※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

多くの国民が「政治は縁遠い存在」「政策決定に参加する方法がない」と感じている中、政治や行政と市民の架け橋となる画期的なプラットフォームを構築した企業がある。

株式会社PoliPoli(ポリポリ)は、誰もが政策立案に参画できる仕組みを作り上げ、従来の政治参加の形を大きく変えようとしている。デジタル技術を活用して政策共創の新時代を切り拓く同社の挑戦について、代表取締役CEOの伊藤和真氏に話を聞いた。

政治が身近になる社会を目指して

ーーこの事業をはじめた背景にはどのような思いがありましたか。

伊藤和真:
私は経営者や社長になることが目的ではなく、目の前にある課題に向き合い、それを解決するための場や仕組みをつくることに興味を持っています。誰かをつなげたい・何かを幸せにしたいという思いが、事業を始めた大きなきっかけです。

大学時代、俳句が好きだったことから、自ら俳句版SNS「俳句てふてふ」を構築し運用しました。人々が俳句を通じてつながり、新たな発見や喜びを得る場を提供することを目指したこのプラットフォームが予想以上の反響を得たことで、「インターネットサービスには人と人をつなげ、誰かを幸せにできる可能性がある」と強く実感したのです。

後にこのサービスを毎日新聞に事業として売却した際、社会に価値を提供できる仕組みを作ることの面白さと責任を感じ、インターネットサービスへの関心が一層深まりました。

また、同SNSを運営していく中で、10代から20代の方たちとの交流や投稿から、政治や行政を遠く感じ、政治に対する関心の薄さや無力感を持っていることを知りました。このことから、政治と行政の距離を縮めるプラットフォームをつくり、分かりやすく情報を伝えることで、行動を通じて社会を変える実感を得て、現在の諦めの空気を少しずつでも変えていきたいと考え始めたのです。

ーー起業当初、最も困難だったことは何ですか?

伊藤和真:
「政策共創」という概念が社会に浸透していないため、説明してもなかなか理解されず、反応も薄かったことです。それでも、利用者の方々が満足している様子にやりがいを感じ、この仕組みが社会に必要だと信じて続けていました。

最初の3〜4年は、非常に厳しい時期でしたね。ですが、新しい行政の仕組みを作り続けるという信念を持ち、企業や財団の方々への政策提言・政策渉外をサポートし、行政からの要望などをサポートするサービスの提案を繰り返しました。4年目以降になってようやく成果が見え始め、少しずつ社会からの認知も広がり手ごたえを感じることができました。

政策提言から実現までのワンストップ支援

ーー貴社の事業内容を教えてください。

伊藤和真:
弊社は企業や団体向けの、社会ルールの変更や構築をサポートする「PoliPoli Enterprise(ポリポリエンタープライズ)」を中心に、政策共創のプラットフォームを展開しています。このサービスは、企業や団体が政策提言を行う際に必要なプロセスを包括的にサポートするものです。政策提言の具体化から行政との協議までをワンストップで支援しています。

また、国内外から資金を募り、民間で社会問題解決の実証実験を行う「Policy Fund(ポリシーファンド)」、官民連携による社会課題の解決を推進する「自治体共創ファンド」といったプロジェクトも行っています。どちらも地域の問題解決に向けた施策の効果を小さく・早く実証したい事業者や自治体に対し、中間支援組織として資金を提供し案件をリードしています。

ーー具体的な事例にはどのようなものがありますか。

伊藤和真:
事例の一つが、文化庁との連携によるクリエイター育成支援事業です。クリエイターエコノミー協会が、私たちのプラットフォームを活用し政策提言を行った結果、令和5年度補正予算に45億円が盛り込まれました。

また、2024年10月1日に商業登記規則の一部が改正され、会社登記簿謄本(登記事項証明書)などで公開されていた代表取締役の住所を非公開にできる制度が開始されました。こちらも弊社のプラットフォームからのリクエストなどを受けて実現した事例です。

ーー貴社ならではの強みは何ですか。

伊藤和真:
弊社のサービスの強みは、政策の立案から実現までを一貫してサポートできる点です。たとえば、意見を集めるだけでなく政策提言に落とし込み、行政や議員との対話を通じて実現に向けたプロセスを支援しています。また、自治体や官庁との実績が信頼の基盤となり、利用者にとって安心して活用できるサービスであることも大きな特徴です。

自由で納得感のある環境が育む挑戦の文化

ーー貴社の社内環境にはどのような特徴がありますか。

伊藤和真:
弊社では、多様なバックグラウンドを持つ社員が主体的に意見を発信できる環境を重視しています。意思決定において重視しているのは納得感です。意見を反映しながら進めることで効果的な事業運営を実現しています。この自由で納得感のある風土が、新たなアイデアを生み出す土壌となり、社員一人ひとりが自分の役割を理解しながら積極的に挑戦できる体制を構築しています。

ーー貴社で働く魅力と活躍する人物像を教えてください。

伊藤和真:
弊社の魅力は、社会に具体的なインパクトを与えられる点にあります。私たちの取り組む「政策共創」は、従来の政治や行政の形を変え、国民が政策の意思決定に直接関われる道を開く仕事です。

弊社の環境で活躍しているのは、課題解決への情熱を持ち、行動が早く、プロとしてやり抜く意志のある人たちです。チームで協力し、自分の意見やアイデアを形にする意欲があれば、自由に挑戦できる職場だと思います。

政治参加の未来を変えるための歩み

ーー今後の展望についてお聞かせください。

伊藤和真:
弊社のような政策プラットフォームは、日本ではほかに類を見ません。企業の声を反映した取り組みを一層広げることが、政策共創の実現、そして社会課題の解決には欠かせないと考えています。企業ごとに異なる課題に合わせた解決プロセスを提供し、それぞれの分野に適した政策を形にすることで、具体的な変化を生み出すことを目指しています。

これを実現するには、私たち自身の体制強化も必要です。新たな挑戦に備えるため、採用活動を積極的に進め、1年後には約100名規模の組織体制を構築する予定です。

株式会社PoliPoli 採用情報

編集後記

俳句を愛好するという伊藤氏の言葉には、簡潔でありながら鋭い力強さが感じられた。その感性は、複雑な政治や行政の世界を、いかにシンプルに、そして本質的に捉えるかという同社の哲学にも通じているように思える。創業から4年間の困難期を経て、「政策共創」という新しい概念を具体的な成果として示し続けてきた粘り強さと、クリエイター支援事業の予算化などの着実な実績には、確かな説得力と信頼がある。

多様なバックグラウンドを持つ人材が自由に意見を交わし、新しいアイデアを生み出していく組織文化こそが、株式会社PoliPoliの理念を実現する源泉となっているのだろう。政策立案の新しい形を提示し続ける同社の挑戦に、引き続き注目していきたい。

伊藤和真/1998年生まれ、愛知県出身。慶應義塾大学卒業。在学中に俳句SNSアプリ「俳句てふてふ」を開発し、毎日新聞社に事業売却。18歳当時、2017年の衆院選で感じた政治・行政と人々の距離が遠いという課題から、2018年株式会社PoliPoliを設立し、政策共創プラットフォームを開発・運営。その他、経済産業省や総務省の有識者委員をつとめ、経済誌「Forbes」日本のルールメーカー30人などに選出。