成長した。

そんな同社だが、代表取締役社長の重松大輔氏は、創業期には大きな苦労もあったと語る。シェアリングエコノミーに注目が集まる昨今。今回、同社がどのように事業を成長させ、どのような未来図を描いているのかを聞いた。

アメリカで伸びていたCtoCビジネスに注目し起業

ーー創業の経緯をお聞かせください。

重松大輔:
新卒で東日本電信電話株式会社(NTT東日本)に入社し、その後転職して2006年から2013年まで株式会社フォトクリエイトに勤めていました。

2014年1月にスペースマーケットを創業したのは、フォトクリエイトで上場を経験したことに加えて、周囲の友人が起業するのを間近で見ていたことが大きな理由です。

創業直後はネームバリューがなく、お客様は僕たちのことをよく知りませんから「自分の力が試されるときだ」と感じていました。スタートアップで環境も整っていませんでしたが、逆にそれが新鮮で楽しくもありましたね。

ーーレンタルスペースの事業を始めた理由は何ですか。

重松大輔:
起業する1年前から事業のアイデアを考え、案は100個ほど用意していました。その中でも、当時アメリカでAirbnbやUberなどCtoC(Consumer to Consumer、個人間取引)のビジネスが伸びていることに注目しました。

ただ、AirbnbやUberのようなビジネスは規制が厳しく、事業として行うにはハードルが高いのが難点。その一方で、時間貸しのレンタルスペースには厳しい法制度がないことに気づきました。ユニークなスペースは日本中にある上に、何よりこの事業が面白そうだったため、レンタルスペース事業での起業を決意しました。

当時、すでに会議室の検索サイトなどはありましたが、弊社のような予約から決済まで簡単にできるマーケットプレイスはありませんでした。また、自社で設備を持つ必要がなく、先行投資不要で身軽に始められる点も魅力的に感じました。

ユーザーが伸び悩む創業期の苦しい時期を乗り越えた方法

ーー貴社のサービスの強みは何でしょうか。

重松大輔:
取り扱っているスペースは34,000以上と多く、バラエティ豊富な点が強みです。パーティースペースやワークスペース、ダンススタジオ、古民家などさまざまなスペースを扱っています。

また、弊社のメンバーの案で「Spacepad(スペースパッド)」という新規事業も始めました。これは施設の管理業務をシンプルにするクラウド型の予約管理システムで、電話などアナログで行われている公共施設の予約を簡易化することに貢献しています。

ーー創業してから苦労したことや、工夫したことを聞かせてください。

重松大輔:
創業期は、スペースを登録してくれる方もスペースを借りてくれる方も少なかったので、まずはこのサービスを理解してもらいユーザーを増やす必要がありました。

そのため、最初はスペースを登録する方とスペースを借りる方を取り次ぐ仲介のようなこともしていましたね。これは非常に大変で、時間のかかることでした。

とにかくまずはサービスを認知してもらう必要があると思い、営業を兼ねてさまざまなピッチイベントに参加しました。また、先行者であるAirbnbが「総合評価レビュー」と「写真の掲載」で成功していたので、弊社も掲載スペースの写真を工夫するようにしたら、利用者が増えて徐々に軌道に乗り始めました。

スペースマーケットでは初めて会う人がスペースを使うわけですから、借りる人と貸す人が信頼し合えること、そして安心・安全に利用できることが重要です。弊社では、この点を担保することを重視しています。

チャレンジできる環境をつくり10年後も安定成長できる会社へ

ーー今後の注力テーマについて教えてください。

重松大輔:
ポテンシャルのある新規事業を強化しつつ、いまだ成長している既存のプラットフォームにも引き続き注力することです。また、法人の顧客も開拓していきたいですね。

創業から10年経ち、スペースマーケットの認知をより拡大していきたいというのが今の思いです。ハイスペックな人材も弊社に入社してくれるようになりました。5年後、10年後も会社が安定的に成長できるように社内の制度を整え、採用にも力を入れていきたいと思います。

ーー最後に、貴社ではどのような人材を求めていますか。

重松大輔:
求める人材は、受け身ではなく自分から行動できる方でしょうか。弊社はスタートアップ企業なので、自分から課題を見つけて解決できる方が理想です。

社員が気軽にチャレンジできる環境をつくっていくことで、会社がもっと面白くなっていくのではないかなと思っています。

編集後記

「スペースシェアをあたりまえに」をミッションに掲げる株式会社スペースマーケット。今後は認知をより高め、スペースマーケットを誰もが気軽かつ当たり前に使えるような状態にしたいとのこと。

シェアリングエコノミーに注目が集まる時代の中で、同社が日本をどのように変えていくのか。今後の動きをこれからも追いかけたい。

重松大輔/1976年、千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業。2000年、東日本電信電話株式会社に入社。2006年、株式会社フォトクリエイトに参画。2013年、同社にて東証マザーズ(現グロース)市場への上場を経験。2014年、株式会社スペースマーケットを創業。2016年、シェアリングエコノミーの普及と業界の健全な発展を目指す一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し代表理事(現在、理事)に就任。