※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

今日、企業の成長には時代に合わせた絶え間ない変革が求められるようになった。とくに競争の激しい市場においては、革新的なビジネスモデルと柔軟な働き方が不可欠だ。

そんな中、株式会社ミナトの湊社長はメガバンクでの多岐にわたる経験を活かし、会社の変革をもたらしている。

経営改革を行った湊社長に、地産地消の取り組みや若手社員への思いをうかがった。

30年間のメガバンクの経験で経営分析能力を積み上げる

ーーお父さまの会社を継ぐ意識はいつからありましたか?

湊浩:
弊社は創業から76年が経ちますが、大学に進学する頃には会社を継ぐことを考えており、大学時代にはアルバイトをしながら飲食店への配送業務を手伝っていました。

食品会社へ就職を考えたこともありましたが、自分には合わないと感じ、最終的にはさまざまな業種にも対応でき、多くの社長にも会えるという点に惹かれて三和銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行しました。

入行後、さまざまな支店での勤務を経験し、営業一筋で多くの成果を上げることができました。私自身好奇心旺盛で、考えてすぐ行動するのが好きで、人と違ったやり方で挑戦した結果成功し、周りから可愛がっていただきました。自分の信念と行動力が評価されることを実感しました。

実際に、営業職として働いている間はずっと優秀外交をもらいまして、順調にキャリアを積み上げることができました。また、銀行での経験を通じて、決算書の読み方や経営分析のスキルも習得できたので、この知識が現在のビジネスに役立っています。

価格競争から、地域と連携した価値提案型のビジネスモデルへの転換

ーーミナトの社長に就任された後、どのような社内改革を進めましたか?とくに困難だった点や成功したポイントについて教えてください。

湊浩:
ミナトの社長に就任した後は、業務用食材卸の業界は価格競争が激しかったので、新たなビジネスモデルを構築することに力を注ぎました。

当時は5000社ある業務用食材卸の中で、弊社は中堅規模に成長していましたが、競争の激しい市場で適応できる戦略が求められている状況でした。そのため、単なる価格競争から脱却し、お客さまのニーズに応じた提案や付加価値のある商品を提供するといった施策を展開しました。

また、弊社では地域と提携した食の取り組みにも積極的です。実際に京都の生産者や農家との連携を強化し、地産地消の取り組みを行ったことで、高級ホテルやレストランとの取引が増え、会社全体の売上を大幅に伸ばしています。

多角的な事業にも対応できるよう、6つの温度帯の倉庫、25台のトラック、キッチンスタジオを設けることで、プラットフォームを整えました。今では、弊社内で新たな商品を考え、つくりやすい環境となっており、業界内での地位を確立することができています。

ーー地産地消の取り組みと展望について教えてください。

湊浩:
例えば、ただ同然の果汁を絞った後の柚子の皮をペーストに加工し、ジュースやサイダーなどの新商品として市場に出すことで、農家さんからしっかりとした価格で購入させていただき価値を生み出しています。農家の収入増加と持続可能な農業の推進を実現しました。

亀岡牛は本当においしく、近畿、中国、東海地方の品評会でもナンバー1を獲得するほどの高品質な牛肉です。ただ、認知度が低く、地元やスーパーでしか扱いがなく、販売ルートが限られていました。

そこで、亀岡市とミナトの取り組みとして亀岡牛のブランド化を進め、全国的な認知度向上をはかっています。亀岡牛を高級ホテルやレストランに提供することでブランド牛として有名になれば、その結果、ゆくゆくは亀岡牛の需要が増えて、地元の農家や生産者の収入向上に貢献し、亀岡市への地域貢献にも繋げたいと思っています。

大阪や東京にオフィスを構えることは全く考えていませんが、例えば東京で「京都の食材を使いたい」というご要望があれば、配送する新しいビジネスも展開できたらいいですね。

全社員が自分らしくキャリアを形成できるステージを提供し続けたい

ーー20代の若手社員に多くの責任と自由を与えているとうかがっています。具体的な取り組みを教えてください。

湊浩:
弊社では、社員の半数近くが20代で、実践的な経験を積ませることを重視しています。たとえば、ラグジュアリーホテルの営業担当や展示会の運営といった、重要なプロジェクトを任せていますね。

ミナトの社員教育の目標は、若手に仕事を任せることで短期間で成長し、その経験を活かして自分のやりたいことにつなげてもらうことです。そのためには、若手に、失敗を恐れずに積極的に新しいことに挑戦できる機会を与えることが大切です。実践を通じてスキルを磨き、自己成長を促しています。留学してさらに学びたいという若手には、サポートできるよう体制を整えたいですね。

ーー他にも社員のキャリアについての制度はありますか?

湊浩:
社員がライフステージに合わせた働き方を選択し、長期的なキャリア形成ができる柔軟な働き方を推進しています。産休や育休をとる社員に対しても、現状のルールでは、給料が支給されなくなるため、テレワークや時短勤務を導入することでキャリアを中断せずに働き続けられる環境を整えたいと思っています。

ミナトは社員が活躍しやすい環境を整え、自由に成長し、次のステージへと進むための支援を行っています。これからも若手の力を最大限に引き出し、ともに成長していく企業でありたいですね。

お客さま第一主義の実践でWin-Winの取引関係を構築する

ーー事業について、現在の取り組みと今後の方向性について教えてください。

湊浩:
労働環境の整備を重要な課題と捉えています。過去には労働時間に対する管理が甘く、長時間労働が常態化していた時期もありましたが、現在では改善が進んでいる状況です。とくに、新卒採用を増やし、若手社員が活躍できる環境を整えることで、会社全体の活力を高めることを目指しています。

新しい労働環境の整備として、勤怠管理のデジタル化やRPAの導入など、DXを積極的に推進し、業務効率の向上と社員の負担軽減をはかっています。

また、AIを活用したプロジェクトも進んでおり、料理人のニーズに応じた食材の提案を行うシステムを開発しています。京都府内の食材を効率的に流通させるとともに、さらなる地域経済への貢献を目指しています。

ーー最後に、ミナトとして大切にしている考え方は何でしょうか。

湊浩:
ミナトは、常にお客さまのニーズに応えることを第一に考えています。また、取引先の生産者や仕入れ先の利益も考慮し、双方にとってWin-Winの関係を築くことを目指しています。

弊社では京都府の自宅療養者向けの食事セットの提供を担当したことで、売上の減少を補填しました。地産地消の取り組みで以前から京都府と強固な関係があったため、依頼されました。これからも地域社会に貢献し、社会的責任を果たしていきたいと考えています。

編集後記

DXの活用による業務効率化とコスト削減、新しい働き方など柔軟な体制を積極的に整えている株式会社ミナト。また、顧客と生産者双方のニーズに応える「4WIN」のビジネスモデルへの転換も目を見張るものがある。地域と全社員の成長と活躍を全力で支援する湊社長の取り組みに注目だ。

湊浩/立命館大学法学部卒業後、1986年三和銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。関西圏を中心に旧三和銀行や三菱UFJ銀行の支店の法人営業や支社長、営業部長などを担当し、2016年三菱UFJ銀行を退職。2016年株式会社ミナトに入社し、取締役副社長に就任。2021年代表取締役社長に就任、現在に至る。