※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

自動車業界が「100年に一度の大変革の時代」にあるといわれる昨今、自動車修理業者にもアップデートが求められている。そんな中で、技術革新やニーズの調査に余念がないのが、国内外の自動車を年間1万台超修理する「株式会社ソフト99オートサービス」だ。

同社を率いるのは、コロナ禍のさなかにあった2020年に社長に就任した甲斐康之氏。この記事では、逆境に挑み未来を切り開く、甲斐社長の経営哲学や自動車業界の将来を見据えた会社運営などに迫る。

コロナ禍という逆境の時代から始まった社長としてのキャリア

ーー甲斐社長の経歴をお聞かせください。

甲斐康之:
新卒で自動車リース会社に入社し、フリート市場の法人営業を経験しました。この会社に約18年間勤め、2003年にソフト99グループに転職しました。

ソフト99グループ入社後に、まず取り組んだのは、弊社の前身であるオートリース事業を行う会社の立ち上げです。立ち上げ後は、M&Aで6社を合併するという、積極的な事業拡大を図りましたが、相応に困難も伴いました。

合併において特に難しかったのが、異なる価値観と環境で働いてきた社員を、1つの組織にまとめることです。企業文化や労働条件、給与体系などすべてが違ったので、これらを1つの方向性に統一するには相当の時間と労力が必要でした。

ベクトルを統一するために行ったのは、丁寧なコミュニケーションやビジョンの徹底的な共有です。その甲斐あって、約5年という長い時間がかかりましたが、統一感のある組織体制を実現し、企業基盤の礎をつくり上げました。その後、2007年に取締役に就任し、2020年に社長に就任して今に至ります。

ーー社長に就任してから、特に大変だったことは何ですか?

甲斐康之:
2020年という、自動車業界が逆境に立たされた、コロナ禍の真っただ中に社長に就任したことです。当時は外出自粛の影響から自動車の利用が減少したため、弊社の主軸事業である事故修理の依頼が激減していました。さらに、自動車市場では技術革新によって、高度な安全装備や自動運転の本格的な加速が始まりました。需要の減少と新技術の習得という、2つの難題が同時に訪れたのです。

コロナ禍を乗り越えるだけであれば、耐え忍んでいれば済む話ですが、その間も技術革新は進んでいきます。そこで、私は逆境の中でも成長を続けようと「技術革新に対応するための設備投資」「人材の確保と育成」「カーディティーリング(美装事業)事業の拡大」を推し進めました。これにより、人材の質と量の向上、収益基盤の多角化、顧客層の拡大に成功し、現在はコロナ禍以前を超える成長と売上を達成しています。

信頼の厚い板金・塗装事業を土台に、美装事業という新たな柱を育てる

ーー貴社の事業内容を教えてください。

甲斐康之:
自動車修理や板金・塗装が弊社の主軸事業です。弊社の修理は「最高の設備力」と「最高の技術力」で「最高の仕上がり」をお約束しており、最新の高性能スポーツカーや稀少なビンテージカーなども含めて、国内外のさまざまな車種を年間1万台修理しています。ちなみに、ポルシェやBMW、ベンツ、テスラといった輸入車のメーカー認証も取得しています。

また、コロナ禍以降は、プロテクションフィルムの施工やコーティングの塗布といった、カーディティーリング事業に力を入れています。この事業では、他社向けの講習会も行っており、講習を受けた会社にプロテクションフィルムを販売することで、新たな収益源の確保にもつながっています。

ーー貴社独自の強みは何ですか?

甲斐康之:
弊社の最大の強みは、板金塗装で培った高い技術力を有していること、そして輸入車のメーカー認証を得ていることです。特に、国内において輸入車のメーカー認証を得ている企業は貴重で、難易度が高い修理にも対応できる会社として、輸入車オーナーからの信頼を集めています。

また、カーディティーリング事業が順調に育ってきている点は、新たな強みといえるでしょう。この業界はまだ開拓の途上にあるので、弊社が新たなポジションを獲得できるポテンシャルがあると考えています。さらに、板金塗装事業と近い市場を開拓できるので、既存顧客への取引深耕も見込めます。

変化の時代にある自動車業界で、これから何が求められるのか

ーー今後、自動車業界はどのように変化し、何が求められると思いますか?

甲斐康之:
私が重視すべきと感じている変化は、業界において、便利な移動手段としての「ツール」と、純粋に自動車を楽しむ「嗜好品」という、二極化が進んでいることです。今後は、これらの両ベクトルに対応できる技術力が求められると思います。

「ツール」としての自動車に対応するためには、新たな技術の習得が必要です。電動化や小型化、自動化など、さまざまな技術が目覚ましい速さで進化を続けています。当然、求められる技術も高度化していくので、新たな技術習得を続け、市場の変化に対応していきます。

一方で「嗜好品」としての自動車に求められるのは、自動車本来のかっこよさやロマンなどであり、弊社が果たすべき役割は、車を美しい状態で維持し、付加価値を加えることです。カーディティーリング事業を通じてこの需要に応え、愛車にさらなる付加価値を与えることにより、自動車愛好家たちとの絆を深めていきます。

ーー今後、会社を成長させるために注力したいことを教えてください。

甲斐康之:
現在進めているのが、職人の社会的地位の向上です。新たな世代の人材を増やすためには、職人が正当に評価される待遇の実現が不可欠であるため、ベースアップや残業時間の削減、休日の増加など、ワークライフバランスの充実を進めていきます。現時点では、月あたりの平均残業時間を約5時間まで減らすことに成功しました。

また、これから進めたいと考えているのが、海外展開の基盤づくりです。外国人技術者の積極的な採用と育成を進め、将来は彼らに母国で活躍してもらうことで、人材を軸とした海外展開へつなげられればと考えています。

現在、自動車業界は変革期にありますが、私はこの変化を「新しい価値を創造するチャンス」と捉えています。これからも高い技術力とチャレンジ精神をもって、お客様の期待を超えるサービスを提供し続ける所存です。

編集後記

甲斐社長が語る自動車業界の未来予想図は、人々の価値観の変化を鋭く捉えていると感じた。特に、愛車に付加価値を加える美装事業は、サービスの価値が問われる時代の流れと相まって、ますます注目が集まるだろう。高い技術を持つソフト99オートサービスに、甲斐社長の視点が加わることで、今後、同社がどのように成長していくのか注目したい。

甲斐康之/1964年兵庫県生まれ。自動車リース会社を経て2003年にソフト99グループへ入社。2020年ソフト99オートサービス代表取締役に就任。