※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

2019年に、TBSグループの放送関連事業7社を統合して誕生した株式会社TBSグロウディア。コンテンツ流通、ショッピング、イベント制作、IT技術支援という4つの事業を展開し、放送コンテンツを多角的に活用する新しいビジネスモデルを確立している。

20年にわたりバラエティ番組の制作に携わった経験を持つ、代表取締役社長の園田憲氏に、ユーモアあふれる組織づくりと同社の事業展開について話をうかがった。

波乱万丈なキャリアを経て、経営の最前線へ

ーー社長に就任した経緯をお聞かせください。

園田憲:
1985年に大学を卒業後、株式会社東京放送(現:株式会社TBSホールディングス、略称:TBS)に入社し、番組制作の現場に配属されました。

「8時だョ!全員集合」という番組のADから始まり、「さんまのSUPERからくりTV」という番組の総合演出など、約20年間バラエティの制作に携わりました。特に「全員集合」から「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」に至るTBS土曜夜8時枠の8年間は大変厳しい修業期間でした。

2004年に管理部という広告収入と制作費のバランスを調整する部署に異動したのですが、2008年に部長になった直後、リーマン・ショックが起きたのです。自分の出身母体である番組制作の予算を大幅に削減しなければならず、大変な思いをしました。さらに、編成部署に異動して部長になった直後には東日本大震災があり、CMを止めるなどの対応に追われました。

経営企画部門に異動してからも、いわゆる“ビジネスの修羅場”みたいなものを経験しました。その後、2016年にTBSの取締役になり、2019年に弊社が設立される際に弊社社長に就任しました。

ーー貴社の事業内容を教えてください。

園田憲:
放送や配信の関連ビジネスなど大きく4つの事業を展開しています。1つ目はコンテンツ事業です。これはグループ会社である株式会社TBSテレビが制作したコンテンツを、放送局や配信事業者に販売して流通させるという事業です。

2つ目がショッピング事業で、TBSテレビの番組に関連したグッズの開発や販売をしています。3つ目はイベントラジオ事業で、展覧会やラジオ番組などを制作する事業です。4つ目はIT事業で、TBSグループの放送関連技術のシステム構築や運用を担っています。

現在はもう「放送」というビジネスだけでやっていく時代ではありません。放送以外のビジネスも伸ばしていく必要があり、そのためにTBSグループの放送関連事業7社を合併させて弊社が設立されました。

この統合によって、複合的な事業がスムーズにできるようになりました。たとえば「MIU404」というドラマに出てくるメロンパン号の全国キャラバンイベントを行い、そこでグッズを販売するというようなことができるようになったのです。これまではイベントやグッズ販売は「番組のおまけ」といった位置づけでしたが、今ではコンテンツの大きな付加価値として成り立たせることができています。

コミュニケーションを促進し「全員がリーダーになれる」組織に

ーーどのように組織づくりをされていますか?

園田憲:
2010年頃に受けた社内研修で「組織開発」という取り組みを知り、大きな刺激を受けました。私は組織開発とは、「組織の目的を達成するうえで、チームとしていかにパフォーマンスを向上させるかを考える取り組み」だと理解しています。

私の理想は、トップダウンではなく個人が自律的に決め、連携して物事を進めていく組織です。何かを思いついたとき、上の判断を仰ぐのではなく、提案した人がリーダーとなって社員同士が横でつながっていくイメージですね。それをどのように実現していくかが、私の役割だと考えています。

弊社は合併してできた会社なので、社員同士でも知らないというケースがあります。そのため、コミュニケーションを促進する目的で研修を増やし、あいさつ週間を設けたり、社内アワードを設立したりするなど、さまざまな取り組みを行っています。

コミュニケーションをとることで、初めて相手のことを詳しく理解できるようになりますよね。「なにかあったらこの人に頼もう」というところから、新しいビジネスが生まれていくのだと思っています。

ーー社内はどのような雰囲気ですか?

園田憲:
ユーモアのある面白い人が多く、元気で楽しい雰囲気だと思います。社員からはよく「心理的安全性が高い」と言われますね。弊社はよく研修を行うのですが、研修後のアンケートに私へのフィードバック欄を設けて、社員には率直に自分の考えを記してもらうようにしています。

ときには手厳しい意見もありますが、これも心理的安全性が高いからこそ言ってくれているのだと、ポジティブに受け止めています。

これまでの感謝を胸に、グループの飛躍を目指す

ーー仕事において大切にしていることを教えてください。

園田憲:
常に目的を明確にして、困難な時でも決して「逃げない」ことですね。TBSに入社してすぐのAD時代、ある先輩に「今は、作りたいモノを作る環境を作るステージだ」と言われたのです。自分が作りたい番組を作るために、チームの中で人間関係や立場づくりをする時期だと。当時は仕事が厳しく、大変な思いをしていたのですが、その言葉があったからこそ、なんとか踏ん張れました。

そこから3年ぐらいでディレクターになると、今度はその立場ゆえの緊張感やプレッシャーに直面することとなりました。しかし、そういう生活の中で培った経験が、後の番組づくりの成功につながったと思っています。私は人を笑わせることをしたかったので、それができるようになるまで逃げずに続けてよかったと思っています。

ーー最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

園田憲:
私が目指しているのは、TBSグループを「日本のメディアコンテンツグループといえばTBS」という状態にすることです。私は色覚に異常があるのですが、就職活動を行っていた当時、放送局はどこも募集要項に「色覚異常者不可」と書いてありました。

しかし、私はテレビ局に就職したかったので、さまざまな会社に問い合わせたところ、唯一TBSだけが面接を受けさせてくれたのです。そのような恩義に加え、入社後に愛情深く指導してくれた先輩たちへの感謝の念も相まって、私はTBSグループを一番にするべきだという使命感を抱いています。

以前は放送局といえば視聴率だけで競っていましたが、現在はその局ならではのコンテンツをいろんな人に届けることが重要です。TBSグループならではのコンテンツを創出し、視聴者に届けるため、弊社としても事業を着実に成長させてTBSグループを力強く支えていきたいと考えています。

編集後記

かつてADとして番組制作の現場を支え、リーマン・ショックや震災という危機に直面しながらも、常に前を向いて歩んできた園田社長。その経験が、今の経営スタイルの礎になっているのだろう。また、合併した会社の初代社長を務めた苦労話の中でも、社員からの厳しい意見に対し、「言ってくれてありがたい」と受け止める姿勢は印象深く残っている。園田社長の話から、真摯に人と向き合い続けることの大切さを学ばせていただいた。

園田憲/1962年、大分県生まれ。1985年、早稲田大学卒業後、株式会社東京放送(現:株式会社TBSホールディングス)に入社。「8時だョ!全員集合」のADに始まり「さんまのSUPERからくりTV」の総合演出など、バラエティ番組の制作に20年に渡って携わる。編成、経営企画などを経て、2016年に取締役へ就任。2019年、グループの放送関連事業7社を合併させ、株式会社TBSグロウディアを設立し、同社代表取締役社長へ就任。以降、「人々の免疫力を上げる」というパーパスに向け「未来志向とユーモア」の組織開発を実践。その模様をnoteにて公開中。