岐阜県に本社を構える藤井ハウス産業株式会社は、130台以上の木工機械を駆使し、木材加工のプロフェッショナルとして地位を確立している。特筆すべき点は、同社が展開しているECサイト「木材加工.com」である。
オーダーメイドの木材加工をオンラインで受注し、2D・3D表示機能で加工イメージを可視化するサービスは、個人から業者まで幅広い支持を受けている。今回は木材の可能性を追求し続ける、同社代表取締役社長の藤井博美氏と専務取締役の卯田貴大氏に、会社の強みや未来への展望についてお話をうかがった。
幼少の頃から親しんできた木材への使命
ーーまずは藤井社長が木材業界に携わるようになったきっかけをお聞かせください。
藤井博美:
私が木材業界と関わるようになったのは、小学生のころからです。家業だったので、朝早くから仕事を手伝っていた記憶があります。高校生のときには工場建設にも参加し、溶接作業なども経験しました。大学卒業後は自然な流れで入社しましたが、どこかあきらめにも近い気持ちもありました。当時は跡を継ぐことが当たり前の時代でしたからね。
この業界に入ることは必然的でしたが、それでも嫌になったことはありません。入社してからは製造や営業など、さまざまな部署を経験しました。1994年に社長に就任してからは30年近く、会社を運営しています。
ーー社長就任後、どのようなことを大切にされていますか?
藤井博美:
私が大切にしているのは「負けて勝ち取れ」という言葉です。これは社訓にもしている言葉で、失敗を恐れずにチャレンジし続けることの大切さを表しています。たとえ失敗しても、そこから学びを得て次につなげることができればそれは「勝ち」といえるでしょう。
会社経営においては、従業員と取引先に迷惑をかけないことを大切にしています。円滑な経営には、従業員や取引先との良好な関係構築が欠かせませんからね。シンプルですが、これらが私の経営方針の基本となっています。
東海三県を中心に広がる木材ソリューション
ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。
卯田貴大:
弊社の事業は大きく分けて3つあり、木材加工事業、建築事業、そしてEC事業です。なかでも特徴的なものは、ECサイト「木材加工.com(https://www.mokuzaikako.com)」の展開ですね。このサイトでは、オーダーメイドの木材加工をオンラインで受注し、個人から業者まで幅広い顧客ニーズに応えています。単価の自動見積もり機能や、2D・3Dでの加工形状表示機能を備え、お客様が指示した加工のイメージを把握できるようにしているのです。
当初は一般向けに立ち上げましたが、実際には半分が個人で、半分が大工さんや建築関係の業者さんです。個人のお客様からは、棚板や収納家具の製作、音響スピーカーの製作など、多様なニーズがありますね。業者の方からは、キャンピングカーの内装など、特殊な注文もいただいています。
また、弊社の強みは、130台以上の木工機械を駆使した多様な加工技術です。木材の製材から加工、建築まで一貫して手がける体制を整えています。主に近隣の東海三県を中心に事業を展開しているので、自社で配達ができるのも強みといえるでしょう。
ーー社員に向けて、どのような取り組みを行っていますか?
卯田貴大:
社員の働きやすさに配慮し、健康診断や手当、お祝い制度の充実、育児・介護休暇の整備など、福利厚生の充実に力を入れています。また、人材育成にも注力しており、研修制度や資格取得支援、社内勉強会なども実施しています。
たとえば、先月は長野県で行われた木材市場のセリに経験の浅い社員と同行し、私が木材をセリ落とす様子を見てもらいました。また、東京ビッグサイトでの大規模展示会などにも社員と同行し、お客様へ製品説明する経験を積んだり、木材業界の動向を学ぶ機会を設けています。
養老から全国へ、次世代につなぐ木材の可能性
ーー求める人材像と、採用の取り組みについて教えてください。
卯田貴大:
私たちが求めているのは、コミュニケーション能力が高く、自主的に動ける人材です。特に、オーダーメイドで製品をつくる会社なので、一つひとつの要望を正確に聞きとり、それを形にできる能力が重要です。
また、プロとしての視点を持って適切な提案ができる人材だと嬉しいですね。実務を通してさまざまな経験を積み、「もう少し厚みを増した方がいい」とか「こういう加工をした方がいい」といった提案ができるようになってもらいたいと考えています。
採用活動では、最近はSNSを活用した情報発信にも力を入れています。社員のアイデアを取り入れ、Instagram(※1)やTikTok(※2)などを使った採用活動を始めました。正確に情報発信し、弊社に本当にマッチした人に来てもらいたいと考えています。
藤井博美:
弊社は、木材やものづくり、建築に興味がある方を歓迎します。ただし、単に技術を追い求めるだけでなく、正しい心構えで日々の業務に取り組む姿勢も重要です。健康で真面目に仕事をしてくれる人であればぜひお会いしたいですね。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
卯田貴大:
今後の展望としては、まずネットショップのリニューアルを計画しています。さらに既存の木材加工事業と建築事業では、お互いの事業内容をPRして総合力をアピールし、売上アップを目指していきます。また、大規模な展示会に出展することで、地域密着で行ってきた事業を全国的にPRし、新たな市場も開拓したいですね。
さらに、7月(2024年)に会社のコーポレートサイトをリニューアルしたことで、採用の強化にも力を入れていきます。働きやすい環境整備も進め、弊社で働きたいと思う人を増やしていく考えです。
藤井博美:
「養老から人と地域を想うものづくり」というコンセプトを大切にし、これからも木材加工を通じて脱炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています。地域社会の健全な発展に尽くすという使命を胸に、木材の新たな可能性を模索しながら今後も挑戦を続けてまいります。
(※1)藤井ハウス産業株式会社 公式インスタグラム
(※2)藤井ハウス産業株式会社 公式TikTok
編集後記
取材を通じて、藤井ハウス産業の木材への情熱と技術力の高さに感銘を受けた。特に印象的だったのは、伝統的な技術と最新のデジタル技術を融合させた事業展開である。ECサイトの運営やSNSの活用など、時代の変化に柔軟に対応する姿勢が感じられた。人材育成にも力を入れており、社員の意見を積極的に取り入れる風通しの良さもある。木材産業の未来を担う企業として、今後の展開が非常に楽しみである。
藤井博美/1952年、岐阜県生まれ。愛知学院大学卒業後、藤井ハウス産業株式会社へ入社。1994年、代表取締役社長に就任。
卯田貴大/神奈川県出身。慶應義塾大学卒業後、大手監査法人での会計監査業務に従事し、2008年に藤井ハウス産業株式会社へ入社、現在に至る。