※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

人々の生活に革命を起こしたロボット掃除機「ルンバ」を手がけるアメリカのiRobot(アイロボット)社。その日本法人であるアイロボットジャパン合同会社は、ロボット掃除機などの生活に役立つロボットを日本でより身近な存在にするべく、日々奮闘している。

業界の第一線で活躍を続ける会社の強さの理由とは、一体何なのか。代表執行役員社長の挽野元氏に、同社の強みや今後の展望を聞いた。

周囲の人々との縁に恵まれたおかげで新しい世界につながれた

ーーまずは社長の経歴を教えていただけますか。

挽野元:
新卒から20年ほど米国カリフォルニア州に本拠地があるヒューレット・パッカード社に勤め、その中で3年ほどパーソナルコンピューターの事業拠点があるフランスに駐在しました。初めて日本以外の国で働く機会を与えてもらい、苦労も多々ありましたが、学ぶこともたくさんありましたね。

その後、ご縁がありボーズ日本法人代表を務めたのち、2017年にアイロボットジャパン合同会社の代表執行役員社長に就任しました。当時、日本での販売は代理店が手がけていましたが、アメリカのiRobot社が日本法人を設立するという話があり、私に声がかかったのです。

アイロボットへ入ることになったのも、まさにご縁だったと感じています。今まで私は周りの人に恵まれ、若いときに沢山の挑戦や経験ができました。若い人にもいろいろと挑戦してほしいと強く思っています。

創業よりAIに注目。ロボット一筋の研究者集団

ーー貴社の強みはどういった点にありますか。

挽野元:
iRobotは1990年代からAIに注目し、AIを活用してロボットと人間の共存に注目してきた研究者集団です。創業からロボット一筋な点が大きな強みです。

ロボットに対する思いが世界一強い会社だと言っても過言ではなく、ハードとソフトを組み合わせて、いかに人間が便利で豊かな暮らしができるかを日々追求し続けています。

私どもの代表製品には、ロボット掃除機の代名詞「ルンバ」があります。ルンバは世界で5000万台、日本で600万台ほどの累計出荷を達成しており、ロボット掃除機のイノベーションではナンバーワンプレイヤーだと言えます。

世界中の各家庭で利用されている2500万台ほどのルンバのデータは吸い上げられ、使えば使うほど賢くなるのが強みです。他社製品と形は似ていても、賢さは段違いだと自負しています。

ーー製品の普及率について聞かせてください。

挽野元:
ルンバを含む弊社のロボット掃除機の全国世帯普及率は、およそ10%です。普及率をより上げるためには、行動変容を促すことが重要だと考えています。

たとえば毛が抜け落ちるペットを飼っている方は、自分で掃除をするよりロボットに任せたほうが散歩の間に自動で掃除ができ、回数も楽に増やせるため早く綺麗になるでしょう。また、小さな子どもがいる家庭だと、赤ちゃんが床を舐めてしまうのではないかといった心配が絶えないと思います。床をいつも綺麗にしておきたい方は、自分でモップをかけるよりロボットを使ったほうが効率的です。

こういった動機付けから、行動変容を促していくことが大切だと考えています。

ーー製品の開発・販売以外には、どういったことを手がけていますか。

挽野元:
「ロボットスマートプラン+」というサブスクリプションサービスを手がけています。ユーザーは月額980円からルンバなどのロボット掃除機を利用でき、このサービスで「ロボット掃除機は高価だから買えない」、「サイズや動作音などが家に合うかどうか不安」という検討層の入口を広げました。

そのほか、クリーンベース(自動ごみ収集機)付き製品で初の5万円台のモデルを開発し、家庭に馴染むようにカラーも今までのブラック系だけでなく、ホワイト系の製品をラインナップしました。スケールメリットを活かしつつ部材コストを見直しながら、品質も担保できるように日々取り組んでいるところです。

さらに、フラッグシップモデルとして水拭き用のパッドの自動洗浄機能が付いたルンバを初めて開発しました。水拭きも自動ごみ収集もできる製品で、掃除に徹底的に投資したい人向けにすべてを詰め込んだ製品となっています。

ロボット掃除機を普及し「一家に一台」を当たり前に

ーー今後の展望や求める人材像についてお聞かせください。

挽野元:
一つは、取引先と協業して普及率を増加させることです。そして、いずれはロボット掃除機が一家に一台あるのが当たり前の状況にしたいですね。最近はサブスク希望者も増加しているので、購入してもらうだけでなく、レンタルという形で使う体験も広げながらビジネスを展開していきたいと考えています。

また、お客様は実店舗とオンラインのどちらも利用して購入を検討するので、この実店舗とオンラインの動線をしっかりとつなげていく必要があるでしょう。そのほか、物流コストの削減や倉庫の最適化、サービスレベルの見直しなども重要な課題であり、エコの観点からパッケージを簡素化し、梱包材の環境配慮にも注力したいと考えています。

求める人材像は、自分なりの仕事の仕方や価値観を持っている人でしょうか。人々の生活をより豊かにするという弊社の価値観に共感したうえで、一緒に働いてもらえると嬉しいですね。

編集後記

挽野社長は「一番大切なのは、個々の強みを見出して後押しすること。社員たちに『アイロボットで働いて良かった』という所属する喜びを感じてもらうことが大切」と語った。

これからさらにイノベーションを推進し、人々にロボット掃除機を身近に感じてもらえるように尽力すると話す挽野社長。すでに多くの人の生活を豊かにしている同社だが、新たにどのような取り組みを行うのか、進化が楽しみだ。

挽野元/1967年、神奈川県生まれ。日本ヒューレット・パッカード株式会社の取締役執行役員イメージング・プリンティング事業統括、ボーズ株式会社の代表取締役社長を経て、2017年にアイロボットジャパン合同会社を設立。代表執行役員社長に就任し、日本国内の企業活動の総指揮を執る。2018年からは米アイロボット・コーポレーションのアジア太平洋地域統括副社長を兼任し、製品ならびにサブスクリプションサービス「ロボットスマートプラン+」、などアイロボットブランドのさらなる成長を主導。