※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

1903年に東京団扇合名会社として創業し、90周年を機に現在の社名となった株式会社トーダン。うちわからカレンダーへと、ものづくりのメインとなる商材を変えた企業の歩みを、代表取締役社長の強口邦雄氏にうかがった。

事業は「生活文化創造」。うちわ製造から始まった企業の歴史

ーー貴社の事業について教えてください。

強口邦雄:
事業内容は「カレンダー製造」ではなく「生活文化創造」を謳っています。カレンダーは芸術的なものから実用的なものまでさまざまなものを扱っていますが、「生活に浸透するアイテムを作る」というテーマが弊社の根幹にあります。

トーダンはうちわ製造会社の子会社としてスタートしました。「新しい時代に合ううちわを作ろう」ということで、親会社の創業者・横山良八が社長を兼ねていたのです。昔のうちわは企業名などを入れて広告宣伝に使われることが多く、最盛期の生産数は400万本にも及びました。

扇風機やエアコンが普及し、広告宣伝物としての役割も減る中で、閑散期対策に作り始めたのがカレンダーです。次第にカレンダー製造がメインとなり、現在は売上の9割以上を占めています。

「スケジュール管理」から「文化創造」のカレンダーへ

ーー幅広い商品を作り始めたきっかけを教えてください。

強口邦雄:
年末年始のご挨拶にカレンダーを贈る文化は薄れつつあります。カレンダーの原点について考えたところ、現代ではスケジュール管理に使われるカレンダーは、もともと「げん担ぎの道具」だったことを知ったのです。大安や仏滅などの縁起の良い日や注意するべき日を確認する道具なので、江戸時代のカレンダーには予定を書くメモ欄がありませんでした。

縁起の良い日や注意するべき日を確認するという原点に帰った結果、金運・開運カレンダーといったヒット商品が生まれました。古臭い・怪しいと感じる方もいると思いますが、12星座などの統計学にもとづく天文学を取り入れた、科学的なカレンダーです。星の位置や月の満ち欠けと過去の出来事を統計したデータベースを参考に、縁起の良い日や注意するべき日を示しています。

ーー商品のターゲットはどのように決めていますか?

強口邦雄:
SNSを活用する人が増え、どんどん変わっていく時代を生き抜く方法として、「文化に関わるものをアナログで表現すること」が大事だと気付きました。生活に溶け込む形で文化を商品化する過程でターゲットが明確になり、時代に合わせた柔軟な対応が可能となっています。

ご縁があって「ディズニー/日めくりカレンダー」や「刀剣乱舞ONLINEカレンダー」といった人気ジャンルの商品も企画していますが、流行を追いかけるよりも「流行を作り出す」という視点を心がけています。

2023年に発売した「金運ポケットカレンダー」には「いつでも持ち歩きたくなる」というコンセプトがあり、私自身の「あったらいいな」という思いから作りました。今の時代はいろいろなものがコンパクトになっているので、ポケットサイズのカレンダーも新しい文化を作っていく商品だと考えています。

「日本の伝統」を守りたい。自社ブランド発足へ

ーー自社ブランド「東団や」の開発経緯もうかがえますか。

強口邦雄:
日本には全国各地に民芸品があり、特に縁起物が豊富です。だるま・おたふく・招き猫・えびすさまなど、昔ながらの縁起物をカレンダーで紹介する取り組みに始まり、温故知新ともいえる、伝統品を今風にデザインした商品を展開するようになりました。金運カレンダーの八卦鏡を描いた「金運だるまさん」はブランドを代表する商品です。

特産地としては300円程度のだるまが販売されていますが、職人や後継者が不足している民芸品を守るためにも、日本の文化の価値を上げていくべきだと考えています。

インバウンド向けのお土産ショップでは、300円のだるまよりも2500円のだるまが売れます。記念品ということで高価な方を選ぶ人が多いのです。実際にそれだけの価値がある文化なので、自信を持ってプレミアムな商品を提供していき、国力を上げていく流れを望んでいます。

編集後記

デジタル化という時代の流れにも動じず、独自の視点でカレンダーに付加価値をつけてきたトーダン。5代目として会社を受け継いだ強口社長は、さらに時代の先を見据え、日本文化の衰退を憂いている。ものづくりの枠組みにとらわれないトーダンの取り組みは、あらゆる業界にポジティブな影響を与えることだろう。

強口邦雄/1950年生まれ。1974年に慶應義塾大学工学部管理工学科を卒業。1976年に株式会社東団へ入社。1985年、株式会社トーダン代表取締役社長に就任。