一般社団法人ペットフード協会が発表した「2023年全国犬猫飼育実態調査」によると、最新の飼育頭数は犬が684.4万頭、猫は906.9万頭とのこと。
日本では多くの人が犬猫をはじめとしたペットを飼っているが、ケージなしでは電車に一緒に乗ることができないなど、ドイツなどのペット先進国と比べて「ペットの家族化」は進んでいない。
このような状況下で、「ペットの家族化推進」に向けて動いているのが株式会社TYLだ。代表取締役社長の金児将平氏に、同社が目指す未来とその思いを聞いた。
「ペットと暮らしやすい社会」を目指して起業
ーーまずは会社を立ち上げるまでの経緯について教えてください。
金児将平:
大学を卒業後、株式会社エス・エム・エスに入社し、9年間在籍しました。薬剤師の人材紹介事業やWebプロモーション事業に携わった後、サービス責任者やコールセンターの立ち上げに関わるなど、現在の事業の基盤となることを学ばせてもらいました。
転職を考え始めたのは、会社が入社当時200名弱の社員数が数千名規模になるに連れてベンチャーマインドの希薄化を感じるよう感じるようになったからです。しかし転職活動は積極的に行っておらずお声かけ頂いた会社のお話を聞くぐらいの形で進んでいました。ご縁があった会社もありましたが、入社時期が合わず、今後のキャリアについて考えている時に、以前の上司と食事をする機会がありました。
「何かほかにやりたいことはないのか」と聞かれ、そのときにペットの事業を始めたいと話したのです。そうしたら「やってみたら良いじゃないか」と言っていただき、これがきっかけとなり起業を決意しました。
ーーどういった思いで事業を立ち上げたのでしょうか。
金児将平:
私自身、ペットとともに生活する生きづらさをとても感じており、ペットと一緒に生活するための社会の障壁を下げたいという思いがあります。たとえばドイツなどのペット先進国では、日常的に電車やバスに一緒に乗れるなど、ペットとともに暮らす環境が整っています。
そこで弊社は、日本の社会に向けて発信し、将来的にはペットと飼い主が日常生活で発生する生きづらさをゼロにしていく社会を構築していきたいと考えています。
動物病院と飼い主の支援でペットの家族化を推進
ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。
金児将平:
動物病院の支援と飼い主の支援を行っています。動物病院に対しては、人材の採用・定着、集患、M&A、システムの導入を通じた業務効率の改善などを支援しています。飼い主に対しては、たとえば病院に行かなくても獣医師に相談できるサービスの提供など、ペット医療のDXを支援しています。
弊社が短期間で成長できた理由のひとつは、「ペットの家族化推進」というミッションに多くの人が共感してくださったからだと思います。また、リファラル採用(社員から友人・知人を紹介してもらう採用手法)が5割を占め、効果が出ていることや、競合がいないことも大きいですね。
実際に動物病院分野の人材紹介・求人広告において、弊社は圧倒的なシェアを誇っています。もともとWeb広告の活用が得意な会社ですので、Web集客を内製化し、高速でPDCAを回すことで、多くの登録を得ることに成功しています。
ーー現在の事業以外に挑戦したいことはありますか。
金児将平:
ペット医療の分野でいえば、たとえば食べ過ぎて太ってきたペットの健康をサポートして、将来の病気を予防するといった健康関連事業を始めたいと考えています。また、動物病院がM&Aをする際に足りない資金を貸し付けたり、商品を共同購買することで仕入れを安くできるようにしたりするなど、困りごとをサポートするサービスにも興味があります。
現在、ペット医療の分野から戦略的に参入していますが、今後は段階的に、ヘルスケア分野とライフスタイル分野にも進出したいと思っています。
組織開発・組織の縦横のつながり強化で会社を成長させる
ーー今後注力していくテーマは何でしょうか。
金児将平:
1つは組織開発です。さまざまなバックグラウンドの人材に入社していただきたいと考えています。成長のためには、多様性を受け入れながら、組織づくりやマネジメントを進めていくことが重要だと考えているためです。
また、従業員がどういった方向に進みたいのか、どのようにキャリア形成したいのかといった従業員と会社の相互発展を考えながら評価制度や人材マネジメントの改善をしていきたいと思っています。
さらに、これまでは事業部同士の横のつながりが薄く、また役員と従業員の縦のつながりも薄かったことから、それらの改善にも努めています。
ーー貴社のPRポイントと求める人物像を教えてください。
金児将平:
就業環境はもちろん、意思決定が早いこと、早い段階からマネジメントに関われることが弊社のPRポイントです。
弊社の新卒の採用活動ではまず面接があり、次にインターンシップを行います。このインターンシップは選考の役割も兼ねており、ここでいわゆる泥臭い仕事を体験してもらうことで、入社後のギャップが少なくなるように意識しています。
求める人物像としては、自分で事業をつくってみたい人、将来的に起業してみたい人などに来ていただけるととても嬉しいです。また、ペット事業に貢献したいプロフェッショナル、また純粋に私たちのミッションやバリュー、サービスに共感してくれる人も理想です。
編集後記
「業界にこの会社ありと思われるようなサービスをつくりたい」と語った金児社長。自動車業界といえばトヨタを思い浮かべる人が多いように、ペット業界といえばTYLを連想させたいと胸を張る金児社長は、ペットにとっても頼もしい存在だ。日本のペット業界の将来を担うTYLが、業界にどんな新たな風を吹き込むのか、ペットを愛する買い主からの期待も大きいことだろう。
金児将平/2008年、株式会社エス・エム・エスに入社。人材紹介の営業やWebマーケティング業務に従事した後、資格情報サイトのマネージャーとして商品企画やWebマーケティングなどを担当。その後、介護人材の紹介事業および子会社であるコールセンターの責任者として、事業の立ち上げから運営まで全フェーズを経験。退職後、2017年に株式会社TYLを設立し、現在に至る。