近年、世界中で盛り上がる「eスポーツ(electric sports)」。ビデオゲームやコンピューターゲームの対戦を競技として捉えたものであり、視聴者を合わせるとeスポーツ人口は5億人にも上る。日本においてもeスポーツの競技人口が急増しており、関連企業だけでなく、投資家や日本政府も期待する成長分野だ。
そのような中、このeスポーツを発展させた独自のテクノスポーツ「HADO(ハドー)」をつくり出し、いち早く世界に進出したのが株式会社meleapだ。「HADO」の勢いは凄まじく、瞬く間に世界39カ国に広がり、競技人口は540万人を突破した。そこで「HADO」の開発者であり、同社の創業者であるCEO、福田浩士氏が見据える未来についてうかがった。
AR技術で楽しめる魔法のような新世代eスポーツ「HADO」
ーーテクノスポーツ「HADO」について教えてください。
福田浩士:
「HADO」とは頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着し、AR(拡張現実)によって勝敗を競い合うスポーツです。イメージとしては、ドッジボールのような形式にシューティングゲームの要素を加えたものです。
具体的には最大3人対3人のチームが、自らの手で発生させたエナジーボールという弾を対戦相手に撃ったり、シールドという盾で相手のエナジーボールから身を守ったりしながら、より多くの得点を稼いだチームが勝利となります。
「HADO」のルールはシンプルですが奥深く、VR(仮想現実)でプレイするeスポーツとは一線を画します。実際に人が集まって体を動かしてプレイするため、コミュニティができやすいことも大きな特長ですね。
「かめはめ波」を撃ちたいという夢が原動力に
ーー「HADO」開発と起業のきっかけを聞かせてください。
福田浩士:
きっかけは、私がマンガ『ドラゴンボール』(鳥山明・作、集英社)の主人公、孫悟空の得意技である「かめはめ波」を撃ちたかったからです。私には起業の夢もあり、大学院を卒業後、人材育成に定評のある株式会社リクルートに勤務していました。
そこで、バーチャルとリアルを融合させるARに出合い、「これなら、かめはめ波を撃てる」と確信したのです。すぐにスタートアップとして起業し、デジタルテクノロジーの勉強と並行しながら人材や資金を集め、「HADO」の開発に着手しました。
「HADO」をスポーツとして成立させたのは、コンテンツとして消費されることを防ぐという目的がありました。「HADO」をプラットフォームとして、プレーヤー自身がコンテンツとなることで、サッカーのような巨大市場スポーツ、そして文化にまで高められると考えたのです。
言語の壁を越え、「HADO」に熱狂
ーー世界各国で「HADO」が受け入れられた理由は何にあるとお考えでしょうか。
福田浩士:
私と同じようにアニメやゲームの世界を子どもの頃に夢見た人が、それをリアルに体験できることが、好評をいただいている最大の理由と考えています。
また、「HADO」は性別や年齢を問わずにプレイできるスポーツであることも魅力の一つです。エナジーボールが撃たれた時の速さや大きさ、シールドの強さといったスキルはカスタマイズできるので、運動能力や体格によるハンデもありません。さらに、適度に体を動かすので、参加者の健康にも寄与できます。
一般的にゲームは導入国に応じた翻訳が伴いますが、「HADO」は言語の壁がないことも世界進出の要因でしょう。加えて、専用施設の「HADO ARENA」だけでなく、スポーツジムのスタジオやイベント会場などで、ミニマムなスペースと機材でプレイできることも導入してもらえるポイントになっています。
「サッカーを超えるスポーツ競技をつくる」という壮大なビジョン
ーー今後はどのように事業を展開していく予定ですか。
福田浩士:
私たちの目標は、国内外に専用施設の「HADO ARENA」と競技人口を増やすことです。そのために、IP(※)コンテンツとコラボしたスペシャルバージョンの「HADO」の展開も構想中です。競技の普及については、各地のイベントや商業施設などで、スポット開催を実施しています。また、自治体や企業、学校での開催を通じて健康増進やデジタルテクノロジーの啓蒙を推進し、社会貢献も果たしていきたいと考えていますね。
さらに、弊社のビジネスモデルの一つである、俳優やタレント、アイドルが選手としてプレイする「タレントリーグ」に注力し、応援・観戦するファンの拡大、チケットや投げ銭によるマネタイズを図っていく予定です。国内大会やワールドカップも開催しているため、今後はプロ化と国際リーグ設立も実現したいですね。
(※)IP(インテレクチュアル プロパティ):知的財産。IPコンテンツとは、ゲームやマンガ、アニメーション、映画、小説、音楽、キャラクターなどを指す。
ーー貴社で活躍するにはどのような人材が適しているかを教えてください。
福田浩士:
弊社はゲームやコンテンツのクリエイターとして、キャリアを積んだスタッフを中心に構成されています。でも、私たちのビジョンと価値観に共感し、誰もやったことがないことにトライしたいという情熱を持っている人であれば、異業種出身でも弊社で活躍できます。
私たちのビジョンは「サッカーを超える世界最大のスポーツ競技を作る」。私たちの夢はまだ実現の途上にありますが、「かめはめ波を現実に」という目標は既に成し遂げました。ゆくゆくは「HADO」がサッカーのようなメジャーなスポーツになることを目指して、全力で進んでいきます。
編集後記
独創的なアイデアを持ち、先見性に優れた福田氏は、冷静にプロダクトを分析し、経営戦略を立てて、着々と目標を達成している。一方で、幼い頃からの夢をピュアに貫き、「サッカーを超える世界最大のスポーツ競技を作る」という情熱も持ち合わせている。「HADO」がオリンピック競技となり、日本代表選手を応援する未来に期待したい。
福田浩士/東京大学大学院を卒業後、株式会社リクルートに入社。2014年、株式会社meleapを設立。AR技術を活用した「HADO」を開発し、39カ国に店舗を展開。2016年から「HADO WORLD CUP」を開催。2020年、観戦者参加型の競技システムを導入し、新しい応援体験を提供。サッカーを超えるスポーツ市場の創造をめざす。