※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

広島発祥のラーメンブランド「我馬」を運営する株式会社アースフード。12台の大釜で炊き出される豚骨スープは、豚の頭の骨と水だけという究極のシンプルさでファンを魅了している。

現在は国内外で店舗展開を進め、暖簾分けオーナ(独立支援)とフランチャイズ展開を含め50店舗体制と広島の飲食店で初の株式上場を視野に入れているという。今回は、アルバイトから社長へと上り詰めた小林史和氏に、経営哲学と成長戦略について話をうかがった。

借金返済を乗り越えて見つけた、本当にやりたい仕事

ーー入社までのご経歴を教えてください。

小林史和:
子ども時代は広島市内を転々としていました。家で留守番をしているときに、親に「カーテンを閉めておきなさい」とよく言われていたことを覚えています。母は「訪問営業を断るためだ」と言っていましたが、実は事業をしていた父が人に騙されて背負った借金の取り立てにあっていたのです。家族全員で分担して返済することになりました。

高校卒業後は兄に誘われて電気工事の仕事に就きました。5年ほど働いて借金も無事に返済でき、もともとやりたかった飲食業界に転職しようと決心したのです。

そんな時に見かけたアースフードの求人広告には、創業者である山﨑の写真に吹き出しがあって「何をやってもいい!」と書いてありました。その広告に惹かれて面接を受けに行き、時給800円のアルバイトからスタートしたのです。そこから社員になり、3店舗を統括する総店長、エリアマネージャー、営業部長、取締役と順次昇格し、2020年に代表取締役社長に就任しました。

ーー入社後に印象に残った出来事を教えてください。

小林史和:
3店舗の統括を任されていた時期に、店長の一人から家族についての相談を受けたことがあります。結局その店長は退職してしまいましたが、「もっとなにか助けになることができたのでは」と悔やみました。彼に対して120%向き合っていなかったのではないかと感じ、それからは人との向き合い方が変わり、これまで以上に考えるようになりました。

お客さまの「ありがとう」が原動力となる

ーー貴社の特徴や強みはどのようなところですか?

小林史和:
弊社で運営するラーメンブランド「我馬」のこだわりは、大きな釜を12台使って炊く自家製の豚骨スープです。一般的には数種類の骨と副材料を一緒に炊くことで、味の抽出や臭み消しを行います。弊社の場合は、最も難しいといわれる1種類の頭骨と水のみで炊き上げます。ベストなスープが取れるよう、火力や丁寧な灰汁取りにも気を付けています。

また、会社としては女性の社員比率が47%と高いところも特徴です。これは飲食業、特にラーメン専門店としては相当高いほうだと思います。弊社では、「家事や育児をしながら働いている女性スタッフに、短時間で成長してもらうにはどうしたらいいのか」という点も人事考課に含めています。

さらに、育児や介護などで時短勤務が必要な場合にも、働き方を移行できるようにしました。こういったところも弊社ならではの特徴といえるでしょう。

ーー仕事のやりがいを感じるのはどんなときですか?

小林史和:
お客さまから「ありがとう」と言われることが一番嬉しいですね。仕事の疲労がすべて吹き飛ぶ思いです。弊社では1日の間に何度もお客さまの「ありがとう」を浴びることができ、その時間を気の合うチームの仲間と一緒に共有できていることが、また嬉しいです。

私はよくスタッフに、「ラーメンだけを売るのではなく、お客さまに食事の時間を提供することが大切だ」と言っています。お客さまから「ありがとう」の言葉をいただくことで、スタッフも励みになる。この体験を循環させることが、スタッフの成長、ひいては会社の成長につながると考えています。

海外進出とフランチャイズ展開で目指す、次なるステージ

ーー海外進出についてもお聞かせください。

小林史和:
現在、弊社はハワイ・オアフ島のカパフル通りに「UDON GAMADASHI」という博多うどんのお店を出店しています。今後はこの博多うどんの店を旗艦店として、将来的にはラーメンのお店も出店したいと考えています。カパフル通りは観光客よりも地元の方が多いので、地域住民に愛される店づくりを目指したいですね。まずは丁寧な仕事で、現地の方の信頼を獲得していきたいと思います。

ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。

小林史和:
今後は暖簾分け店舗やフランチャイズ店舗を展開しながら、広島県の飲食店としては初の株式の上場を目指していきたいです。現在、飲食業界は大手チェーン店と個人店との二極化が加速しています。弊社のような10店舗程度の中規模なチェーン店は、その狭間で生きているといえるでしょう。

スタッフの未来を考えたときに、成長するチャンスを逃してはいけないと思うのです。これからは社員独立制度を活用する社員の方を増やしながら、フランチャイズ本部も立ち上げ、『我馬』のブランドを全国のお客様へ届けることを視野に入れて取り組んでいきます。

編集後記

借金返済、転職、アルバイトからの出世と、小林社長の歩みは決して平坦ではなかった。しかし、そんな経験があったからこそ、スタッフの成長や働きやすさに真摯に向き合えるのだろう。豚骨スープへのこだわりと同様、経営においても本質を追求する姿勢に深い感銘を受けた。

小林史和/1976年広島県生まれ。高校卒業後、1年間のアルバイトを経て、電気工事の仕事に5年間従事。2001年、飲食業界への転身を決意し株式会社アースフードへ入社。アルバイトからスタートし、幾度の昇進を重ねて2020年より代表取締役社長に就任。