弁護士や司法書士、介護士、看護師などの専門職にかかる負担は大きい。日本弁護士連合会が発表した「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査 2020」によると、弁護士の平均労働時間は2010年よりも52時間増えている。また、医療業界における人手不足が社会問題となって久しく、2025年までに最大27万人の看護師不足が推定されるという。
※参考:日経新聞「看護職員、最大27万人不足 都市部で顕著、高まる需要 厚労省、2025年推計」
そうした専門職の人材領域にはびこる課題にフォーカスし、事業を展開しているのが、株式会社WILLCOだ。専門職領域に人材課題、またWILLCOが掲げる働く幸せとはどのような考えに基づくのか。代表取締役社長の土屋佳大氏に、こうした理念に至った起業の背景や、今後の事業のテーマについてうかがった。
心理学の調査をきっかけにWebディレクターの道へ
ーー土屋社長のご経歴を教えてください。
土屋佳大:
大学では心理学を専攻していました。卒論を書くタイミングでSNSが流行し始め、人間が抱える不安や孤独感とSNSとの関連性に興味を持ったのです。当時、先行研究の中で、インターネット・コミュニケーションが人間の精神的な健康を害する可能性について言及されていました。私は「最近のSNSに、この仮説は当てはまらないのではないか」と考えてSNSの調査を行い、その過程でインターネットへの関心が高まってWeb業界に就職しました。
ーーWeb業界に就職し、どのようなお仕事を経験したのですか?
土屋佳大:
Webディレクターとして営業活動も行いながら、サイト制作などの仕事をしました。大手のサイトではなく、いわゆるスモールビジネスが多かったですね。「もっと裁量を持って仕事をしたい」と思い医療系の人材サービス会社に入ったのが、専門職領域でサービス展開をするきっかけとなりました。
自分の人生をやり直すために譲れない信念
ーー会社経営をする上で最も大切にしている考えをお聞かせください。
土屋佳大:
弊社のビジョンでもある“すべての「働く」をしあわせに”という考え方を大切にしています。
私は20代のときに、ハードワークやパワハラなど、「人生は100のうち99が辛いものだ」と思うような経験をしてきました。なんとか踏みとどまれたのは、残りの「1」に友だちや家族、仕事のやりがいなどがあったおかげです。このような経験から、これまでを少しずつ肯定できるように人生をやり直し、同じ境遇の方の助けとなるために株式会社WILLCOを設立しました。
ーービションを実現するためにどのような取り組みをしていますか?
土屋佳大:
弊社では心理的安全性を感じられる信頼関係の構築や、自由にキャリアアップに挑戦でき、成長できる組織づくりを目指しています。最近では心理的安全性に加えて、「キャリアの安全性」も重要だと考えるようになりました。というのも、社員が努力を重ねて壁を乗り越えたとき、とても幸せそうな、達成感を得た表情をするのです。それを横で見ている瞬間というのは何ものにも代えがたいですね。今後も社員が積極的に挑戦できるように、働きやすさを維持することに加えて将来の選択肢を増やし、キャリアアップを目指せる施策を考えていきます。
充実した求職者の口コミ情報の掲載がサービスの強み
ーーなぜ「LEGAL JOB BOARD」のような士業に特化したサービスを開始したのですか?
土屋佳大:
士業に目を向けた理由は、友人・知人に弁護士や司法書士などの専門家が多かったからです。リサーチを進める中で、伝統的な業界の「正したい部分」が見えてきました。「この業界に本気で取り組み、求職者と採用者がフェアにやりとりできる転職市場を構築したい」というのが、サービスを展開した大きな目的です。
ーー医療・介護業界は特に競合が多い分野かと思いますが、どのように他社サービスと差別化していますか。
土屋佳大:
競合他社と真っ向から勝負するのではなく、職場の口コミ情報などを丁寧に集めることで差別化しています。実は医療や介護の分野において、求職者の口コミをきちんと集めている他社サービスは非常に少ないのです。そのため医療・介護の分野では、一般企業に比べると求職者の立場で語られる情報が少ないというアンバランスが生じており、それを解消するために看護師・医療従事者の職場口コミ×求人サイト「メディコ」を開設しました。
採用に注力し、一緒にビジョンを実現させていきたい
ーー貴社が今後注力していきたい事業のテーマについて教えてください。
土屋佳大:
現在開発中のM&A業界の人材紹介や、企業から個人にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」のサービスに力を入れていきたいと考えています。すでに一部のサービスはスタートしていますので、エージェントやダイレクトリクルーティングのノウハウは、かなり社内に集積してきました。こういった新規事業にフィットした人材の採用にも注力したいです。
すでにさまざまなタイプのバラエティ豊かなセールス人材が増えていて、適材適所の配置ができていると思います。それぞれが得意な業界を1つずつ担当するという工夫をしているので、パフォーマンスを発揮して高いクオリティのサービスが提供できるようになっています。
ーー最後に、貴社で働きたい方に向けてメッセージをお願いします。
土屋佳大:
弊社では今、20代後半〜30代前半の新卒・中途社員が中心となって活躍しています。彼らは素直で、先輩から教わったことについてひたむきに考え、それを実際にやり抜いたからこそ結果に結びついているのだと思います。弊社のビジョンに協力的で素直な方が入社してくれると嬉しいですね。ぜひ私たちと一緒に、“すべての「働く」をしあわせに”というビジョンを実現させていきましょう。
編集後記
株式会社WILLCOには、売上を第一目標としない社内文化があるのだという。「転職エージェントが自身の成績や売上のために、求職者の将来を決めるのは違う」と語る土屋社長の目は、「幸せに働ける社会」を見据えている。社員だけでなく、求職者の「働く」も幸せにしたいという信念は、これからも社会に新しい風を吹き込んでいくことだろう。
土屋佳大/某国立大学で臨床心理学を学び、Web業界に就職。Webディレクターとして数百のメディア、プロモーション、Webサイト構築を経験し、医療系人材会社に転職。プロジェクトマネージャー、エンジニアとして東証マザーズ市場への上場を牽引し、その後独立して株式会社WILLCOを設立。代表取締役社長に就任。