大末建設株式会社は、マンション建築と一般建築、リニューアルの3つを柱に事業を展開する会社だ。設立は1947年で、2024年3月時点での従業員数は595人。東京証券取引所プライム市場にも上場し、確かな実績を持つ。順風満帆に見える同社だが、代表取締役社長の村尾和則氏は社長就任とコロナ禍を同時期に経験し、現在に至るまで多くの苦難を乗り越えてきた。
大末建設が成長を続けられる理由とは一体何なのか。要因の1つでもある、村尾氏の「攻めの経営」について、詳しく聞いた。
社員たちの思いを守るため、プライム市場に残ることを決断
ーー入社の経緯や入社後の話を聞かせてください。
村尾和則:
私は近畿大学理工学部建築学科出身で、就職活動の当初は学校推薦で別の会社へ応募していました。しかし、その会社から面接結果に関する連絡がなかなか来ず、大学の先生に相談したところ、「大末建設もまだ募集しているよ」と言われ、受けることにしました。
実際に大末建設の面接を受けたら、採用担当者から「ほかの会社も受けているなら、断ってうちに来なさい」とその場で内定を出されたのです。非常に驚きましたが、採用担当者のその言葉に感動し、入社することを決めました。
入社後は、現場監督の仕事から始まりました。拘束時間は長く、仕事を覚えるのも大変で、最初はとても辛かったですね。ただ、一級建築士の資格を取得したことが自分の中で1つの自信になりました。それから会社を代表するプロジェクトを任されるようになり、所長に抜擢されたり、社長賞をもらったりしました。
建築物が完成するとやはり嬉しいですし、自分でスケジュールを立てて人を動かすことの面白みにも気づくようになり、仕事がどんどん楽しくなりましたね。
ーー社長に就任してからは、どのようなことに取り組みましたか。
村尾和則:
社長就任とコロナ禍が同時期だったので、やはり大変でした。また、東証の市場再編が行われ、このときに弊社はプライム市場へ残るという大きな決断をしました。
残るという選択をしたのは、「自分は東証一部に上場している会社に入った」という社員たちの自信を壊したくなかったから。そして、これから入社する新卒の中にも「東証プライム市場に上場している会社に入社したい」という人がたくさんいると思ったからです。
プライム市場に残るための基準を無事にクリアでき、社長就任時に立てた「2030年までに売上高1,000億円を達成する」という目標も、あと1〜2年でクリアできそうなところまできています。
ベトナムの大手IT企業と協力して社内のDXをスタート
ーー事業内容や取り組みについて教えてください。
村尾和則:
弊社は、特にマンションの施工で高い評価を受けている建設会社です。この分野に関しては、今後、確固たる地位を築きたいと思っています。
新たな取り組みとしては、ベトナムのIT企業最大手であるFPT社協力のもと、『DXS』という弊社独自のDXシステムを開発し、2024年4月から本格稼働しています。
これは業務の作業効率を上げること、社員たちが働きやすい環境をつくることを目的としています。たとえば同システムには、即時概算見積もりの機能が付いています。この機能により、見積書を作成するスピードが格段に上がり、お客様との商談中にその場で見積もりを提示できるようになりました。
そのほかの取り組みとして、15年前に撤退した土木事業に再参入しました。昨年土木会社2社をM&Aで取得し、今後もしっかりと事業を拡大していければと思っています。
一歩先への挑戦が積み重なることで会社の前進につながる
ーーどのような社員教育を行っていますか。
村尾和則:
入社から3年目までの社員には、特に手厚い研修制度を用意しています。6ヶ月ごとに集合研修を開催し、基礎知識習得や技術面での研修を行います。
若手社員には、個人別のスキルシートにより、目標をクリアできたらスキルレベルが上がったとみなされる仕組みがあるので、それぞれの社員が自分の今の立ち位置を明確に理解できます。
全社員対象の職位別、職種別の研修も実施しています。最近はeラーニングも導入し、より自己啓発にも取り組める環境を作っています。
ーー最後に、社員に期待することを教えてください。
村尾和則:
社員に期待するのは、技術力を磨く努力をし続けることです。社員が能力を上げられるよう、最大限の支援をしたいと思っています。
また、考えたり口で言うよりも、まずは行動することを意識してほしいです。「他人よりも一歩先のことに挑戦する」という考え方が大切です。その一歩先が二歩先につながり、最終的には会社の前進につながっていきますから。
たとえ失敗しても私やほかの社員が必ずフォローするので、特に若手の方々には積極的にチャレンジしてもらえたらと思います。
編集後記
村尾社長は今後、海外進出や、誰もが知るような日本の中心となる建築物の建設にも挑戦してみたいという。DXの推進や土木事業への再参入など、次々に挑戦してきた村尾社長。村尾社長が結果を出し続けられる背景には、現場監督からの叩き上げで上りつめた経験はもちろん、失敗を恐れない攻めの姿勢もあると感じた。
村尾和則/1988年、近畿大学を卒業後、大末建設株式会社に入社。大阪本店工事部長、大阪本店長、東京本店長を経て、2020年に同社代表取締役社長に就任。