※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

静岡県内の8店舗に加えて、東京豊洲店を展開中の「フードストアあおき」。食品から日用品まで、国内外から優れた商品を仕入れつつ、PB(プライベートブランド)も積極的に開発している。運営元である株式会社あおきの取り組みについて、代表取締役社長の田村篤己氏に話を聞いた。

高校卒業と同時に幹部候補生へ――社長就任後の大改革

ーー田村社長のご経歴をお話しいただけますか。

田村篤己:
高校卒業後、幹部を募集していた地場企業のあおきに入社しました。やるからには何事も一番になりたい性分で、5年間で係長、課長、部長と昇進し、キャリアを構築してきました。

社長就任後は現会長にならい、経営指針にもある「人づくり」を大事にしています。具体的な取り組みとしては、「自分自身で自分をつくる」「自分の代わりが務まる人をつくる」「自分に適した仕事をする」の3つをもとに大規模な組織変更をしました。

弊社の係長は仕入れの権限をはじめ、大きな職責を持っています。いつのまにか社長や部長が主体となり、現場が見えづらくなっていたため「係長を再び商売の中心にしよう」と考えた結果です。すべての役職や給与体系を見直したことで、職務ごとの真の対価を得られる仕組みができ、従業員のモチベーションも向上しています。

ーー今後の展開をお聞かせください。

田村篤己:
2026年までに幹部クラスの人材を育て上げ、「取締役会」を開ける会社にすることが目標です。10年以内には、静岡東部地区であおきのブランド力を高めつつ、中部地区にも進出する予定です。「人」と「組織」をきちんと作りながら身の丈に合った出店を進めて、将来的には全店舗で年間売上240億円を目指します。

スーパーとしての在り方を追求――品質&おいしさ重視のマーケティング

ーープライベートブランドへのこだわりを教えてください。

田村篤己:
「QUALITY & TASTY(品質の良さとおいしさ)」の定義に該当する商品を毎月厳選しています。月に1回行われる商品開発会議で、商品部の課長が取引先やプライベートブランドの商品を持ち寄り、店長にプレゼンテーションを行います。

販売が決まった商品には「QUALITY & TASTY」のポップを付けて全面的に売り出し、お客様に「あおきだから買う」と納得していただくことを意識しています。「選べる楽しさ」という一つのカテゴリで高級志向の商品を紹介するイメージです。

ーースーパーとしての強みは何でしょうか。

田村篤己:
自社でたれや出汁から作っている惣菜は最大の強みです。コストがかかるぶん、大手スーパーよりも価格は高めですが売れゆきは抜群です。ゆくゆくは街の料理屋さんに匹敵する味に行きつきたいと思います。

鮮魚は市場で直接買い付けるなど、仕入れも独自のスタイルです。今後は鮮度、品質、おいしさをよりPRし、生鮮部門もブランディングしていこうと思います。毎月1日発行の販促チラシではおすすめを紹介しています。

スーパーの従業員ではなく、商人や職人を育てる独自の社風

ーー人材育成における方針もうかがえますか。

田村篤己:
学歴もキャリアも問わず、やる気のある人を採用して商人として育てるのが弊社の方針です。他社でチーフを務めていた人でも、弊社では一般職からのスタートです。全従業員には「お客様に高品質でおいしい商品を提供したい」という強い思いがあり、中でも鮮魚部門は職人級の仕事をします。入社後の教育は厳しい反面、やりがいも大きいでしょう。

ーー今後、強化していきたい部門を教えてください。

田村篤己:
弊社は商品力で大手に勝つしかないため、商品開発を担う課長職とグループの強化を図る方針です。商品部の課長はバイヤー、開発、商談に携わり多忙を極めますが、情報を集めてくるグループも作り、弊社なりの開発に取り組んでいます。上ばかりが牽引する形になり、人材育成が滞るこれまでの悪循環を断ちきるためにも課長を主役に据えなければいけません。そこから、生鮮三部門と惣菜部の強化にもつなげていきます。

編集後記

大手では実現できない細部にまでこだわりを持ち、人の手を加えることで、品質とおいしさを向上させるあおきの取り組み。人づくりに力を入れる会社だからこそ「選びたい人」に選ばれ、「人」による店づくりが唯一無二の価値になっているのではないだろうか。

田村篤己/1978年、静岡県東伊豆生まれ。稲取高等学校を卒業後、株式会社あおきに入社。2017年に商品部部長に昇進。2023年に同社代表取締役社長に就任。