株式会社フェローシップは、それぞれの能力や才能、強みを活かせる就職先を紹介する人材派遣を中心とした人材会社だ。人それぞれに適した仕事を紹介し、自らの力で希望の職に就けるように支援を行っている。
今の事業を始めたきっかけや、他社との差別化ポイント、外国人人材の就業における課題解消の取り組みなどについて創業者の小山剛生氏にうかがった。
才能やポテンシャルを見抜くスキルを活かし、人材派遣会社を起業
ーー今の事業にもつながる、リクルートに入社したきっかけを教えてください。
小山剛生:
就職活動でいわゆる大手企業を回っても安定性や待遇の良さをアピールされるだけでわくわく感を感じられませんでした。もともと経営に携わりたいと考えていたので、コンサルティングファームや金融に就職して、経営知識を習得するつもりでいました。
たまたま接点のあったリクルートでは、会社の説明はほとんどなく、社員たちが自ら企画したプロジェクトの話や将来の目標を語っていたのです。
経営者は誰かから指示されて動くのではなく、あらゆる状況を予測しながら自ら意思決定をしなければいけません。そのため、実践の場でリーダーシップを問われる環境に身を置くことが、経営者になる一番の近道だと思い、入社を決めました。
ーーどのような経緯で今の事業を始めたのですか。
小山剛生:
会社経営で重要なことは、業績を安定させることです。そのために自分にしかない強みを活かし、他社と差別化を図ろうと考えました。そこで、前職で得た相手の才能を引き出す能力を活かせないかと模索しました。
自分の強みを一番価値として感じてくれる人は誰かと考えた結果、未経験の方やキャリアチェンジしたい方、自分のキャリアに不安を感じている方、自分の才能に気づいていない方を対象に人材派遣をメインとした人材事業をしようと思い、起業しました。
才能をひき出し、スキルの向上を支援して自立を促す
ーー人材派遣業界は競合も多いですが、参入障壁はなかったのですか。
小山剛生:
人材派遣業界はレッドオーシャン(過当競争市場)と言われますが、実は業界トップの会社でもシェアは全体の10%にも達していません。そのため、たとえ後発でもしっかりと差別化でき、自社の魅力を伝えられれば問題はないと考えました。
特に大手の派遣会社は、大企業向けに定型業務を行う事務職の派遣の仕事を多く取り扱っています。一方で弊社はエンターテインメントやIT、Web系のベンチャー企業がメインであり、変化や進化のスピードが速く成長感を感じる仕事がたくさんあります。
また、派遣先に配置転換や社員への昇格を打診するなど、みなさんが希望する職に就けて、キャリアアップできるように支援しています。
人材会社は企業が求めるスペックを満たす人材を探し派遣するのが仕事です。しかし弊社は真逆のスタイルで、登録者の才能をひき出し社会が求めるスタンスやスキルの習得を支援、継続的なコーチングを行い自立支援を行う「育成・カルチャーフィット型モデル」を構築しています。
「ヒューマンパワー×テクノロジー」で定着率向上を図る
ーーグローバル人材の派遣事業の特徴を教えてください。
小山剛生:
外国籍や日本の人材を含め、グローバルに活躍する方々をグロキャリ(Global Career Workers)と呼び、就職支援を行っています。外国人人材に関しては、高度な技術を持っている方や人文知識に長けた技人国就労ビザ(※)を所有している方を対象にしています。
主な職種や業種は、通訳・翻訳、貿易事務、営業・マーケティング、ITエンジニア、機械系エンジニア、販売業、サービス業などです。外国籍の方からは毎月1,000人程度の応募があり、そのうち40人程度を採用しています。
特に日本語能力の高い、東アジア地域の方々を積極的に採用しており、半数以上を中国、韓国、台湾出身の方が占めています。集客に関しては上海法人のほか、自社で運営している中国語求人専門サイト「TENJee(テンジー)」も活用しています。
(※)技人国就労ビザ:「技人国」は技術・人文知識・国際業務の略で、高い専門性を有している外国籍の人に与えられる在留資格のこと。
ーー外国人人材の定着率を高めるための取り組みを教えてください。
小山剛生:
海外の方が日本の企業に就職した際、言語以外に大きな弊害となるのが文化の違いです。そこで弊社では、日本語教育に加え、日本の働き方への理解を促進する育成プログラムを実施しています。
さらに、母国語を話せるスタッフが定期的に面談を実施し、それぞれの悩みについてアドバイスを行っています。たとえば入社後に感じたギャップや、日頃溜(た)め込んでいる思いを吐き出してもらい、改善策を提案するようにしています。
こうしたマンパワーに加え、テクノロジーを使ってコンディションを分析し、退職リスクを低減しようと考えています。まだ実装はしていませんが、表情や会話の内容をAIで分析し、ケアが必要か判断するシステムの開発を進めています。
人間の場合、「本人が大丈夫と言っているから問題ない」と受け流してしまう場合もあります。そこでAIを駆使して働き手の異変を察知できるようにして、早期にフォローできる体制を整えていこうと考えています。
上場を目標にさらなる成長を目指す
ーー座右の銘を教えてください。
小山剛生:
「未来を予測するのは難しい、創造するほうが簡単だ」「迷ったときは先を見ろ、目の前のことが誤差になる」「今が一番楽しい」の3つです。
先のことは誰にも予想できないので、これからどうなるかを考えるよりも、自分で未来をつくってしまう方が楽だと思っています。そして先を見越して行動していれば、目の前のことは大した問題ではなくなるはずです。
また、私は今54歳ですが、今が一番楽しいです。もう年だからと縮こまるのではなく、年齢を重ねて得た経験を活かし、さらに自分の幅を広げていきたいですね。
ーー今後の展望を聞かせてください。
小山剛生:
より優秀な人材を確保するため、株式市場への上場を目指しています。これから入社される方には、成長フェーズに関わる面白味を感じてもらえればと思っています。
編集後記
「私たちがぴったり合う仕事を探すのではなく、あくまで自分の力でチャンスをつかめるよう支援しています」と語った小山社長。それぞれの強みを活かせる仕事は紹介するけれど、あとは各自でスキルアップすることを促すというスタンスが重要なのだと感じた。国籍や職種にとらわれず、人材と企業をつなげる株式会社フェローシップは、生き生きと働ける世の中の実現に貢献することだろう。
小山剛生/1992年、慶應義塾大学法学部を卒業後、株式会社リクルートに入社。人事部、リクルートエージェントを経て、2004年に株式会社フェローシップを創業。代表取締役社長に就任。2021年よりHSK日本実施委員会委員およびHSK就職支援室室長に就任。