今、ダンボールが面白い。ダンボールは9割を超えるリサイクル率を誇り、SDGsが掲げられるよりも、ずっと前から持続可能性の優等生だった。現在、ダンボールは新しい技術のもとで目覚ましい進化を遂げ、その用途を拡大している。
京都に拠点を置く株式会社ケイジパックは、ISO9001・ISO14001を取得し、環境に配慮する意識をいち早く持つとともに、高度な技術とサービス精神でダンボール製造の最前線を走ってきた。時代の風を読み、自らを新しく更新し続ける持続可能型企業、ケイジパックの代表取締役である八木修二氏の話をうかがった。
リーマンショック前夜の社長就任
ーー会社の創業と社長就任の経緯を教えてください。
八木修二:
前職もダンボールメーカーに勤めていましたが、1989年、その営業部の7名が独立し、起業したのがケイジパックです。私は、社長として2代目にあたります。当初は常務でしたが、2008年、先代が急逝し、社長に就任しました。実はその直後にリーマンショックが起き、売上が激減して大変苦労しました。
ーー社長就任直後の困難をどのように乗り切ったのですか?
八木修二:
お客様を一番に考え、顧客離れが起こらないように、皆で取り組みました。世間には不安感が広がっていたため、まずはその不安を払拭する必要がありました。弊社は当時、商社的な機能がメインだったので、まずは信用していただくためにサプライヤーの確保に奔走しました。
その結果、お客様を大切にする姿勢が信用につながり、ひいては歴史的な大不況を乗り越える力になりました。顧客満足度を高めるためには、各担当者がお客様に人として愛されること、かわいがっていただくことが重要です。今はコミュニケーションのあり方も変わってきましたが、お客様に寄り添う姿勢はいつの時代でも大切だと思っています。
地域のお客様に「短納期・小ロット」そして「高品質」を
ーー会社の強みやこだわりを教えてください。
八木修二:
まずは、短納期・小ロットですね。小ロット印刷、1枚からの印刷、1枚からの型抜きなど、これらはなかなか他社ではできないと思います。さらに、そこに高度な印刷を施すことができます。前の会社からの技術の蓄積もあるので、他業者には対応が難しいことも積極的にやってきました。あとは、やはりスピードを重視しています。社員教育でも、「フットワークを軽く、速く」ということは伝えています。
働き方改革で2024年に、ドライバーの労働時間に上限が課され、物流業界も大きく変わりました。弊社でも昔は朝早く出社して1日中、外回り営業を行い、夜は事務作業という長時間労働が当たり前でした。国の規制というきっかけもあり、現状を改善するために人員を確保し、営業と事務の作業を分担して社員一人ひとりにかかる負担を軽減する取り組みを行いました。
今は弊社では大半が自社配達なので、地元でつくって遠方へ持っていっても間に合いません。全国ネットの会社もありますが、私たちの納品先は約9割が地元のお客様です。地域に密着して、小回りが利くサービスを手がけること。さらに、短納期で1点から、それぞれのお客様に合わせた高品質なサービスを提供することが強みです。
ダンボール業界は、あらゆる業種と関わります。お客様の業種・業態はさまざまですが、それをまったく知らない状態では営業はできません。視野を広く持って商機を捉え、お客様のニーズに対応することを心がけています。
「Re-board®」による攻めの商品展開
ーー環境対応への思いを聞かせてください。
八木修二:
創業時からパナソニックと取引があり、その影響もあって環境対応には敏感になりました。これからは環境対応、再生利用の時代だという考えから、2003年にISO9001、2004年にISO14001を取得しました。ダンボールは時代に即応した環境対応の製品であり、大きなビジネスチャンスがある分野だと認識しています。
ーーおすすめの商品は何でしょうか?
八木修二:
「Re-board®」というスウェーデン生まれの高品質なダンボールです。近くで見てもダンボールだとはわからない硬い質感で、店頭、イベント時の道具やパネル、スタンドなど幅広い用途に使えます。コンパクトに折りたためて持ち運びにも向く軽さで、最後は紙として処分できます。コロナ禍では、PCR検査などの簡易検査ブースで大活躍しました。デザイン性も高く、プリントを施したり、木目調の家具そっくりにつくったり、メタリックな質感にしたりすることもできます。たとえば、人の顔をスマホで撮って、載せることも可能です。
「Re-board®」は化学をベースにした素材と高いクオリティで、ダンボールの可能性を大きく広げるものですが、製作技術を持つ会社はまだ少数です。弊社では、この「Re-board®」は1点の極小ロットから大ロットまで受注でき、営業担当と打ち合わせをして企画・設計に取り組み、製作しています。
ーー今後の展望を教えてください。
八木修二:
「Re-board®」を、どんどん広めていきたいですね。ちょっとした小道具としても非常に活用しやすく、テレビやYouTube、個人撮影のシーンなどに最適な素材です。また、アニメのキャラクターを表現した立体物やパネルなども、私たちの技術で非常にレベルの高いものがつくれます。以前、嵯峨美術大学との産学連携授業で、生活プロダクト領域での「Re-board®」のワークショップも行いました。今後はこういった分野へも意欲的に展開しながら、他社との差別化につながる商品を増やしていきたいと考えています。
編集後記
京都には、古くからものづくりの土壌がある。この土地で創業した株式会社ケイジパックは、まさに職人技ともいえる高い技術を活かし、「短納期・小ロット」の困難なサービスを実現してきた。新質感ダンボール「Re-board®」の柔軟な製造も、この実力に支えられている。環境対応という広い視野のもと、地域に根差してまい進するケイジパックは、これからも物流業界の変革を牽引していくだろう。
八木修二/1951年生まれ。京都府立山城高等学校を卒業。同業他社を経て1989年、株式会社ケイジパックを設立し、常務に就任。2008年、社長に就任。業界への深い知見と地域に根差した営業で積極的に事業を展開している。