※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

浄化槽や産業排水処理など、「水」に関連した事業を軸に展開する株式会社ダイキアクシス。衛生陶器の専門店として始めた事業が、住宅機器関連、太陽光や風力などの再生可能エネルギー関連、さらには家庭用飲料水事業にまで拡大し、世界の環境問題解決へ貢献している。創業から65周年の節目となるタイミングに3代目社長として就任した大亀裕貴氏。社会人4年目にして役員、31歳という若さで代表取締役社長に就いた同氏の当時の心境や、困難の乗り越え方、今後の会社としての展望について話をうかがった。

ザンビアでの体験を原動力に、不撓不屈の精神で大役を乗り越える

ーー学生時代で印象に残っているエピソードはありますか?

大亀裕貴:
中学校まで愛媛で育ち、親の勧めで海外の高校に進学しました。スイスの学校で3年間、ボランティアトリップなどのプログラムを通して多くの国へ行く機会があったのですが、その中で最も自分の人生に影響を与えた国が、アフリカ大陸にあるザンビアでした。

水道・電気などのインフラが整備されておらず、生活水準が低い中でも、非常に幸せそうに暮らしている人々の姿を見て、自分たちの生活とのギャップを強く感じたことをよく覚えています。広大な土地や空と、そこで生活する人々のあたたかさに触れ、「途上国や新興国の成長に寄与できるような仕事をしたい」と強く思うようになり、それが今でも私の原動力となっています。

ーーその後、どのような経緯でダイキアクシスに入社されたのでしょうか?

大亀裕貴:
高校卒業後は帰国し、早稲田大学に進学します。いずれは家業である弊社に入るのだろうと思っていたため、社会人としての経験を積むべく他企業への就職を検討しました。海外で日本企業の製品が活躍しているのを見て「自分の手で日本製品を売ってみたい」という思いがあったことから、総合電機メーカーである日立製作所にて、約2年間電力系の事業部で営業を務めました。

2018年に弊社へ入社し、海外営業を経験した後、2019年に取締役常務執行役員に任命されました。社会人4年目で、経営の知識も経験もありませんでしたから、当時900名程度の上場企業の役員に就くことには不安とプレッシャーは大きかったですね。それでも、任せていただけるのは幸せなことであり、「せっかくだから精一杯やろう」と自分を奮い立たせ、就任に至ります。

ーー2022年にはさらに専務取締役という大命を任せられ、多くの苦労があったかと思いますが、どのように乗り越えたのですか?

大亀裕貴:
最初は社長室の中に採用・教育・ITシステムの部門を入れて、私が統括する立場になりました。経験も年齢も私より上の方々が部下として就く形でしたので、最初は何もわからないながらも、現場で先輩社員の方たちと一緒に会社のことを理解していき、必要な力を身に着け、「不撓不屈の精神」で乗り越えてきました。

その後コロナ禍の影響を受け、海外出張などもストップしていたため、このタイミングを機にずっと憧れていたMBAの取得に励み、自分に足りていない経営全体の知識を補うことにいそしみました。

「環境を守る。未来を変える。」65年間守り続けてきた思い

ーー貴社が大切にされている考え方を教えてください。

大亀裕貴:
弊社では環境機器・住宅機器・再生可能エネルギー・家庭用飲料水の4つの事業を幅広く展開しています。全ての事業に共通しているのは、「世界の環境課題を技術とアイデアで解決し、世界の人々の生活を支える」というパーパスに基づいていることです。創業以来、この環境貢献を軸に事業を広げ続け、昨年無事に65周年を迎えることができました。

ーー65周年を機に理念体制を見直し、「PROTECT×CHANGE」を改めて企業スピリットとして制定されていますね。

大亀裕貴:
「PROTECT×CHANGE」には、企業姿勢である「守るべきものは守り、変えるべきものは変える」という思いが込められています。長い歴史の中で築いてきたすばらしい文化は守りながらも、時代に沿った働き方や新しい考え方に改めていく精神が重要です。

そのスピリットに沿った動きとして、最近では内定者研修を改善しました。2019年から内定者には、インドネシアのバリ島で1週間程度のプログラムに取り組んでもらっています。

バリ島といえばリゾート地のイメージが強いのですが、開発の裏側ではゴミ山や排水の垂れ流しなど、大きな環境問題に直面しています。そうした一面も見た後に、「ダイキアクシスの製品を使って現地にどう貢献できるか」といったプレゼンテーションをしてもらいます。そうすることで事業の意義を自分ごととして捉え、入社後にどう取り組んでいくかをしっかりと考えられるようになります。

これまでは入社してからの研修後の退職率が高い傾向にありました。入社前にこうした経験をともにすることで内定者同士の横のつながりを強めることもできます。さらに、入社後は2ヵ月間、松山本社の部署をひと通り経験することで、各部門への配属後も、部署を越えて仕事の相談や依頼をしやすい環境に変えることができたと感じています。

海外進出を加速し、世界の環境課題を解決できる企業へ

ーー浄化槽設備の海外進出も果たされていますが、今後のご展望をお聞かせください。

大亀裕貴:
本格的に海外進出を始めたのが2013年で、弊社が東証二部に上場したタイミングでした。人口減少による日本市場縮小の可能性から、海外に目を付けた当時の経営陣の意思決定により、インドネシアの工場を買収したことがきっかけです。

現在はインドネシア・インド・スリランカ・バングラディシュ・シンガポールの6カ国に現地法人を設けていますが、水関係のインフラが整備されていない環境ではそもそも「浄化槽」という設備のメリットを感じてもらいにくいことが課題でした。

日本でも高度経済成長期に公害などの問題が起きてから、規制が進んで浄化槽法ができたことで、国としてルールが確立されていきました。日本が経験してきたそうした背景を海外の政府にプレゼンしていくことで、水環境整備のルール作りの必要性がようやく理解されてきた段階です。

今後は各国での事業基盤をしっかりと固めて利益を出せる状態にし、将来的には中東やアフリカの市場に展開していきたいと考えています。世界でも活躍し、「環境課題解決といえばダイキアクシス」といわれるような、日本を代表する企業を目指してまいります。

編集後記

31歳という若さながら、どんな困難に直面しても自身の経験を最大限活用しながら突き進む大亀社長。同氏の活躍が会社にとって新たな風を起こし、世界の環境問題を解決に導いていくことだろう。同社の新しいチャレンジや、世界の環境課題への取り組みはますます注目されるだろう。

大亀裕貴/1992年生まれ、愛媛県出身。2016年早稲田大学国際教養部卒業、2023年早稲田大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。株式会社日立製作所での勤務を経て、2018年に株式会社ダイキアクシスに入社。海外営業、取締役常務執行役員 社長室長、専務取締役などを経て、2024年より代表取締役社長に就任。