※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

コインランドリーは私たちの身近なサービスだが、その利用率は意外と低い。独立行政法人 中小企業基盤整備機構の調査によれば、2019年時点でコインランドリーを利用したことがある割合は、男女ともほとんどの年代で50%以下だ。

そんな状況に目を付けたのが、株式会社OKULABの代表取締役CEOである久保田淳氏だ。久保田社長はコインランドリーに秘められた伸びしろと、人々の生活をより良くする可能性に着目している。

久保田社長はOKULABをどう成長させ、コインランドリー業界をどこへ導こうとしているのか、その戦略についてうかがった。

コインランドリーに可能性を感じてOKULABを起業

ーー社長の経歴をお聞かせください。

久保田淳:
私は学生時代から「いずれは起業したい」と思っており、学生団体を作ってビジネスに取り組むほどでした。ただ、当時の活動でそのまま起業するのは難しいと思い、まず企業に就職して事業のアイデアを探すことにしました。

大学卒業後はアディダスジャパン株式会社に就職し、法人営業を担当しました。その後「農業×IT」の領域で起業を果たしましたが、この事業では株式を売却する道を選びました。

次に株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに入社してデジタルコンテンツのセールスやマーケティングに従事。その後、ハイアールアジア株式会社(現アクア株式会社)に入社し、ランドリー事業全般に従事しました。そして、ランドリーに関するノウハウを得た後、2016年にOKULABを起業して今に至ります。

ーー事業の題材にコインランドリーを選んだきっかけは何ですか?

久保田淳:
昔から自分の中で「日本人の生活に寄り添えるサービスを提供したい」という考えがあり、それがハイアールアジアで見たランドリー事業とマッチしたことが大きいです。

生活に寄り添えるサービスなら長期的にビジネスを続けられますし、お客様により近い場所で価値を提供できます。

まだまだ日本ではコインランドリーの利用率が低いのですが、それは逆に開拓の余地がある成長マーケットともいえるわけです。私がコインランドリーの良さを伝える役割を担って、日本の日常生活をもっと快適にしたいと思っています。

本質にこだわった徹底的な顧客目線と、拡大傾向にある業界の課題

ーー貴社の強みを教えてください。

久保田淳:
一番の強みは徹底した顧客目線です。弊社は見た目や単純な価格競争で差別化するのではなく、サービスの本質を徹底的に磨き上げ、長年愛されるコインランドリーを目指しています。この点は業界内でも抜きんでていると自負しています。

また、洗濯にプラスアルファの価値を提供するオリジナルコースの開発にも取り組んでいます。たとえば、アウトドアメーカーの株式会社モンベルと共同で開発した「モンベル撥水コース」というものがあります。これは、はっ水加工が落ちてしまった衣類の汚れを落として再度はっ水加工を施すというものです。

徹底した顧客目線に立てば、顧客の潜在ニーズを掘り下げることが可能です。今後もお客様が「当たり前に便利・安全・清潔に使える」コインランドリーであり続けたいと思います。

ーーコインランドリー業界が成長するには、どのような課題があると考えていますか?

久保田淳:
コインランドリー業界は実は拡大傾向にあり、2016年ごろから成長しているのです。店舗数が増え、各店舗にとっての競合は増えていますが、それでも売上が伸び続けているのは、利用者自体が増えているからと言えます。
しかし一方でコインランドリー業界は事業者目線で運営されがちという課題があります。立地や機械の種類、店舗の使い勝手など、費用対効果ありきで考えられることが多く、結果、顧客の使い勝手が改善せずにいます。

この点をクリアして、クオリティの改善や維持、施設のIT化などを推し進められれば、コインランドリー業界はまだまだ伸びるでしょう。

弊社では運営・管理システムのサポートも行っていますので、既存の小規模事業者に管理システムやノウハウを提供して協力すれば、業界のクオリティの底上げになり、業界全体が盛り上がっていくと思います。

ーー今後、注力したいことを教えてください。

久保田淳:
取引先の開拓や新商品の開発です。

まず取引先の開拓ですが、潜在的な消費者と接点を持つにはランドリー業界単体では限界があります。そこで、異なる業界の企業とコラボして広く接点を持てるように取り組んでいこうと思っています。

また、不動産投資のスタンダードな選択肢になれるようにしたいとも考えています。弊社のフランチャイズ利回りは年10%ほどと高いので、中古店舗をリニューアルするなどの取り組みもしながら店舗数を増やしていきたいですね。

さらに、新商品の開発では、絶え間ないランドリーのアップデートを基本として、洗濯コースを増やすことに取り組んでいきます。潜在ニーズの掘り起こしや地域性のあるニーズのリサーチなどを実施して、皆様に喜ばれるコースの開発を目指していく方針です。

人材に求める要素は「誠実さ」「自責思考」「自立心」

ーー人材に求める条件をお聞かせください。

久保田淳:
何より大事なのが誠実さです。事業を伸ばすにはお互いの背中を預け合えるパートナーが必要ですし、顧客との信頼構築にも誠実さは欠かせません。前提条件として求める部分です。

また、自分の力でプロジェクトを立ち上げて完遂させられる、自責思考と自立心が重要です。これらを兼ね備えている人材はとても貴重ですが、若者の中には潜在的に備えている方がいると感じています。

事業に対する興味や自己成長に興味がある方は歓迎です。深く考えることは成長の原資になります。弊社に入れば会社の成長と自己成長の両方を同時に体験できるでしょう。

編集後記

あたり前にあるが意外と使ったことはない。今のコインランドリーはそんな立ち位置にあるのかもしれない。久保田社長の経営方針は、そのギャップを埋めるだけでなく、業界全体のイメージアップも担おうとしている。コインランドリーが今より身近な存在になったとき、きっとその陰には久保田社長の存在があることだろう。

久保田淳/大学卒業後、2006年にアディダスジャパン株式会社に入社。2010年に農業ITベンチャーを共同創業後、2012年に同社の株式を売却し株式会社ソニーピクチャーズ・エンタテインメントに入社。新規事業開発やデジタルマーケティングを担う。2014年にハイアールアジア株式会社(現アクア株式会社)に入社し、IoTなどの新規事業開発やランドリー事業全般に従事。2016年にコインランドリー事業を手掛ける株式会社OKULABを共同創業後し、代表取締役CEOに就任。