※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

コロナ禍で危機に直面した飲食業界では、エンターテインメント要素を取り入れ、新たな集客方法の活路を模索している。そんな中、23年にわたり忍者をコンセプトにしたレストラン事業を展開しているのが、株式会社ウィルプランニングだ。

忍者をテーマにした理由や料理へのこだわり、海外展開などについて、代表取締役の横川毅氏にうかがった。

エンターテインメント✕レストランという新たな地位を確立

ーーまず貴社の事業内容についてお聞かせください。

横川毅:
忍者をテーマにしたレストランを運営しています。2001年に東京・赤坂で1号店をオープンして以来、23年間にわたってこの事業を展開してきました。

忍者をコンセプトにすることで空間全体で体験を提供でき、国籍や年齢を問わず楽しんでいただけます。さらに忍者は、世界中の人が知っているという知名度と普遍性がありながら、特定のキャラクターが存在するわけではありません。

そのため自由な発想で世界観を創造し、お客様に驚きと感動を提供できるのです。わざわざ足を運んでもらい、お金を払っていただくからには、特別な価値を提供したいと思い、日々取り組んでおります。

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか。

横川毅:
23年間「忍者レストラン」という独自のポジションを確立したことが、他社の参入障壁になっている点です。忍者カフェや忍者居酒屋などとは違い、私たちは料理の質や演出、内装にも徹底的にこだわっています。そのため、弊社以上のクオリティを出すのは難しいでしょう。

また、近年「ハレの日のレストラン」としての需要が復活してきたのも、後押しになっています。かつて外食は特別な日のイベントでしたが、チェーン店の台頭により、現在では一部がインフラ化しています。

しかし、近年再び「特別な日には非日常を味わえる空間で食事をしたい」というニーズが高まっており、私たちはハレの日を演出する特別な場所として選んでいただいております。

従業員ができないこと、やりたくないことをやるのが社長の仕事

ーー社長が飲食店事業に携わるようになった背景は何だったのですか。

横川毅:
これまでホテルなどのサービス業に携わってきたことで、お客様と接する仕事にやりがいを感じてきました。飲食業においてもお客様の感情を肌で感じられる楽しさを感じ、これまで続けてきました。

ーー貴社の経営方針について教えてください。

横川毅:
常に1〜2名の余裕を持った人員体制を心がけ、急な欠員にも柔軟に対応できるようにしています。社長である私は、従業員ができないことと、やりたくないことを引き受けるようにしています。

具体的には、新規店舗の出店計画や新しい食材の開拓などのクリエイティブな仕事と、特殊な掃除や修繕、配送などの従業員が出来ない仕事です。出勤時は汚れることを前提としつつ、いつでも店に出られるよう全身黒色の服装にし、替えの服も用意しているのですよ。

また毎週火曜日と金曜日は配送の日と決め、NINJAでは使用しない部分の食材を社内の別店舗に届けています。サステナブルへの取り組みも外部に委託するのは中小企業では難しいのです。こうしたすき間からこぼれ落ちてくる仕事を、私自らが巻き取るようにしています。

お客様の予想を上回る味や演出、サービスの追求

ーー顧客満足度を高めるために工夫していることはありますか。

横川毅:
エンターテインメントレストランは、ディズニーランドなどのテーマパークと同様に、世界観を守ることが重要です。そのため、内装の塗装がはがれたり設備が壊れたりしていると、急に現実味を帯びてしまいます。

また、多くのお客様はご来店前に「子どもだましだろう」「料理は大したことないだろう」という先入観を持って来店されます。こうした先入観を覆すため、期待以上の料理の味や演出、サービスを提供することに努めています。

今後はプロジェクションマッピングなど新しい演出も取り入れていきます。技術の進化に合わせて演出方法も刷新し、より没入感を高めていこうと思います。

ーー今後の事業展開についてお聞かせください。

横川毅:
以前から外国のお客様にもお越しいただいておりましたが、昨今のインバウンド需要の高まりもあり、さらに多くのお客様をお迎えしています。またSNSを通じて店の情報が拡散され、海外のメディアにも毎年取り上げていただいております。

この流れを活かし、国内に限らず、再度海外への展開も視野に入れ、パートナー企業募集や、M&Aも模索しています。そのためには多額の運用資金が必要なため、M&Aにより大手企業の傘下に入ることも検討しています。こうしてスピード感を持って成長し続けることで、従業員が希望や夢を持ち、やりがいを持って働ける企業にしていきたいと思います。

そして私たち経営陣が会社を去った後も、50年、100年と続くエンターテインメントレストラン事業の礎を築くことが今後の目標です。

チーム一丸となって忍者レストランの世界観をつくる

ーー最後に読者の方へメッセージをお願いします。

横川毅:
飲食業界は給与が低く、労働時間が長くて休みがとりづらいというイメージを持たれている方も多いと思います。しかし弊社の場合は、顧客単価が高いため給与が安定しており、柔軟な働き方にも対応しています。

月に8日以上の休みを確保し、希望者は時短勤務も選択できます。このように労働環境が整っているため、離職率は非常に低いのです。

また、私たちの仕事は全員で一つの作品をつくり上げるものなので、チームワークを重視しています。そのため肩書きによる上下関係をつくらず、フラットな組織文化を大切にしています。このように安心して働ける、居心地の良い職場づくりを心がけています。

昨今の飲食業界では配膳ロボットの導入が進んでいますが、世界観の演出にこだわる弊社の場合は人の力が不可欠です。そのため、ロボットにはできないクリエイティブな部分を補う人材は宝です。

エンターテインメントと飲食を融合させたオリジナリティある環境で、ぜひ一緒に働いてみませんか。

編集後記

「外国人目当ての客商売」という外的評価を覆すため、料理のクオリティや演出方法、内装にもこだわってきたという横川社長。その言葉通り、2023年に移転オープンしたNINJA TOKYOの空間づくりやパフォーマンスはエンターテインメントと呼べるものだ。株式会社ウィルプランニングは、今後も世界中の人々に食の新たな楽しみ方を提供していくことだろう。

横川毅/1975年東京都生まれ。自由の森学園高校卒業。23歳までスキー業界で働きながらプロスキーヤーとして活動し、2000年苗場の国際大会で金メダルを獲得後、28歳までリゾートホテルに勤務。2008年に株式会社ウィルプランニングの代表取締役に就任。葡萄の騎士の会幹事、関東佐伯会理事に就任し、日本ワインの普及や地域活性化の活動にも注力している。