
学生の就職活動において、最終面接で落とされた場合のダメージは大きいものだ。それまでの積み重ねを考えると、再チャレンジの気力を失う人もいることだろう。そんな学生の努力を無駄にしたくないと考え、事業化に踏み切ったのが、株式会社ABABAの代表取締役社長である久保駿貴氏だ。
同社が運営するABABA(アババ)というサービスは、最終面接まで進んだことがある学生を対象に、企業とのマッチングの機会を設けるというもの。久保社長はなぜこのサービスを作ろうと考えたのか、その経緯と、ABABAを使って実現したい将来像を聞いた。
大学生のリアルな視点から生まれた、就活で悩む学生を救うサービス
ーー久保社長の経歴をお聞かせください。
久保駿貴:
私は大学在学中から事業の立ち上げに挑戦し、これまでに3つの事業を立ち上げてきました。最初の2つは失敗に終わってしまいましたが、大学4年生のときに立ち上げた3つ目の事業であるABABAを軌道に乗せることに成功し、弊社を創業することとなりました。
共同代表の中井と出会ったのも大学生のころです。私たちは、社会課題の解決という共通の関心事を通じて一緒に活動するようになり、協力しながら事業の成長に取り組みました。大学4年生になると、生活の主軸を事業に置くようになったのです。
そこからABABAが大きく成長できたのは、テレビで取り上げられたことがきっかけです。最終面接まで進んだことがある学生と企業をマッチングするというアイデアが注目され、今では多くの企業や学生から問い合わせをいただくようになりました。
思えば、このサービスを思いついた当初は、アイデアを形にする方法やユーザーの獲得にすら苦労していました。それでも、1日10時間以上の開発や地道な営業活動を続けてきたからこそ、今日の弊社があるのだと思っています。
ーーABABAというサービスをつくったきっかけと印象に残っている開発エピソードを教えてください。
久保駿貴:
就職活動中の友人が最終面接で不採用になり、ショックを受けている姿を見たことが、ABABAをつくろうと思ったきっかけです。友人がそれまで積み重ねてきた努力が無駄になってしまった様子を見て、この努力や経験を活かす場をつくりたいと思ったのです。
ただ、いかにコンセプトが良くても、ニーズに適していなければ良いサービスにはなりません。そこで、過去に失敗した2つの事業からの学びとして、開発者のアイデアと実際のユーザーが求めるサービスの差に注意しながら、開発を進めていきました。
また、営業を行う際には行動量を何より重視し、SNSを運営している人事にダイレクトメッセージを送ったり、起業家や企業がビジネスアイデアなどを紹介するピッチコンテストに出場したりしました。
今でも「スピード感」と「フットワークの軽さ」は大切にしていて、ベンチャー企業ならではの迅速な意思決定を武器に、日々諦めることなく、新たな出会いや機会の獲得に取り組んでいます。
就職プラットフォームと模擬面接ツールを組み合わせ、就活に新たな選択肢を提供

ーー貴社の事業内容と、サービスの独自の強みを教えていただけますか。
久保駿貴:
弊社では主に、最終面接まで進んだ就活生と企業をつなぐプラットフォーム「ABABA」と、AIを活用した模擬面接ツール「REALME(リアルミー)」という2つのサービスを運営しています。
ABABAの強みは、最終面接まで進んだ実績のある就活生が、通常は企業ごとにリセットされてしまう就職活動の努力や経験を可視化し、新たなチャンスの獲得につなげられる点にあります。
それと同時に、企業にとっても見込みのある学生を探しやすくなるので、双方にメリットがあるサービスだといえるでしょう。さらにABABAのスカウトシステムは学生と企業、双方の負担を減らすために、1つのスカウトで1つの内定につながる世界を実現したいと考えています。学生と企業双方の負担を減らすことにもつながります。
利用している企業はベンチャー企業や中小企業が多いですね。主に、自社にマッチした人材を確実に探すために利用いただいております。また、一部の大企業からも利用いただいており、選考の効率化や優秀な母集団形成に一役買っています。
一方、REALMEで提供しているのは、AIによる模擬面接です。学生がAIを相手に模擬面接を行うことで、企業の選考基準に基づいたフィードバックを受けられる仕組みを実現しています。本番前に志望先に適した自己分析や面接対策を行えるので、万全の状態で面接に挑むことが可能です。
ABABAを成長させたその先で、本当に実現したいこととは
ーー今後貴社を成長させていくにあたり、注力すべきテーマは何でしょうか?
久保駿貴:
特に力を入れたいのは、ABABAというサービスを国内に広く浸透させることです。現在、ABABAを利用している企業はITや広告、コンサルなどの業種が中心ですが、今後は商社やメーカー、飲食、製造業などにも広めていきたいです。
また、利用可能なエリアの拡大も課題として挙げられます。地方都市で発生している、地元で就職したいニーズとスカウト数とのギャップに目を向け、各地のエリア採用に役立てたいと思っています。
さらに、REALMEの継続的なアップデートも欠かせません。AIの特徴であり強みでもある、「データが蓄積するほど精度が向上していく」という点を伸ばし、将来的には適性診断やキャリアアドバイスといった、長期的なキャリア設計にも役立つサービスへと進化させたいと考えています。
ーー貴社ではどのような人材を求めていますか?
久保駿貴:
特に必要だと感じているのが、企業と学生のマッチングをサポートする「タレントコンサルティングチーム」のメンバーです。具体的には、人材業界や人事担当、などを経験した方を積極的に採用していければと思います。
また、マインドの部分では、弊社のコアバリューである「隣人を助けよ」という考えに賛同いただけることと、チームプレイが好きなことが望ましいです。特に、「皆で手を取って前に進んでいくんだ」という想いを持っている方は活躍できる環境だと思います。
ーー将来的に、貴社をどのような姿に成長させたいですか?
久保駿貴:
ABABAの大きな目標は、努力が無駄にならない社会の実現です。未だに不採用のメールを送らない企業もあるといった現状を、弊社のサービスで少しずつ変えていければと思っています。
規模が大きな話ですが、ABABAにはそれを実現する土壌があります。5年以内にIPOを目指し、より強固な経営基盤を築きながら、一歩ずつ歩みを進めていく所存です。
そしていずれは、キャリアを考えるときに最初に思い浮かぶ、必要不可欠なサービスになれれば最高ですね。最終面接までの努力を活かして、その先の道につなげることができるABABAというサービスがあることを、少しでも多くの方に知ってもらえたら嬉しいです。
編集後記
ABABAは、従来の採用プロセスに変革をもたらし、データドリブンなマッチングを実現している革命的なサービスだ。しかも、さまざまな就職市場に応用できるので、将来性にも期待できる。いずれABABAがキャリアの総合プラットフォームに進化したとき、就職のあり方がどう変わっているのか、その未来を早く見てみたいものだ。

久保駿貴/1997年兵庫県明石市生まれ。関西大学環境都市工学部入学後、3年生のときに岡山大学理学部に編入する。在学中に最終面接まで進んだ生徒と企業を繋ぐサービスである「ABABA」を立ち上げ、大学4年生のときにABABAを創業する。