※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

フローリング業界で独自の地位を築く株式会社イクタ。1870年に建築資材店として創業し、主に建築資材の受託製造を行っていたが、2004年に自社ブランド製品の展開に転換した。業界ではシートフローリングが大半を占める中、同社の製品は天然木の製品が7割を占める。高付加価値製品の開発にも力を入れ、抗菌効果のある「エアー・ウォッシュ・フローリング」など、市場のニーズを先取りする同社。

154年の歴史を持つ同社が目指す200年企業への道のりと、フローリング業界でのブランド構築への想いについて、代表取締役社長の宮田浩史氏に話をうかがった。

受託生産から自社ブランドへの転換が大きな転機に

ーー貴社の事業内容を教えてください。

宮田浩史:
弊社は1962年から2004年まで、OEM生産(他社ブランドの製品を製造すること)を主として事業を展開してきました。フローリング製造の裏方として長年培ってきた技術を基盤に、2004年からは自社ブランド製品も展開しています。

OEMから自社ブランドへの転換は大きな挑戦でした。長年、他社の指示に従って製造していた弊社にとって、自ら企画・開発・販売まで手がけることは、未知の領域だったのです。しかし、この決断が会社の転機となりました。

ーー現在の市場での立ち位置はいかがでしょうか?

宮田浩史:
現在、弊社は市場シェアの7〜8%程度を占めています。業界の特徴として、シートフローリングが市場の約7割を占める中、弊社は逆の戦略をとっています。つまり、7割が天然木を使用した製品で、3割がシート製品という構成です。本物志向の製品によって、独自のポジションを確立できました。

当初、この戦略は社内でも懐疑的で、「高級路線で本当に売れるのか」という不安の声もありました。しかし、製品を出してみると、本物の良さを求めるお客様から高い評価をいただいたのです。特に、木の温もりや香りを大切にする方々から支持を得られたことは大きな自信につながりました。

床から世の中を変える意識で新たな製品を開発

ーー入社後、印象的だったエピソードを教えてください。

宮田浩史:
入社当初は、工場と営業の連携が十分ではないと感じていました。アイディアを提案しても、工場側にはなかなか受け入れられない状況だったのです。そこで私は、社員間の仲を深めるために、一緒に食事へ行ったり、私のやりたいことを積極的に伝えたりしました。

それと並行して、粘り強く製品開発を進めた結果、ヒット商品が生まれたのです。この出来事をきっかけに、社内の雰囲気が「まずは挑戦してみよう」という方向に変化していきました。

ーー具体的には、どのように商品開発を進めているのでしょうか?

宮田浩史:
毎月、進捗会議を開き、2時間半ほどかけて商品開発の方向性やアイディアについて情報共有しています。床から世の中を変えていこうという意識で、参加者が自由に意見を述べる会議です。デザインアンドイノベーションを掲げて、会社をあげて新しい製品を追求しています。

異業種との交流で、選ばれるブランドを育む

ーー社長として大切にされている考えを教えてください。

宮田浩史:
大切にしていることは、異業種との交流です。いろいろな人と会話することが非常に重要だと考えています。たとえば、家電メーカーや自動車メーカー、通販会社など、別の業界の人と話をして各業界のトレンドや課題を知ることで、私たちの業界にも活かせるアイディアが生まれるんです。

異業種との交流は、以前テレビ局に勤めていた頃からずっと実践しています。他の業界にこそアイディアがあるはずなので、さまざまな方々との出会いは面白いですね。

ーー今後の展望をお聞かせください。

宮田浩史:
当面の目標は、フローリング業界で選ばれるブランドになることです。たとえば、鞄の世界ではルイ・ヴィトンやシャネルのように、ブランド名だけで価値が認められる存在がありますよね。選ばれるためには顧客のニーズを深く理解し、それに応える製品を開発することが重要です。

弊社ではこれまで、自社の技術を基につくりたい製品を製造し、それから販売先を考えていたのですが、現在は消費者のニーズを重視する製品開発に転換しました。これからも良い製品をつくるだけでなく、お客様に選ばれる“理由”を追求していきます。

弊社は今年で154年目を迎えましたが、創業200年を目指したいですね。環境に配慮した製品開発や、新しい製品の提案を行いながら、常に業界の一歩先を行く存在でありたいと考えています。

編集後記

宮田社長の言葉からは、業界の常識に囚われない柔軟な思考と、社員一人ひとりの可能性を信じる姿勢が感じられた。154年の歴史を持つ企業が、なお挑戦を続ける姿勢は、他の企業にとっても大いに参考になるだろう。フローリングを通じて、人々の暮らしに寄り添い続ける同社の今後の展開に、より一層の期待が高まる。

宮田浩史/1977年生まれ、愛知県出身。愛知学院大学を卒業後、中京テレビ放送に入社し、11年間テレビ業界に携わる。2012年に株式会社イクタに入社し、2016年に代表取締役専務、2019年に代表取締役社長に就任。ツヤなしフローリングの「ラスティック」シリーズをはじめ、画期的なフローリングを多数開発。