※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

料金の督促に紙や電話が使われることへの課題を解決するために、債権管理領域におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する「Lectoプラットフォーム」の運営に力を注ぐLecto株式会社。

DXは債権管理業務のどんな課題を解決し、業界にどのような変化を与える可能性があるのか。「Lectoプラットフォーム」を導入するメリットを代表取締役社長の小山裕氏にうかがった。

自分らしく生きるなかで出会ったチャンスをモノにする

ーー社長の経歴をお聞かせください。

小山裕:
幼少期から「自分らしさを大切にしたい」「自分の力で生きたい」と思っていた私が大学卒業後に選んだのは、「大好きな音楽業界で起業する」という道でした。幸いにも事業は順調に進み、有名アーティストと仕事をする機会にも恵まれました。

しかし、2008年にリーマンショックのあおりを受け、事業をたたまざるを得なくなった私は、改めて自分のキャリアと向き合いました。

そこで、あえてこれまでとは真反対のキャリアを経験してみたいと思い、就職先に選んだのが、三越伊勢丹グループです。配属先は金融事業の債権管理部門で、債権の督促や回収、与信管理などに携わりました。仕事は充実していましたが、業務の中で事業アイデアを思いつき、2012年に再度起業の道へと戻りました。

その後、2016年に同事業が落ち着いたタイミングで、1年だけKDDIグループの事業会社に参画。2017年には、さらなる事業実現のためにGardia株式会社を立ち上げました。

Gardiaの事業は順調に成長し、2019年に伊藤忠商事グループへのM&Aに成功。その1年後のタイミングで私はGardia株式会社の社長を退任し、2021年にLecto株式会社の事業を開始しました。現在、弊社は4期目を迎えています。

自分の人生だからこそビジネスの手綱はしっかり握ろう

ーー事業を立ち上げるにあたって「これだけは守るべき」というポイントはありますか。

小山裕:
会社を立ち上げる際には、自分で保有すべき株の持ち分を明確にすることです。ここを間違えると、事業が成功してもそれを失うことにもなり得ます。

私のようにアイデア実現のために起業をする人は「実現できた」ということで満足しがちです。その分、自分の利益に興味が薄かったりもするのですが、株式を必要数保有していないと、意思決定権が第三者に渡ってしまい、思い通りの活動ができなくなってしまいます。

自分に意思決定権がないと、自分に関わる社員や出資者などにも迷惑をかけかねません。
起業とは、自分の人生だけでなく社員たちの人生にも責任を持つことです。絶対に自分のことだけを考えていてはいけません。関係する人たちみんなでWin-Winになって初めて、ビジネスとして成り立つのです。

債権管理領域のDXプラットフォーム「Lecto」とは

ーー貴社の事業内容を教えてください。

小山裕:
主な事業は債権管理領域をDXする「Lectoプラットフォーム」の運営です。

債権管理業務の領域では、未だに電話や手紙でのアナログな対応が多く、対象者と円滑にコミュニケーションがとれない、納付が進まないなど、ストレスを感じる瞬間が多くあります。

また、債権管理は1件当たりの負担が大きい業務です。未払いがなければ本来発生しない業務なので、負担の大きさを不本意に思う会社も多いでしょう。

「Lectoプラットフォーム」はこのような現状を解決するために開発した、債権管理業務のオールインワンプラットフォームです。顧客情報のデータベース管理から交渉履歴の管理、自動督促機能、自動架電や回収状況の自動更新など、今まで人の手で行ってきた多くの部分を自動で対応します。

社員の負担を減らせるのはもちろん、社内リソースをよりサービスを良くしていくような業務に集中させることも可能になります。さらに債権回収率が改善すれば、資金の健全化にもつながるでしょう。

「Lecto」には業界を問わず債権管理業務の負担を減らせる可能性がある

ーー「Lectoプラットフォーム」を導入する強みは何ですか?

小山裕:
あらゆる業界の債権管理業務をデジタル化できることです。

今や債権管理業務は金融機関や信用機関だけの仕事ではありません。公共料金や携帯電話、インターネット、サブスクリプションサービスなど、さまざまな業界に大小さまざまなお金にまつわる課題があり業務の効率化や回収率の向上が求められています。

とはいえ特に「Lectoプラットフォーム」と相性が良いのは金融決済領域です。金融決済領域は典型的な「人」と「紙」の領域で、優先的にDXを図るべきだと考えています。業界の規模が大きいので、デジタル化に成功したときのインパクトは大きいでしょう。

ほかにも、払い忘れや延滞が多い公共料金やサブスクリプションサービスも「Lectoプラットフォーム」が活躍できる領域だと考えています。最近は、多くの方がスマートフォンを利用していますが、特に若い方であれば郵便や電話ではなく、メールやSMSのような連絡手段のほうが相性が良いですよね。そのため「Lectoプラットフォーム」は、メールやSMS、IVR(自動音声応答システム)など、多様な手段で督促できるようにしています。

ーー今後、注力したいテーマを教えてください。

小山裕:
新規取引先の開拓に注力したいと考えています。

現状、あいおいニッセイ同和損害保険株式などの大企業にもLectoプラットフォームを導入いただいていますが、力になれる企業はまだまだ潜在的に多く存在します。
「Lectoプラットフォーム」は組織の規模に関係なく導入可能なシステムなので、どんな企業にも債権管理業務の負担を減らせる手段があることを知ってほしいと思います。

そのためにも、既存取引の深耕に取り組み、紹介や反響につなげる必要があります。DXのメリットを、事業に良い影響を与えるレベルで提供し、デジタルの便利さを広めていきます。

求めているのは「自分らしく成長したい」人材

ーー貴社の雰囲気や求める人材像をお聞かせください。

小山裕:
弊社は大前提として個人の価値観の尊重を掲げています。TPOを守る必要はありますが、個々の表現や主張などは可能な限り自由であるべきだと思うので、自分の個性を発揮したい方に合うと考えています。

仕事のうえでは、自立性の高さとチームプレーの連携力を両立できることが求められます。個のスキルや能力をしっかり高め、自分の考えをしっかり持ったうえで、仲間と切磋琢磨してほしいですね。

採用の過程では会社や社員との価値観が合うことを大事にしています。ビジョンやミッションに共感いただけるのであれば、きっと良い協力関係を築けるでしょう。

弊社はまだスタートアップの段階です。これから多くの方のお役に立つためにも、弊社を信じて出資してくれている方々に報いていきたいと思います。ぜひ皆さんの力を貸してください。

編集後記

督促のように後ろめたいことをデジタルでそっと伝えてくれると、気持ちが楽になる。伝える側もそうだろう。デジタルは単なるリアルの代替ではなく心の負担を減らす役割も担えるのだ。きっと「Lecto」が広まった未来では、今より少し社会の摩擦が少ない世界になっていることだろう。

小山裕/音楽業界、三越伊勢丹グループ、KDDIグループへの参画などを経て、2017年にGardia株式会社を創業。飲食事業者などにおけるドタキャンに対する新しい保証事業や、後払い決済事業を軸に展開。2019年に同社を伊藤忠商事グループへのM&Aに導く。並行して一般社団法人Fintech協会とともにデジタル給与解禁に向けた各省庁との協議を推進。2020年末にGardia株式会社を退任し、新たにLecto株式会社を設立。