
令和4年度のリサイクル率は、産業廃棄物は53%、一般廃棄物は19%にとどまっている。そのため日本では、リサイクルへの取り組みが進んでいるとはまだいえない状況にある。こうした状況を変えようと奮闘しているのが、株式会社CBAだ。
代表取締役の宇佐見良人氏は、前職で資源リサイクル事業の企画・推進や産業廃棄物管理サービスを展開するなど、業界の豊富な知識や経験を持っている。宇佐見氏が考える日本のリサイクルやごみ処理の現状とは、一体どのようなものなのか。事業の詳細を聞いた。
リサイクル率の低い日本において、廃棄物処理の事業に可能性を感じて起業
ーー貴社の事業内容を教えてください。
宇佐見良人:
弊社は廃棄物処理業務のDXを推進している会社で、業界内では後発となる2020年1月に創業しました。企業がどこでどんなごみを出し、それがどのように処理されたのか、といったデータを可視化し、最適な処理方法を提案するサービス「CBA wellfest(シービーエー・ウェルフェスト)」などを手がけています。
同サービスでは、産業廃棄物・一般廃棄物・有価物・専ら物に関わる情報の一元管理、許可証や契約書の管理・更新、業者選定サポートの情報受取などができます。業界の経験豊富なスタッフが導入からサポートし、運用後も相談いただけますので、安心して使える点が魅力です。データの可視化を行っている企業は多くありますが、弊社のように最適な方法の提案まで行っている会社は非常に少ないです。
ーーなぜ廃棄物処理業務のDX事業で会社を設立したのでしょうか。
宇佐見良人:
産業廃棄物管理サービスに携わっていた会社員時代、この分野にはまだまだ貢献できることがあり、ビジネスチャンスが豊富だと感じたことが1つの理由です。
また、日本ではごみ処理の際に発生する余熱を利用した温泉など、サーマルリサイクルによる廃棄物処理が進んでいます。しかし、サーマルリサイクルの推進は世界トップクラスである一方、資源リサイクル率はOECD加盟国の中では決して最前線ではありません。日本はリサイクルの分野で後れをとっている現状があります。
こうした状況の中、企業がどのくらいリサイクルできているのかを可視化して伝えることで、資源リサイクルの推進に貢献できるのではないかと考え、CBAを創業しました。
中小企業でも循環型社会への取り組みが「当たり前」になることを目指す

ーー取引先企業は大手と中小どちらが多いですか。
宇佐見良人:
リサイクルに積極的に取り組めるのは、相応のリソースを確保できる企業が多いため、取引先は大手企業が中心となります。一方で、弊社のシステムに関心を持ってくださる中小企業もありますが、すぐに取り組めるケースは限られています。
廃棄物を環境に優しい方法で処理することの重要性は、多くの人が理解しています。しかし、取り組むことが難しい状況にあるのです。そのため弊社はこれから、中小企業もスムーズにこの取り組みに参加できるよう、サービスの垣根を下げていく予定です。具体的には、大手ホールディングス企業とまず取引を行い、その企業を通じて傘下にある中小企業に弊社の取り組みを広めてもらうという方法を考えています。
AI技術や「既存の考え方を変える技術」を導入し、今後は業界を変える人材を輩出したい
ーー今後の注力テーマを教えてください。
宇佐見良人:
中小企業へのサービス拡大のほか、2つの新技術の開発を進めていくことです。1つはAIを活用した新技術で、弊社が何かサービスを開発するのではなく、AI技術に精通している企業と組んでサービスを展開することを考えています。
もう1つが、「今までの考え方を変えるような新技術」の開発です。通常、廃棄物の処理方法は、廃棄物を出した企業が自社のみで責任を持って処理する形が一般的です。しかし、今後は自社だけでなく、他の企業と連携して処理を行える仕組みを構築したいと考えています。
企業同士が連携して廃棄物処理するというのは、今までにない考え方だといえます。この仕組みをつくるために、弊社は何か技術やシステムを提供していきたいです。
また、採用も進めていきます。売り手、買い手、社会の三者が満足できる「三方よし」を弊社は大切にしているので、この考え方に共感して仕事に向き合ってくれる方と一緒に働けると嬉しいです。会社としても、社員が満足できるよう、給与面などでしっかりと貢献していきたいと思います。
ーー最後に、会社として5年後、10年後の未来像をお聞かせください。
宇佐見良人:
弊社が参入している廃棄物処理や循環型社会の推進といった業界は、人材が足りていません。既存のシステムに何が足りていないかを客観的に判断し、何が必要かを考えられる人が非常に不足しています。
そのため、弊社の社員から業界を変える新規事業を始める人が出てきてくれたら嬉しいですし、そういった社員を生み出し、最終的に独立できるくらいの社内環境を整えていきたいです。
編集後記
ごみの資源化は結果がすぐに表れるものではないが、資源の枯渇を止めたり、CO₂の排出量削減に貢献するなど、より良い未来に確実につながっている。循環型社会の実現に向けた宇佐見代表の熱い思いは、社会を変える一歩となるだろう。社会のために奮闘する宇佐見氏の話を聞き、自分に何ができるのか改めて考えさせられ、身が引き締まる思いになった。

宇佐見良人/総合商社の双日株式会社にて資源リサイクル事業を企画、推進。その後環境マネジメント業界のリーダーであるJEMSにて、産業廃棄物管理サービスを黎明期より約12年間展開し、最大顧客シェアサービスに育成。ゴミの資源化を推進するための更なるDXの必要性を痛感し、新規参入者が限られた業界の活性化を促すため、自ら起業を決意。2020年1月、株式会社CBAを創業。