※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

株式会社RECEPTIONISTは、企業の受付業務を変革するクラウド受付システム「RECEPTIONIST」を展開する会社だ。「RECEPTIONIST」は従来の受付業務を95%削減。コストも85%カットしてきた実績で、大手企業からスタートアップまで幅広い支持を集めている。

加えて、受付の日程調整や会議室予約まで、包括的なソリューションを提供する。今回は、11年の実務経験を活かして起業し、さらなる事業拡大を目指す代表取締役兼代表執行役員CEOの橋本真里子氏に話をうかがった。

アナログな受付業務を変えたいという熱意が原動力に

ーー受付効率化のサービスで起業した経緯を教えてください。

橋本真里子:
2005年にトランスコスモス株式会社に入社し、受付業務に従事しました。その後、2016年1月に起業するまでの間に、合計5社の上場企業で受付に携わっています。11年という長い期間、受付をしていると、多くの企業で受付業務の改善やアップデートなどがなされていない現状に課題を感じました。

さらに、ほとんどの企業で「取次」というアナログな手法で受付をしている現状を知り、「取次をなくすシステムを開発できれば、業務の効率化ができるのではないか」と考えるようになったのです。このようなシステム開発に取り組んでいるところがあれば転職も視野に入れていましたが、適切な選択肢が見当たらなかったため、自ら事業を立ち上げることにしたのです。

起業するにあたって、2年間ほど準備をしました。私はこれまで経営の仕事に携わったことがなく、ゼロから事業を興す必要があったので、他の起業家の方と比較すると大変なことが多かったように思います。

ーー仕事をする上で、どのようなことを大切にしていますか?

橋本真里子:
支えてくれた人に対する感謝の気持ちを忘れないようにしています。どんな仕事も、一緒に働いてくれる社員やサービスを利用してくださるお客さま、そしてそれ以外のステークホルダーの方々のおかげで成り立っています。

人がいてくれることを「当たり前」と思わずに感謝して、周囲の役に立つことを常に考えながら仕事に取り組むという姿勢は、受付業務に従事していたころから現在に至るまで、変わっていません。

現場経験を活かした受付システムで躍進

ーー貴社の事業内容について教えてください。

橋本真里子:
弊社はいわゆるBtoBのSaaS事業を展開しています。主なプロダクトは、来客受付を自動化するクラウド受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」です。現在、年間約400万人の方にご利用いただき、従来の受付業務を95%削減しているほか、コストを85%カットするなど、企業の業務効率化や経費削減に貢献しています。

開発当初は、機能やサービスに関するフィードバックを集めるために、なるべく多くの取引先を獲得するようにしました。当時の取引先は、システムの利用に抵抗がないIT企業やスタートアップ企業が多かったですね。そこから、生産性の向上や効率化に対する意識の高い企業を中心に、大手企業にもサービスの提供先が拡大していきました。

また、「RECEPTIONIST」以外には、日程調整を効率化する「調整アポ」、会議室などのスペースを予約・管理する「予約ルームズ」を販売しているほか、受付業務のコンサルティングなども行っています。

ーー貴社ならではの強みや特徴は、どのようなところですか?

橋本真里子:
「11年にわたる受付業務の経験をもとに、会社を立ち上げてプロダクトを開発した」ということです。私自身の経験を活かして開発しているところは、他社にはない強みだと思っています。これだけは、真似しようと思ってできるものではありません。

さらに、2024年10月に公開された調査レポート(※)において、弊社は「導入法人数No.1」「売上No.1」を獲得しています。

もちろん日々の努力もありますが、何よりもたくさんの取引先に導入いただき、有益なフィードバックをもらえたことが、この結果に大きく影響していると思います。いただいたフィードバックをスピード感をもってプロダクトに反映できたことが、他社サービスとの差別化につながりました。

(※)『年平均成長率35%で急増するクラウドiPad無人受付システム市場(ミックITリポート2024年10月号)』(デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ)

日本でのシェア拡大と海外進出でさらなる成長を目指す

ーー貴社の今後の課題についてお聞かせください。

橋本真里子:
クラウド受付システムの導入社数を増やしていきたいと考えています。前述の「ミック経済研究所」のレポートに掲載された情報によると、クラウドiPad無人受付システムの普及率は、競合他社を含めても2.5%ということでした。

導入社数が増えてきたという手応えを感じていたのですが、全国的にはまだサービスの導入が進んでいないという実態を把握したので、今後は新規開拓を行い、よりクライアントを増やしていきたいですね。

ーー今後はどのような方向に事業を発展させたいとお考えですか?

橋本真里子:
企業の受付業務以外のいろんなシーンで活用できるプロダクトを開発しなければいけないと考えています。「導入法人数No.1」「売上No.1」という実績を維持しつつ、5年後、10年後にはさらにシェアを拡大して、企業として大きく成長を図るためにも必要です。

また、将来的には海外進出もしたいと考えています。とはいえ、まだまだ日本のシェアの拡大が最優先だと考えているので、まずはしっかりと日本での市場シェアを獲得し、その上で海外進出できればと思っています。

ーー最後に、社長の抱負をお聞かせください。

橋本真里子:
日本にはまだ女性の起業家が少なく、私自身、起業に関するご相談を受けることがよくあります。多くの方が、起業に対して一世一代の決断を迫られるようなイメージを抱き、ためらいがあるようです。これからの活動を通して、起業という選択肢をもっと身近なものだと捉えてもらえるような存在になりたいと思います。

編集後記

11年にわたる受付業務の経験は、システム開発の随所に活きている。市場シェアNo.1という実績も、現場のニーズを熟知していたからこそ実現できたのだろう。クラウドiPad無人受付システムの普及率が2.5%という現状に、さらなる成長の可能性を感じずにはいられない。

橋本真里子/1981年、三重県鈴鹿市生まれ。武蔵野大学(旧:武蔵野女子大学)卒業後、2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、2016年に株式会社RECEPTIONIST(旧:ディライテッド株式会社)を設立。