※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

株式会社サニタは、神奈川県を中心に調剤薬局、整骨院、介護デイサービス、訪問事業を運営する企業である。特に高齢者が住み慣れた地域における、「地域包括ケアシステム」に注力しており、介護を受けながらこれまでの生活を維持できるよう、支援をしている。

設立当初の社員はわずか2人で、薬局が1つという小さな会社だったという。父親から事業を引き継ぎ、地域の健康づくりに尽力してきた代表取締役兼社長CEOの津田康徳氏に、経営者マインドと新たなビジョンをうかがった。

どんな課題にも解決の道はある。その道を選択する意思決定こそ経営

ーー社長に就任するまでの経緯を教えてください。

津田康徳:
弊社は父が興した薬局からスタートし、1983年に株式会社成和薬局として法人化しました。当時、父が立ち上げた3つの会社のうちの1つが弊社です。私が1990年に入社したときは、1店舗の運営だけで社員は2人という小規模経営でした。

2000年に社長に就任してからは、整骨院や介護系事業にも参入し、今では調剤薬局、整骨院、介護デイサービス、訪問事業という、地域の方の健康維持を支える4つの事業を展開しています。

ーー社長に就任した際にプレッシャーはありましたか?

津田康徳:
私は、自分で判断し意思決定する性格で、誰かに指示されるよりも、主体的に物事を動かしていく方が得意なのです。社長に就任した当初は、プレッシャーよりも「自分が組織の意思決定者として活動できる!」という期待に胸が踊る気持ちのほうが大きかったですね。

また、「人生には自分で解決できる課題しか現れない」と考えています。社長の仕事はロールプレイングゲームと似ている部分があり、場面ごとに「敵」が現れるものです。社長になってから、いくつかの課題に直面することもありましたが、致命的な失敗もなく乗り越えることができました。

弊社には、「出来る方法を考える」という社訓があり、どんな厳しい状況でも対応策は無限にあり、必ず解決できるとうたっています。私は、まさに社訓を実践しているのです。

顧客の健康情報を一元管理して地域に密着したサービスを丁寧に深掘りする

ーー地域密着型の事業を展開してきた背景を教えてください。

津田康徳:
創業当時の店舗は私が幼い頃から住んでいた地域にあり、いまだに顔なじみのお客さまやかつての同級生が訪れるため、さまざまなお話をうかがうことができます。来店される方々が加齢にともない体の不調に悩む様子を見聞きすることで、薬の提供にとどまらず、地域の健康課題を改善する事業に取り組むことが必要だと実感しました。

そこで、肩こりや腰の疲れを治す整骨院、リハビリ型のデイサービス、自宅訪問型のサービスなど、お客さまのニーズを汲み取った地域密着型のケアサービスを提供することにしたのです。利用者さまに喜んでいただけるだけでなく、地元の同級生からも「おかげでうちの親も助かっているよ」などと声をかけられるようになりました。

ーー今後はどんな事業展開をお考えですか?

津田康徳:
弊社の強みは、複数の事業を利用されるお客さまの情報を一元管理できることと、薬剤師、柔道整復師、マッサージ師、鍼灸師、理学療法士、栄養士といった、健康にまつわる多彩な人材がそろっていることです。この強みをさらに活かせるような事業を構想しています。

たとえば、風邪をひいた方に薬を提供するだけでなく、風邪予防につながる食生活のサポートをしたり、丈夫な身体づくりを目指す運動を整骨院でアドバイスする、といったことですね。

薬局の業務についても、サービスの幅を広げ、老人ホーム等にご入居されている方々に処方箋を届ける事業を増やしていきたいと考えています。可能であれば在宅訪問薬剤管理指導も展開していきたいですね。地域の方々が健康で安心して暮らせるように、顧客情報を一元管理しながら、多彩な専門人材が一人ひとりの状況にフィットしたケアをしていくことを目指しています。

社員の意欲と適性に応じた評価制度で後継者の育成を

ーー今後、人材の育成・確保は重要なポイントですね。

津田康徳:
そうですね。各事業部門を担う有資格者は、事業の成長規模に応じてタイムリーに確保していく計画です。現在のテーマは、経営者目線を持った人材の育成・確保です。私は社長に就任して以来、経営の先頭に立って事業領域を広げてきました。しかし、今後さらに事業を広げるうえで、幹部社員の充実が必要です。私の経営のDNAを継承できる人材を発掘したいと考えています。

幹部社員の育成を目的とする評価制度は、コンサルタントの協力のもと、5年ほど前に設けました。幹部社員に求める基準を具体的に示し、それ基づいて評価することで、昇給や昇格を決定するという仕組みです。

ーー幹部以外の社員の評価についてはいかがですか?

津田康徳:
幹部以外の社員についても、早い時期にそれぞれの目標設定や達成度評価などを取り入れていきたいと考えています。そのために、現在、上司と部下の1on1を実施し、話し合いを重ねていますが、それぞれの知見やノウハウの蓄積を活かせるよう、すべての社員が明確な基準に基づいて昇給・昇格していける体制の整備は急務です。

何よりも大切にしたいのは、社員一人ひとりが自分にフィットした立ち位置で仕事に取り組んでいける風土をつくることです。たとえば、店舗運営で力を発揮したい、お客さまと接する仕事がしたいなど、自分の意欲に沿ったポジションでやりがいを感じ、主軸となって活躍できる社員を評価したいと思っています。

編集後記

「人生には自分で解決できる課題しか現れない」と語る津田社長。しかし、それは根拠のない過信でもなければ、楽観でもない。顧客一人ひとりの健康上の悩みに向き合い、解決に向けて戦略を練り、果敢に新たな事業を立ち上げてきた実績に裏打ちされた言葉なのだ。高齢者の健康寿命を延ばし、活力ある地域づくりに貢献する経営者、津田社長のさらなる躍進に注目したい。

津田康徳/1967年、神奈川県生まれ。1990年に株式会社成和薬局入社。2000年に同社代表取締役に就任。2005年、社名を株式会社サニタに改称。