※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

宅配水事業や通信事業、不動産事業など計8事業を展開しているハイコムグループ。社名のハイコムには、High(高いレベルでの)Communication(お客様との関係づくり)を築きたいという気持ちが込められている。チャレンジ精神を大事にする企業理念のもと、複数の事業を展開して規模を拡大してきた。

今回は、グループ会社の一つである宅配水事業を担うハイコムウォーター株式会社、代表取締役社長の甲斐文祥氏に、組織改革の苦労や今後の展望についてうかがった。

大企業と中小企業の経験が組織改革に活かされた

ーーNTT西日本に入社した経緯について聞かせてください。

甲斐文祥:
もともと通信事業に興味がありましたが、その中で「いずれは地元に貢献できるような仕事がしたい」と考えていました。当時、東日本・西日本となる東西再編前でNTT九州として採用していましたので、エントリーしました。

ーー前職の経験を、ハイコムウォーターの経営にどのように活かしましたか?

大きな組織で働いたことで多くのことに気が付きました。福利厚生や働く環境など、NTT時代に当たり前だと思っていたことが中小企業では当たり前ではなかったことなどです。弊社では、社内の管理体制や規定作りがきちんとできていなかったため、入社当初は営業に専念することが難しかったですね。

一方、大企業では決済までに時間がかかりましたが、中小企業にはスピード感を持ってチャレンジできる環境があります。対極を見られたことで、大企業の良いところは取り入れつつ、中小企業の強みも活かした戦略を考えていくことができました。

ーーどのような社内改革をおこないましたか。

甲斐文祥:
まずは、社員が安心して働けるように就業規則を整備しました。具体的には、学生が選んでくれる会社を目指す「企業ブランディング」ですね。さらに、教育制度として「管理者育成」を導入しました。経営層には、社員にきちんと言葉を届けるための「共通言語」を学んでもらっています。

「人こそすべて」経営で花開くビジネス戦略

ーー新事業や新商品の開発が生まれるきっかけは何でしょうか?

甲斐文祥:
社内からの提案や、お客様のニーズから生まれることが多いですね。社会的な要望に応えるために始めた事業もあります。どの事業にも共通しているのは、社会に必要とされていることですね。

ーー企業理念はどのように浸透させていますか?

甲斐文祥:
定期的におこなう経営計画発表会で経営理念について話したり、朝礼で社員全員で唱和したりしています。社員全員が当事者意識を持ち、お客様を大切にしながら働けるような社風をつくっていきたいですね。

ーー経営方針についてもお話いただけますか。

甲斐文祥:
「人こそすべて」という経営方針を掲げています。多くの事業をおこなう中で、人材の大切さを常に感じています。優秀な人を採用して、社会に貢献できる人材育成を行って、社員と会社が共に成長することを目指しています。

自然の恵みと中小企業の強みを活かした商品「あぴ~る水®」

ーー貴社が宅配している「水」へのこだわりについて聞かせてください。

甲斐文祥:
日本名水百選で知られる南阿蘇村の天然水を使用しています。この天然水は地下100mから汲み上げられ、4大ミネラル成分といわれるカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムをバランス良く含んだ水質です。そして、美味しさを保つため生産管理の難しい非加熱処理を施し、天然水本来の口当たりの良さや、まろやかさのあるお水を提供しています。

ーーオリジナルペットボトル「あぴ〜る水®」を開発したきっかけを教えてください。

甲斐文祥:
最初は12Lのウォーターサーバーを提供していたのですが、お客様から「小さいサイズの商品はないか」というお問い合わせが多く寄せられました。当初はお断りしていましたが、弊社が工場の生産ラインを新しくしたことで工場内にスペースができ、そこに300mlのペットボトルを生産するラインを作りました。

一般の小売市場に流通しても戦えないので、「小ロット」「オリジナルラベル」という大手にはなかなか実現できない方法で事業をスタートしました。

地元資源の活用に向けた新たなビジョン

ーー今後、どのような事業展開を考えていますか。

甲斐文祥:
宅配水の業界は動きがあると感じています。弊社は営業、生産、カスタマーサービスなど、業界に関わるさまざまなフェーズに携わっているので、その中で必要とされるものを見出していきたいですね。水をきっかけに「どのような商品が世の中に必要とされるのか」「どのように市場を作っていくのか」ということを模索しています。

また、海外を視野に入れています。物流の面での課題はありますが、アジア圏に良い水を届けたいと考えていますし、他にも、「地産地消のような形で南阿蘇村の水を使って育てた野菜をそのエリアに流通させたら面白そうだな」と思っています。

編集後記

「人こそすべて」。その言葉に全ての思いが詰まっている。数多くの事業を展開してきたからこその経営方針だと感じた。熊本県から働く人が安心して働き続けられる「ブライト企業(※)」として認定されたのは、心から人を大事にしている証だ。

「世のため、人のため」という視点からスタートした事業は、熱い思いで溢れている。これから先、どのような事業を展開していくのか注目していきたい。

(※)ブライト企業:ブラック企業と対極の企業をイメージした熊本県の造語

甲斐文祥/1996年に西日本電信電話株式会社(NTT西日本)に入社。コンシューマー向け営業・法人営業を経験。1999年に株式会社ハイコムに入社。携帯ショップ、通信法人営業、不動産営業など現場経験を経て、2006年に副社長に就任。ハイコムウォーター株式会社のほか、ハイコムモバイル株式会社、ハイコムビジネスサポート株式会社、グルービズ株式会社、名水みなみあそ株式会社の代表取締役社長も兼務。